とう立ちとは
とう立ちとは、野菜が茎を伸ばして花を咲かせた状態のことです。とう立ちの「とう」は、ふきのとうの「とう」のことでもあり、茎のことです。とう立ちは自分自身が大きくなるのではなく、子孫を残そうとする植物の働きです。そのため、とう立ちすると全体が固くなり、食感や味が落ちてしまいます。
とう立ちすると商品価値がなくなる
とう立ちした野菜は、全体が固くなり味も落ちます。葉野菜は筋っぽくなり、根野菜はすが入ります。さらに味も落ち、エグみや苦味が出てくるのです。そのため農家ではしばしば、とう立ちした野菜は商品価値がなくなったものとして破棄されます。しかし、野菜や大きさにもよりますが、とう立ちしたからといって必ずしも食べられなくなるわけではありません。
野菜がとう立ちする理由
とう立ちする理由は、野菜によって異なります。ダイコンやハクサイは、毎日寒さにさらされていると子孫を残そうとしてとう立ちをはじめます。一方、タマネギやニンジンのとう立ちは、ある程度大きくなってから急に低温になったときにはじまります。さらにホウレンソウやレタスなどの野菜は、日照時間が長くなることが原因です。
とう立ちした野菜の見分け方
とう立ちした野菜は、その多くが中央に茎を伸ばします。そして、やがて先端に花を咲かせます。しかし、できればとう立ちは花が咲く前に見分けたいところです。また、花が咲いてしまっても食べられる野菜もあります。とう立ちの原因や見分け方は、野菜によって異なります。自分の育てている野菜の見分け方は、しっかりと確認しておきましょう。
とう立ちした野菜①ホウレンソウ
とう立ちしたホウレンソウは、全体がゴワゴワと硬くなるのが特徴です。また、芯の真ん中から茎が伸び、小さな花を咲かせます。とう立ちする主な理由は日照時間で、多くの品種は春分をすぎるととう立ちしやすくなります。また、畑の近くに街灯や家の明かりなどがあると、その光でもとう立ちがうながされるため注意が必要です。
とう立ちした野菜②ニンジン
ニンジンはとう立ちすると、中央の茎が伸びて白い花を咲かせます。花のためにすべての栄養を使ってしまうため、土の下のニンジンは筋だらけになってしまいます。もし、ニンジンに花が咲いてしまったら、いったん収穫してから先端の方を折ってみましょう。きれいに折れずに真ん中に硬い芯が残ってしまったものは、すでに全体が筋だらけになってしまっています。
とう立ちした野菜③ダイコン
ダイコンがとう立ちする原因は、長い低温です。そのため、早めに種をまいたり、トンネルやマルチで保温したりすることが大切です。また、収穫が遅れすぎてもやはり花が咲いてしまいます。とう立ちしたダイコンは、切ってみると真ん中に空洞ができた「すが入った」状態になります。白や紫色のかわいい花が咲くので、料理の彩りにもおすすめです。
とう立ちした野菜④タマネギ
タマネギがとう立ちすると、ねぎぼうずと呼ばれる丸い花が咲きます。こうなると、タマネギの真ん中に緑色の芯ができて固くなります。また、とう立ちしたタマネギは、全体的に小ぶりです。タマネギは、ある程度成長してから急激に寒くなったり、水や窒素が足りなかったりするととう立ちしやすくなります。植え付け時期をきちんと守り、マルチやもみがらで保温をすることが大切です。
とう立ちした野菜⑤ハクサイ
ハクサイは、とう立ちすると結球しません。全体的に葉が広がり、中央にまっすぐ伸びる茎ができます。先端にはつぼみがつき、やがて黄色い花が咲きます。とう立ちしたハクサイはとう立ち菜と呼ばれ、通常のハクサイとは違った風味のおいしい野菜です。中央の花をとると次々とわき芽がつくので、花を長く楽しめます。
とう立ちさせて食べる野菜もある
野菜がとう立ちすることが、すべて悪いというわけではありません。中には、野菜をとう立ちさせてから食べる野菜もあります。その代表的が、ブロッコリーです。ブロッコリーは、葉の中央にできたつぼみの塊を食べます。このつぼみの塊が、ブロッコリーのとう立ちです。また、カリフラワーやふきのとうも、とう立ちしたつぼみの部分を食べる野菜です。
とう立ちした野菜の食べ方
家庭菜園で育てた野菜がとう立ちした場合、捨ててしまうのはもったいないですよ。確かに、とう立ちした野菜は商品価値がなくなり、お店に出荷できません。しかし、食べられなくなったわけではありません。調理法や食べられる部位を知っていれば、とう立ちした野菜も有効に利用できます。
とう立ちした野菜の食べ方①花を食べる
ダイコンやハクサイなどアブラナ科の野菜は、花がおいしく食べられます。味も見た目も、菜の花と呼ばれるセイヨウアブラナやセイヨウカラシナにそっくりですよ。花が咲く前のつぼみの状態で収穫し、おひたしなどで食べるのがおすすめです。また、ホウレンソウやコマツナの花は、葉と同じ調理法で食べられます。
ボタニ子
とう立ちした花は油とよくあうので、炒め物や天ぷらなどもおすすめです。豚バラやツナ缶とあわせてもいいですね。
とう立ちした野菜の食べ方②葉を食べる
とう立ちした野菜の葉は、どうしても筋張って固くなります。しかし、食べられないというわけではありません。生で食べるのは難しいですが、鍋物や煮物などしっかり加熱するとおいしく食べられます。また、ニンニクやショウガなど香りの強いものと一緒に炒め物にするとのもおすすめですよ。
ボタニ子
とう立ちした葉は、筋に対して平行に切るのではなく、筋を断つように垂直に切るのがおいしいポイントです。
とう立ちした野菜の食べ方③根を食べる
とう立ちすると食べにくくなるのが、根菜類です。タマネギやニンジンなどは、とう立ちすると芯ができます。また、ダイコンやカブなど、すが入るものもあります。とう立ちの影響を受けやすいのは、主に根菜の内側です。そのため、外側の皮に近い部分であれば、通常の野菜と同じように食べられます。
ボタニ子
とう立ちした根菜は筋張っていることが多いため、シャキシャキとした食感をいかす調理法を選ぶといいですよ。
とう立ちした野菜を食べる④茎を食べる
多くの野菜は、とう立ちした茎の部分は固く食べにくくなります。しかし中には、とう立ちした茎を食べる野菜もあります。例えばにんにくの茎は、にんにくの芽とも呼ばれ、中華料理に欠かせない食材の一つです。キュッキュとした独特の歯ごたえがあり、香りも強く人気があります。ほかにふきのとうの茎も、とう立ちして太くなったものを煮物にして食べるとおいしいですよ。
ボタニ子
にんにくは葉も食べられますが、とう立ちした茎のほうが食感がよく炒めもの向きです。油との相性も抜群ですよ。
とう立ちしても心配しないで
とう立ちは、野菜が子孫を残すために体を変化させている状態です。とう立ちすると茎が伸び、花が咲いて全体が固くなってしまいます。しかし、固くなった部分を取り除くとおいしく食べられます。野菜を出荷する農家にとっては悩みの種ですが、家庭菜園ではとう立ちしても心配する必要はありませんよ。
出典:写真AC