ダチュラとは
ダチュラはインドや中東、南北アメリカを原産国にもつナス科の一年草です。「朝鮮朝顔」という名前も一般的ですね。大きさは種類によって異なりますが、60cm~100cm程度まで育ちます。日本には江戸時代に渡来し、薬用植物として栽培されていました。開花の季節になると色とりどりの花で路上を彩る、夏らしいさわやかな花ですよ。ただし強い毒性を持つ植物のため、扱いには注意が必要です。
基本情報
名前 | ダチュラ |
日本名 | チョウセンアサガオ(朝鮮朝顔) |
園芸分類・形態 | 草花、一年草 ※短命な多年草としても扱う |
原産国 | インド、中東、南北アメリカ |
開花の時期 | 7月~9月 |
花の色 | 白、紫、黄色 |
暑さ / 寒さ | 強い / 弱い |
特徴 | 有毒性、香りがある |
花言葉
ダチュラの花言葉は「偽りの魅力」「夢の中」「愛嬌」「あなたを酔わせる」です。色による違いはありません。強い毒性や幻覚作用のイメージからつけられた、ミステリアスなフレーズですね。相手の受け取り方によっては、ネガティブな意味に取られてしまう場合もあります。栽培の際には注意が必要であることも踏まえ、ギフトにするのはやや難易度の高い植物といえるでしょう。
ダチュラの特徴
特徴①原産国
ダチュラの原産国はインドや中東、南北アメリカです。原産国が暑い地域のため、ダチュラも暑さに強く、寒さには弱い性質がありますよ。日本名では「チョウセンアサガオ(朝鮮朝顔)」と呼ばれますが、朝鮮が原産国というわけではありません。ここでのチョウセンは特定の国ではなく、広く「海外」を意味する言葉です。名前は「朝鮮」で原産国は「インド」というのは、少しややこしいですね。
特徴②香り
ダチュラは香りのよさも特徴です。甘い香り、エキゾチックな香りといわれ、香水の香料にも使われています。フランスのブランド・セルジュルタンスの「ダチュラノワール」や、化粧品でも人気のイヴ・サンローラン・ボーテ「モンパリ オーデパルファム」が有名ですよ。官能的で大人の雰囲気、恋を演出する香りです。香水が好きな相手なら、プレゼントにしても喜ばれますね。
ダチュラの開花時期
ダチュラは7月~9月に開花時期を迎えます。暑い季節に花を咲かせるのも、名前の由来となったアサガオと同じですね。花色は種類によってさまざまで、白や紫、黄色などがあります。一重咲きのものや八重咲きのものなど、花形もバリエーションが豊富ですよ。ろうと状の大きな花を、まるで太陽の光を受け止めるように上向きに咲かせます。種類によっては花が下向きのものもありますが、ダチュラといえばこの花姿が印象的です。
とげとげした実もインパクト抜群
ダチュラは季節が秋へと移り変わるころ、ぷっくりとした実をつけます。とげとげとした見た目はハリネズミのようで個性的ですね。熟した実は破裂して、黒い種を周囲にまき散らします。とても強健な植物で、この「こぼれ種」だけでも自然にどんどん増えていきます。好きな場所へ種まきをしたい場合には、実が破裂する前に収穫するとよいでしょう。
ダチュラの毒性
ダチュラの毒性は非常に強い
ダチュラは、スコポラミンやヒオスチアミンといった有毒アルカロイドを多く含む植物です。誤って口にしてしまうと体のふらつきや倦怠感、麻痺、吐き気などの中毒症状が現れ、救急搬送されたという報告が毎年のようにされています。子どもや年配の方、ペットなどの抵抗力が弱い体で摂取してしまうと非常に危険のため、栽培する際にはくれぐれも注意が必要です。口に入れないことはもちろん、触れるときにも手袋を使うと安心です。
実際に発生したケース
ケース①根をゴボウと間違える
2008年1月、兵庫県で発生した事故です。
家の畑から引き抜いた植物の根を使って調理した「きんぴらごぼう」を食べた2名が食中毒を発症。
めまいや頻脈、幻視などの症状で2名とも入院したこのケースでは、ダチュラの根を「ゴボウ」と勘違いして採取、きんぴらごぼうにして食べたことが判明しました。2006年4月にも、岡山県で同様の事故が発生しています。自宅の畑にあるものでも、口にする際には注意が必要ですね。
ケース②果実をオクラと間違える
こちらは2007年、福岡県の家庭で起きた事故です。
福岡県遠賀保健福祉環境事務所管内で、1家族3名がチョウセンアサガオを誤食し、意識障害・幻覚などの症状を訴える食中毒が発生。
こちらの食中毒の原因は、ダチュラの果実をオクラと間違えたことです。かき揚げにして食べた家族全員が、重度の食中毒を発症しました。十分に火を通しても有毒成分が弱まらない点も、ダチュラの怖いところですね。
ケース③直接口にしない場合でも発症
また、非常にめずらしい以下のケースが、沖縄県南城市で発生しています。
2006年5月、ナスのミートソーススパゲティを食べた夫婦2名が発症。ふらつき、意識混濁、ろれつが回らないなどの症状で医療機関を受診した。
発症した夫婦が食べたミートソースに入っていたのは、自宅菜園で収穫した本物のナスでした。食中毒を起こしたのは、このナスを接木する際に台木として使用したのがダチュラだったからです。接した部分から有毒な成分がナスへと移り、それを摂取してしまったため、ダチュラの誤食と同様の症状が出たと考えられます。
接木(つぎき)とは?
接木は、苗の一部を切って、そこに別の種類の苗を繋ぎあわせる栽培方法です。種から育てるのが大変な作物でも簡単に栽培できることや、連作障害・病害虫などに強くなるといったメリットがあります。
ほかの植物と間違えないように注意
根や葉がほかの植物とよく似ていることも、ダチュラを誤食しやすい理由のひとつです。こぼれ種でも勝手に増えて、植えた覚えのない場所に芽を出していることもあります。花が咲いていない時期は特に見分けがつきづらいため、家庭菜園で採れたものを料理に使うときにはくれぐれも注意しましょう。「誤食しやすい有毒植物がある」と知っていることも、食中毒のリスクを下げるポイントですね。
間違えやすい植物①ゴボウ
ダチュラの根はゴボウと似ています。ダチュラの根がもろく折れやすいのに対して、ゴボウは硬く頑丈です。また、ゴボウには地際に束生する「根生葉」という葉がありますが、ダチュラの根にはありません。
間違えやすい植物②オクラ
開花前の時期に特に注意が必要なのがオクラです。ダチュラの細長いつぼみと、形が非常に似ています。ダチュラのつぼみはくびれがあって丸みを帯びた形、オクラは直線的で先端がとがっていると区別しましょう。色もダチュラのほうが薄い緑色です。
間違えやすい植物③モロヘイヤ・ゴマ
ダチュラの葉をモロヘイヤと、黒い種子をゴマと間違えるケースも発生しています。葉や種子の特徴をよく観察して、「どっちかな?」と少しでも迷ったら口にすることは避けましょう。誤認しやすい植物の近くで栽培しないことや、種を植えた覚えのない植物にはむやみに触らないことも大切ですね。
出典:写真AC