イイギリ(飯桐)とは?特徴や南天との違いをご紹介!実は食べられる?

イイギリ(飯桐)とは?特徴や南天との違いをご紹介!実は食べられる?

イイギリ(飯桐)という樹木をご存知でしょうか。桐の木によく似た特徴を持つ落葉高木です。南天の実に似た赤い実をつけることから、南天桐とも呼ばれています。今回はイイギリの特徴や南天との違いなど、イイギリに関する情報をまとめてみました。

記事の目次

  1. 1.イイギリ(飯桐)の概要
  2. 2.イイギリの特徴
  3. 3.イイギリの花
  4. 4.イイギリの実
  5. 5.南天との違い
  6. 6.イイギリの花言葉
  7. 7.まとめ

イイギリ(飯桐)の概要

出典:写真AC

イイギリ(飯桐)とは、ヤナギ科イイギリ属の落葉広葉樹です。秋から冬にかけては、赤い実がブドウのような房状になります。落葉後も長い間枝に残ることから、よく小鳥に食べられます。山中に自生していることが多いですが、果実が美しいため、観賞用樹木として栽培されたり、生け花や装飾として利用されたりすることも多いです。

雄株と雌株がある

イイギリは雄株と雌株に分かれている「雌雄異株」という植物です。4月~5月にかけて、雄株は雄花を、雌株は雌花をつけます。花はどちらも小さめの黄緑色で、花びらはありません。たくさんの花が房状になって垂れ下がる「円錐花序」という特徴ある咲き方をします。しかし高い位置で咲く上に、大きな葉っぱに隠れてしまうため、花姿を見ることはほとんどありません。

イイギリの基本データ

学名 Idesia polycarpa
科名 ヤナギ科(旧分類ではイイギリ科)
属名 イイギリ属
別名 南天桐(ナンテンギリ)
樹高 10m~20m

以前はイイギリ科に分類されていた

イイギリは昔は「イイギリ科」に分類されていました。しかし近年の分子系統学的な研究の結果、イイギリ科に属する植物の一部は、「ヤナギ科」の植物と共通の系統であることが判明します。この研究結果に基づいた新しい分類体系によって、多くの植物がヤナギ科に属する植物とされました。イイギリもその1つです。

名前の由来

出典:写真AC

イイギリの名前の由来は、葉っぱが関係しています。イイギリの葉っぱは直径20cmにもなる大きなものです。昔はこの大きな葉っぱをおにぎりや飯(おこわ)を包むのに利用していました。そして葉っぱの形や木の姿が桐に似ていることから「飯桐(イイギリ)」と呼ぶようになりました。別名の「南天桐」は、秋につける果実が、南天の果実とよく似ていることが由来です。

イイギリの特徴

出典:写真AC

大きな葉っぱと綺麗な赤い実が特徴的なイイギリは、とてもよく育つ樹木です。枝が縦横によく伸びる上に樹高も高く、15m前後に生長します。このため栽培する場合はかなり広いスペースが必要です。ただし、耐寒性は低いので寒冷地での栽培には向いていません。また、イイギリは日光を好みますが、西日などの強い日差しを受けると樹皮が傷んでしまうので注意しましょう。

木材として利用されることもある

桐に似ていることが名前の由来になっているイイギリですが、実際に桐の代用品として利用されることもあります。木材としては比較的軽量なので、下駄や箱、薪炭に使用されていました。現在でも、市販されている白南天箸にはイイギリが使われています。

イイギリの花

前にも触れましたが、イイギリは雌雄異株であるため、4月~5月にかけて雄株、雌株にそれぞれ花をつけます。どちらも良い香りを持つ黄緑色の小さな花ですが、雄花が直径12~16mm、雌花が直径9mmと、雄花のほうが少し大きいです。

イイギリの実

出典:写真AC

イイギリは秋になると雌株が赤い実をつけます。小さな果実が房状になって垂れ下がる様子は、ブドウによく似ています。実の直径は約5~10mmです。果肉にはたくさんの小さな種子が含まれています。南天の赤い実によく似ていることから、南天桐という別名があります。

実は食べられるが味はまずい

イイギリの実には毒はないので、生食は可能です。ですが味は苦くて甘味はありません。はっきり言えばまずいです。しかも、たくさんの小さな種が入っているので、食べられる部分もあまりありません。食用としては、あまりおすすめはできない果実と言えるでしょう。

白い実の品種もある

赤い実が一般的ですが、白い実をつける品種も存在します。ちなみに「南天桐」の名前の由来である南天も、赤い実が一般的な植物ですが、「白南天」と呼ばれる白い実をつける品種があります。

南天との違い

出典:写真AC

何度も触れたように、イイギリは赤い実が南天の実によく似ていることから、「南天桐」とも呼ばれています。ですが、どんなに外観が似ていてもイイギリと南天は違う植物です。よく観察すれば、いろいろと違いが出てきます。ここでは、イイギリと南天の違いについて紹介しましょう。

南天の概要

Photo by Naoki Natsume/Ishii , 夏目直樹 ,石井直樹

写真:南天

両者の違いを見る前に、南天について紹介します。南天はメギ科ナンテン属の常緑低木で、古くから園芸植物として親しまれてきました。冬の寒い時期に綺麗な赤い実をつけることだけでなく、南天の名前が「難(ナン)を転(テン)じて福となす」という語呂合わせが好まれたことと、風水でも縁起の良い植物とされたことなどから、厄除け効果のある植物として大切にされてきた植物です。

果実や葉っぱが薬になる

南天の果実には鎮咳効果があり、現在ものど飴の原料として使用されています。そして葉っぱには防腐・殺菌効果があり、昔から彩りを兼ねて赤飯や弁当の添え物として利用されてきました。さらに樹皮は胃腸病や眼病に効くとされており、「薬用の木」としても大切に扱われてきた歴史を持っています。

南天の基本データ

学名 Nadina domestica
科名 メギ科
属名 ナンテン属
別名 南天燭(ナンテンショク)
樹高 1m~3m

イイギリと南天の違いその①:樹高

出典:写真AC

イイギリは前に紹介したように、非常に大きくなる樹木です。環境が良ければ20mにまで生長します。そのため狭い庭では育てられません。一方、南天の樹高は低めで、大きく生長しても3mほどです。縁起物とされていたこともあって、玄関先などのそれほど広くない場所にもよく植えられていました。

イイギリと南天の違いその②:毒性

Photo bystevepb

イイギリと南天の最も大きな違いは毒性の有無です。イイギリの果実には毒はないので、生でも食べられます。ただし、味はまずいのでおすすめできません。一方、南天の果実や葉っぱに含まれている薬効をもたらしている成分は、大量摂取すると知覚や運動神経の麻痺を引き起こす毒性を持っています。医療知識のない素人が南天を薬用として扱うのは、非常に危険ですので絶対に止めましょう。

イイギリの花言葉

出典:写真AC

イイギリの花言葉は3つあります。「恵まれた人」「豊穣」「恵まれた恋」です。豊かさを意味する花言葉が多いのは、生長が早くてすぐに大きくなることや、たくさん実をつけること、大きな葉っぱなど旺盛な生命力を思わせるところが関係しているのでしょう。イイギリには白い実をつける品種もありますが、色別の花言葉はありません。

ちなみに、イイギリによく似た果実をつける南天の花言葉は「私の愛は増すばかり」「福をなす」「機知に富む」「良い家庭」です。縁起の良い植物とされているだけあって、花言葉も良い意味のものがそろっています。

南天には色別の花言葉もあるよ。白い実をつける南天の花言葉で、「深過ぎる愛」「機知に富む」「募る愛」というのがあるんだ。この点もイイギリとは違うところだね。

まとめ

出典:写真AC

イイギリは育てるのに広いスペースが必要なことと、寒冷地には向かないという特徴がありますが、それらさえクリアできれば丈夫で育てやすい樹木です。大きな葉っぱを茂らせ、枝を四方八方に展開する堂々とした姿と、冬につける赤い果実の美しさには、誰もが魅了されるでしょう。コンパクトでスッキリとした庭木もよいですが、背が高くて迫力がある庭木も素敵ですよ。

Laylah
ライター

Laylah

バラや百合のような美しくて香り高い花も好きですが、スミレやタンポポのような野に咲く可憐で強い花も好きです。

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