スイフヨウ(酔芙蓉)とは?
芙蓉は日本や中国、台湾など、東アジアを中心に自生する落葉低木で、日本で古来より愛されてきました。スイフヨウはその園芸品種です。
日本名 | スイフヨウ(酔芙蓉) |
科目 | アオイ科フヨウ属 |
学名 | Hibiscus mutabilis cv. Versicolor |
スイフヨウは夏から秋にかけて八重または一重の花を咲かせます。夕方にはしぼんでしまう一日花ですが、次々と花を咲かせていきます。一日のうちに、白からほんのりとピンク色に変わり、時間と共に赤くなっていくころから酔芙蓉と名づけられました。なお、同じ読み方の「水芙蓉」(スイフヨウ)は蓮のことで、まったく別の花です。
芙蓉との違いは?
スイフヨウは芙蓉の園芸品種なので、芙蓉の特徴をそのまま持っています。芙蓉の方がやや耐寒性があります。芙蓉との違いはほとんどわからない程度ですが、目立つ特徴は次の通りです。
開花の時期が少し遅い
芙蓉の開花時期の方が早く、7月頃に咲きます。スイフヨウは少し遅れて咲き、季節をまたいで秋まで咲きつづけます。
八重咲きと一重咲き
一般的に芙蓉は一重咲きで、スイフヨウは八重咲きです。しかし一重のスイフヨウもあり、咲き方だけで見分けるのは難しいかもしれません。
花びらの色の変化
もっともはっきりした芙蓉との違いは、花の色の変化です。咲いてから時間が経つにつれて花びらが赤みを増して変化していくのがスイフヨウです。時間をかける見る必要はありますが、いちばん確かな見分け方ですね。
スイフヨウの花色が変化する理由
スイフヨウ(酔芙蓉)の花色が変化する理由は、お酒に酔ったから、ではなく、アントシアニンの合成によるものです。日照によってアントシアニンを合成する酵素が増え、花弁部分に蓄積されて赤みを増していきます。気温が低いとアントシアニンの合成は進まず、25度以下では色の変化はそれほど見られません。曇りの日や、日の当たりにくい奥まったところでは白い花が部分的に、あるいは色を変えないまま残っています。
スイフヨウの種類
スイフヨウには、花の色と咲き方で数種類に分けられます。白、ピンク、濃いピンク。変化する前の花の色です。そして、一重咲き、二重咲き、八重咲き。八重咲きの中でもさらに華やかに改良した「くす玉」咲きと呼ばれる園芸品種があります。
スイフヨウの仲間
芙蓉の仲間は、学名に Hibiscus(ハイビスカス)の文字を持っています。スイフヨウは Hibiscus mutabilis cv. Vercicolor。芙蓉は Hibiscus mutabilis。スイフヨウとムクゲ、そしてアメリカ芙蓉は柔らかな花色が似ています。ハイビスカスと紅葉葵は赤い花がメインで、薄い色の花もありますが、花びらの形に特徴があってスイフヨウや芙蓉との違いはすぐわかります。
アメリカ芙蓉 Hibiscus moscheutos
アメリカ芙蓉はその名の通り、北アメリカ原産で耐寒性があります。25センチ前後の大きな花を咲かせます。白、ピンク。桃色の縁取りのある白い花。草芙蓉と呼ばれることもあります。
ムクゲ(槿) Hibiscus syriacus
韓国の国花です。日本でも茶事のしつらえや生垣などに重宝されてきました。花は芙蓉と見分けるのが難しいですが、葉の形を見れば芙蓉との違いがわかります。芙蓉の葉は手のひらを広げたような幅があり、ムクゲの葉は芙蓉に比べると細長い形です。枝振りも、芙蓉が枝分かれしてこんもり繁るのに対して、ムクゲはすくっと上に伸びている感じです。
ハイビスカス Hibiscus rosa-sinensis
日本では南国の花として知られています。芙蓉の仲間はいずれも学名にハイビスカスの名が入っていますが、主に熱帯から亜熱帯に咲くこの品種が「ハイビスカス」と呼ばれています。
紅葉葵(もみじあおい)Hibiscus coccineus
紅葉葵は北アメリカ原産です。赤い花を咲かせ、茎も赤みを帯びてきます。葉の形が紅葉に似ているのでこの名前が与えられました。紅蜀葵(こうしょっき)とも呼ばれます。
スイフヨウの花言葉
スイフヨウの花言葉は、「繊細な美」「しとやかな恋人」「幸せの再来」そして「心変わり」です。「しとやかな恋人」と「繊細な美しさ」「幸せの再来」は芙蓉の花言葉であり、園芸品種であるスイフヨウもその花言葉をいただいています。
輪郭のやわらかな花びらは「繊細な美」そのものですね。たおやかで、ほんのりした色合いは「しとやかな恋人」なのでしょう。そして、芙蓉にないスイフヨウ独自の花言葉が「心変わり」です。お察しの通り、変化する花色から来ています。
スイフヨウの育て方
スイフヨウの育て方は難しくはありません。3メートル近い高さに育つ植物ですが、こまめに剪定すれば鉢植え栽培もできます。耐暑性があり、寒さには少し弱い特徴がありますので、雪の積る地域などでは鉢植え栽培にして寒い季節には中に取り込むといいでしょう。
庭植え
弱酸性の土を好み、日本の土壌に合っています。日当たりのいい場所に植えます。深植えしすぎないように気をつけてください。こんもり繁る花木です。成長した時をイメージして植えるといいでしょう。植え付けの時以外は特に水やりの必要はありません。
鉢植え
赤玉土と腐葉土を6:4の割合で混ぜて植えます。苗はすぐに成長するので、やや大きめの鉢を選びます。2、3年ごとの植え替えは欠かせません。鉢増しの適期は春先です。鉢植えの場合は、土の表面が乾いたらたっぷりの水やりが必要となります。
肥料
12月から1月に油粕などの緩効性肥料を施します。さらに6月から9月頃まで、開花の季節に数回に分けて追肥すると花が多く咲いてくれます。こちらは即効性のある化成肥料がいいですね。
剪定の時期
花が咲き終わり、落葉が始まる季節が剪定の時期です。すくすく伸びる植物ですので、思い切って剪定しても大丈夫です。
スイフヨウの増やし方
挿し木で増やす
スイフヨウは挿し木で増やすことができます。2月~4月頃が適した時期です。用土は鹿沼土か赤玉土がいいでしょう。市販の挿し木や種まき用の土でもかまいません。肥料が入っていないことが重要です。庭にそのまま挿してもかまいませんが、鉢か大き目の育苗ポットに挿す方が管理しやすいでしょう。
手順
- 冬に剪定した枝を30cmくらいに切りそろえます。
- 土の中に保存しておきます。
- 春に掘り起こし、天地を確認して根に近い方の先を削ります。
- 削った方を土に差して半分ほど埋めます。
- 土が乾かないように水やりをして管理します。
- 6月頃に、鉢上げするか庭植えにして栽培します。
種を採取して蒔く
一重咲きのスイフヨウは、花が終わった後すぐに剪定せずに置いておくと実を結び、種がはじけます。綿にくっついている種を採取して蒔いて増やす方法もあります。ただ、八重咲きのスイフヨウは種ができにくいといわれています。八重の花びらは雄しべを改良したものだからです。
まとめ
スイフヨウの花色のうつろいを眺めるのは幸せな時間です。「幸せの再来」という花言葉がよく合っています。ご近所にスイフヨウの木があれば、剪定の時期に分けてもらって挿し木するのもいいですね。
(芙蓉の花)