水仙にまつわる怖いギリシャ神話
ここからは水仙にまつわる伝説について紹介します。水仙の学名や英名の「Narcissus(ナルシサス)」は、ギリシャ神話に登場する美少年ナルキッソスが語源です。前にも触れたように、水仙の花言葉にネガティブな意味のものが多いのも、ナルキッソスの伝説と、もう一つの水仙絡みの神話が影響しています。
水仙の怖いギリシャ神話①
誰も愛さない美少年
その昔、とある村にナルキッソスという美少年がいました。その美しさはたとえようがなく、老若男女問わず虜となる者が後を絶ちませんでしたが、当の本人は誰も愛することはありませんでした。そのため彼の心を得られないことに絶望して命を絶つ者が出るなど、悲劇が起こってしまいます。その最たるものが、森の妖精の一人であるエーコーでした。
アメイニアスは男性なんだけど、ナルキッソスの美貌と魅力は、同性すら虜にしてしまうほどのものだったんだろうね。
呪いと失恋が生んだ悲劇
森の妖精エーコーは、かつて主神ゼウスの浮気相手となった仲間をかばい、ゼウスの正妻ヘラを得意の歌とおしゃべりで足止めしたことがありました。このためヘラの怒りを買い、他人の言葉を繰り返すことしかできないという呪いをかけられてしまいます。ゆえにナルキッソスに恋をしても、想いを伝えることすらできない彼女は、相手にもしてもらえなかったのです。
その後エーコーは悲しみのあまり肉体を失い、声だけの存在になってしまったんだ。これが木霊の始まりなんだよ。
ちなみにエーコーの名前は、木霊や反響を意味する言葉「エコー」の語源にもなっています。
呪われた恋から生まれた花
ナルキッソスの無情が生んだ、これらの悲劇に激怒したのが義憤の女神ネメシスでした。ネメシスはナルキッソスに呪いをかけ、彼をムーサ山の泉へと呼び寄せます。するとナルキッソスは泉の水面に映った自分の姿に恋をして、その場から離れられなくなってしまいました。その結果、衰弱して死んでしまいます。その後、泉のそばに水仙の花が咲きました。
ナルキッソスの死因には、水面に映る自分に口づけようとして泉に落ち、そのまま溺れ死んだという異説もあります。
水仙の怖いギリシャ神話②
豊穣の女神デメテルの娘、ペルセポネーが冥界の神ハデスにさらわれたときの話です。花摘みに出かけていたペルセポネーは、ひときわ美しい白い水仙を見つけます。それを摘み取ると大地が割れてハデスが現れ、ペルセポネーは冥界へと連れ去られたのでした。このとき、彼女の手から落ちた白い水仙が黄色い水仙に変わったと伝えられています。
美しい水仙は、ハデスがペルセポネーを連れ去るために仕掛けた罠だったというわけです。
この話だけ見るとハデスは怖い神のように思えるけど、本来は真面目で堅物。誘拐なんて考えられない神だったんだよ。
実際にデメテルも、最初はハデスの犯行だとは信じなかったと伝わっています。それだけに恋の狂気というものが伝わる、怖い話です。
ナルシストの起源
ナルシストは正確には「ナルシシスト(narcissist)」といい、自己愛を意味する「ナルシシズム(narcissism)」を呈する人たちのことを指します。日本では自己陶酔型の人間、またはうぬぼれ屋な人物を指す言葉として使用されています。この言葉はナルキッソスの伝説が語源です。
まとめ
早春の花として多くの人たちに愛されている水仙は、正月花の定番としても、よく用いられています。比較的育てやすい植物でもあるので、お庭に植えるのもよいでしょう。冬の花壇を彩ったり、お部屋に飾ったりと、好みのやり方で水仙の美しさと芳香を楽しんでくださいね。
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ナルキッソスに恋い焦がれる者たちの一人にアメイニアスという青年もいました。彼は、ナルキッソスの心を得られないことに絶望して自ら命を絶っています。