受粉と花
花は、植物の生殖器官と定義されます。植物は20億年以上前から存在していましたが、花の化石は1億3000年前のものが最も古いものです。それより以前には花は存在しなかったと考えられています。花は、植物の長いの歴史の中で出現した、受粉のための舞台なのです。ここでは花の構造と役割を見ていきます。
花の構造
図7に示したように、花は、4つの構造から成り立っています。外側から、萼片、花弁、おしべ、めしべです。この4つの構造は、もともとは葉になる遺伝子を持っているのですが、遺伝子が発現するときに転写因子の調節を受けて、葉とは異なる構造になります。
花の役割
植物は動けないため、花粉をめしべに届けるには、自分以外の何かに運んでもらうしかありません。子孫を残すために、花粉を水や風に乗せて運ぶ方法や、虫や鳥に花粉を運んでもらう方法を編み出しました。花は、鮮やかな色と香りで虫や鳥などの花粉を運ぶ生き物を引き付け、個体から個体へ花粉を運んでもらっています。ただ利用するだけではなく、花粉や蜜を提供し、虫や鳥と共生関係を作っています。
花の分類
花の分類にはさまざまなものがありますが、花粉を運ぶ生物によっても分類できます。日本に生育する植物では、裸子植物の虫媒花はソテツのみで、他の種は風媒花をつけます。一方、被子植物では、虫媒花が66%、風媒花が14%、自家受粉や単為生殖する花が18%、その他が2%となっています。
①風媒花
花粉を風に乗せて運ぶ方法をとる花と定義されます。マツ、イチョウ、スギ、ヒノキ、イネなどの裸子植物が多く挙げられます。スギ、ヒノキ、イネなどは、花粉症でもおなじみです。風に乗って虫や鳥を寄せ付ける必要がないため花は目立たないものが多いです。
②水媒花
花粉を水面や水中流して運び受粉にいたる花を指します。クロモ、セキショウモ、アマモ、スガモなどの水草が挙げられます。
③虫媒花
花粉や蜜を食料とする昆虫に花粉を運ばせて受粉する花と定義されます。媒介生物はチョウやハチなどです。アブラナ、ユリ、ヒマワリ、コスモス、シロツメクサなどが挙げられます。色や香りで昆虫を誘います。
④鳥媒花
鳥に蜜を吸わせ、代わりに花粉を運ばせている花です。主にヒヨドリやメジロが媒介生物です。鳥を媒介とすることで、昆虫がまだ多くない春先にも受粉することができます。サクラ、ツバキ、ウメなどが挙げられます。
ボタニ子
植物が進化する過程で、風媒受粉する裸子植物が現れ、その中から被子植物が進化してきたと考えられています。昆虫を利用することで多様な環境で受粉することができるようになり、虫媒花を咲かせる被子植物が増えていきました。
おわりに
種子植物の受粉について、言葉の定義や、仕組み、関連事項を解説しました。種子植物は、それぞれの受粉の仕組みに適した花をつけ、子孫をつないできました。種子植物の魅力が少しでも伝わりましたら幸いです。
参考図書
- 嶋田幸久、萱原正嗣『植物の体の中では何がおこっているのか』ベレ出版, 2015年
- 宮澤七郎、中村澄夫『花粉の世界をのぞいてみたら―驚きのミクロの構造と生態の不思議―』NTS, 2012年
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図7