クスノキの用途①防虫やアロマに
防虫剤としての用途
天然の樟脳
クスノキの用途・利用法として第一に挙げられるのは、樟脳です。コケなどが生えた樹皮を削って細かく砕いたクスノキチップを煮詰め、蒸留させると樟脳の白い結晶と、クスノキ油(ホワイトカンファー)が出来ます。樟脳には防虫効果があり、衣類を守るために利用されてきました。天然の樟脳は、化学成分の商品より割高ですが、優しい香りがします。
アロマとしての用途
ホワイトカンファー(クスノキオイル)
クスノキオイル(ホワイトカンファー)は、樟脳を作る行程で出来る樟脳油です。すっきりしたさわやかな香りは、気持ちをリラックスさせ、リフレッシュもできるバランスのよいアロマオイルです。やや刺激がありますので、長い時間使わないように気を付けましょう。妊娠中の方やお子様、てんかんやぜんそくの持病のある方は、使用を避けて下さいね。
間伐材でクスノキチップ
クスノキを細かく削ったクスノキチップを布に詰めて、ほんのり匂いを楽しむことができます。緩やかなアロマになり、ゆるめの防虫剤にもなります。
クスノキ成分のその他の用途
医薬品や掃除用に利用
鎮痛や殺菌などの効果があるクスノキ成分は、さまざまな医薬品に使われています。また、樟脳オイルを使ったクリーナーが製品化されています。除菌効果があり、家具のふき掃除やキッチン周りに使えます。
クスノキの用途②木材としての利用
彫刻に利用
救世観音菩薩立像(法隆寺)
6世紀に仏教が伝わり、各地で仏像が作られるようになった時に用いられたのがクスノキです。彫りやすく、仏像を彫る大きさがあり、防虫・防臭性に富んでいる特徴が生かされました。日本書紀にも流れ着いたクスノキで仏像を彫ったエピソードが記されています。その後、より彫刻しやすいヒノキが使われるようになっていきます。
飛鳥時代の仏像
現存する主な飛鳥時代のクスノキの仏像は、国宝・弥勒菩薩半跏像(中宮寺)、救世観音像(法隆寺・夢殿)、百済観音像(法隆寺・大宝蔵院)などがクスノキ一本造りの仏像です。また、法隆寺の玉虫厨子の仏像はクスノキ、全体はヒノキで作られています。上記写真は弥勒菩薩半跏像です。
船に利用
水の中でも腐りにくいクスノキの用途として、船があります。最も古い資料では、日本書紀に 天磐櫲樟船 (アメノイワクスフネ)が記載されています。ヒルコを乗せて流した舟です。また、室町から江戸時代あたりまで、軍船の材料にもなりました。
鳥居に利用
厳島神社の大鳥居
木材としての用途、次にご紹介するのは鳥居です。国の重要文化財に指定されている厳島神社の大鳥居には、クスノキが使われています。2本の主柱は、全国から探し出された樹齢600年のクスノキです。主柱を支える4本の袖柱には杉が使用されていますが、修復記録を見るとクスノキが使われた時代もあったようです。防虫性に優れ、腐食しにくいクスノキの性質が生かされています。
家具や建具、内装に利用
クスノキは加工しやすい木材です。磨くと光沢がでることから、家具や建具、内装にも使われてきました。タンス作りには防虫効果が生かされています。クスノキ製のハンガーもあります。
その他の利用
薪に利用
クスノキの薪は、薪棚に積んでおいても虫がつかず、燃やすと柔らかな灰になります。ただ、斧で薪割りするには固く、燃やした時にも独特の匂いがあるので好みが分かれますね。
クスノキの用途③常緑樹として
街路樹など緑陰に利用
クスノキは車の排ガスにも強く、街路樹に用いられています。街路樹として美観と緑陰を与え、季節を通して生茂った葉が交通騒音を軽減してくれます。どんな木が街路樹に使われているのか、国土交通省の調査ではイチョウ、サクラ類、ケヤキなどに続き6番目に多く街路樹に利用されています。参照(PDFファイル):国土交通省・国土技術政策総合研究所
シンボルツリーや防風林に
公園や校庭、集合住宅の敷地に
クスノキは樹形が美しいので、公園や校庭、マンションの敷地内に植えられることもあります。風にも強く、防風林の役割も担います。台風の季節に、例年にない潮風の塩害で葉を枯らし裸木になっても、また芽吹いてきて元通り繁った例もあり、非常に強い植物です。
鎮守の森・パワースポット
先人が神社などに植えたクスノキは樹齢を重ね、憩いや癒しの場となっています。日常的な散策の場でもあり、観光名所やパワースポットにもなっていますね。
ボタニ子
次のページでは、クスノキに似た仲間の木をご紹介!