クロモジとはどんな植物?
クロモジは黄緑色の小花を咲かせる美しい樹木です。華やかな雰囲気はありませんが、静かで清楚な佇まいがあり、日本庭園に植えられていることが多いです。そんなクロモジですが、実は和菓子の高級楊枝として用いられる香木としても知られています。そこで、クロモジの庭木としての育て方や使い方、病気や害虫対策について詳しく解説します。
クロモジの基本情報
学名 | Agapanthus africanus |
科名 | クスノキ科 |
属名 | クロモジ属 |
原産地 | 日本 |
開花 | 3~4月 |
花色 | 白・黄緑 |
名前の由来
黒い斑紋
クロモジは日本の広い地域に分布し、古くから身近な庭木として植えられている樹木です。樹皮の黒い斑紋が文字が並んでいるように見えたことから、クロモジ(黒文字)と呼ばれるようになった説が有力です。また、宮中の女房言葉で「~モジ」とつける風習から楊枝と黒い斑紋を合わせて、クロモジと呼ぶようになったという説もあります。
クロモジの特徴
華奢で清楚な雰囲気をもつクロモジは、真っすぐ立つ姿が美しい樹木です。初春に咲く黄緑色の花もかわいらしいですが、枝を折ったときに香る匂いが大きな魅力でしょう。そこで、気品のある日本庭園に似合うクロモジの特徴について解説します。
花
クロモジは初春の3~4月に淡い黄緑色の花をたくさん咲かせますが、小花のため目立ちません。日本海側には「オオバクロモジ(大葉黒文字)」と呼ばれるクロモジの変種があります。このオオバクロモジは、クロモジよりも黄色い小花を4月頃に咲かせる違いがあります。
実
花が咲くと同時に濃い緑色の葉を茂らせ、丸い緑色の実を付けます。実は直径5~6mmと小さい球状で、9~10月頃になると黒く熟します。この実には脂肪分が多く含まれていることから「クロモジ油」として使われ、抗菌や鎮静効果があると言われています。
幹
幹の太さは直径5~10cmと細く、まっすぐ伸びて2~5mの高さに成長します。若い枝や幹の樹皮に黒い斑紋があり、枝を折った時によい香りがすることが大きな特徴です。この特徴を利用して、和菓子の高級楊枝として使われています。斑紋は幹は太くなるにつれて消えてなくなります。
クロモジの育て方
クロモジは花や紅葉も楽しめる立ち姿の美しい清楚な樹木です。生命力が強く手間がかからないため、庭に植えて育てれば、家庭でも香りのある素敵な爪楊枝を作ることができますよ。そこで、苗の植え付けや剪定の時期などクロモジの育て方について解説します。
クロモジの育て方①植え付け
半日陰
クロモジの苗は、半日陰の場所に植え付けると大きく育ちます。午前中に日が当たり、午後は家の陰に隠れて日陰になるような場所がよいです。水はけがよく、肥沃な土壌を好み乾燥に弱い性質があります。枝が細いため強い風が当たる場所は避けたほうがよいでしょう。苗の植え付けは暑い時期を避けて行います。
株立ち
根元から何本にも分岐している株立ちを植え付ける場合は、1本の苗を植える時よりも横幅を広くとる必要があります。株立ちの幹は細くゆっくりと成長し、雑木林のような自然な雰囲気を醸し出してくれます。1株だけで存在感がありますが、枝や葉が生い茂ると風通しが悪くなるため、定期的に剪定を行うようにしましょう。
クロモジの育て方②水やりと肥料
水やり・肥料
クロモジは土が濡れていると根腐れを起こし枯れてしまいます。暑い日が続いている時期は乾燥を防ぐために水やりを行いますが、他の季節は特に水やりをする必要はありません。鉢植えにしている場合は、土が乾いた時にたっぷり水やりをしましょう。また苗を植え付ける時に、土にしっかり堆肥や腐葉土を混ぜ込んでおけは、後から肥料を与える必要はありません。
クロモジの育て方③剪定
風通しをよくする
クロモジの剪定は、落葉期に行います。定期的に行う必要はなく、葉が落ちた頃に枝が込み入っているところ、枯れている枝、伸びすぎた枝を剪定します。剪定をして風通しをよくすると枝数が少なくなり、クロモジの自然な雰囲気を際立たせることになります。
クロモジの育て方④病気・害虫
病気や害虫に強い
クロモジは、丈夫で育てやすい木のため病気や害虫にも強いとされています。しかし、何年も剪定を行わず風通しが悪い状態にしておくと「カイガラムシ」や「うどんこ病」にかかってしまうことがあります。見つけた時はカイガラムシをブラシで擦り取るか、うどんこ病の白い部分を切り落として排除する必要があります。
クロモジの育て方のポイント
- 半日陰に植えつける
- 水やりは乾いた時だけ
- 肥料は植え付けの時だけ
- 剪定をして風通しをよくする
クロモジの使い方
クロモジは庭木として楽しむ他、生け花でも美しさを発揮します。また、香りを生かして爪楊枝にしたり、葉や枝をお茶にして飲んだりすることもできます。精油もアロマオイルとして流通しています。見る楽しさ、飲む楽しさ、身に付ける楽しさができることがクロモジの魅力です。
クロモジの利用方法
高級楊枝
古くからクロモジは樹皮の香り成分を活かして、皮ごと爪楊枝として使われてきました。若芽の樹皮にある黒い斑紋が美しいため、和菓子に添えられる高級楊枝の素材として使われることが多いです。他にも床の間に花を飾ったり茶道に欠かせない樹木です。
お茶
クロモジの葉や枝は乾燥させて、お茶にすることができます。葉を煮出すと緑茶のような緑色のお茶になり、枝を煮出すと鮮やかなピンク色のお茶になります。少し苦味がありますが、香りのよいクロモジ茶は冷え性や便秘解消にも効果があると言わています。
精油
クロモジに含まれる精油には鎮静効果やリラックス効果があると言われ、ハンドクリームや化粧品、石けんなどに使われています。スズランやライラックのような香りがあり、肌にしっとりと馴染み心を落ち着かせる作用があると言われています。
まとめ
小さくかわいい黄緑色の花をつけるクロモジは、真っすぐ立つ姿が美しい樹木です。植え付けをした後は、水やりや肥料を追加する必要がなく初心者にも育てやすいこと、葉や枝を折った際の香りがよいことも魅力です。庭に植えて爪楊枝の材料したり、お茶として普段の生活に取り入れることもできます。
出典:写真AC