楓(カエデ)の特徴
楓(カエデ)と聞くと、どのような植物を想像しますか?秋になるときれいに紅葉する葉っぱでしょうか?それとも手のひらのような形をした葉っぱでしょうか?実は楓は小さな花を咲かせたり、かわいらしい種をつけたりもします。そんな楓の特徴をご紹介していきます。
楓の基本情報
学名 | Acer spp. |
科名 | ムクロジ科(旧カエデ科) |
属名 | カエデ属 |
分類 | 高木 落葉樹が多い |
分布 | アジアに多く自生。その他、ヨーロッパ、北アフリカ、 北アメリカなど北半球に多く自生。 |
開花時期 | 4~5月 |
紅葉時期 | 10~12月 |
楓の葉の特徴
葉っぱの形から「カエデ」と呼ばれるように
楓は、その葉っぱの形がカエルの手の形に似ていることから、「カエルデ」が転じて「カエデ」になったと言われています。その葉っぱの形は特徴的ですが、楓は世界中に150種類以上あるといわれ、葉っぱの形もよく知られているカエルの手のような形のものだけでなく、丸い形の葉っぱをつける楓もあります。
左右同じ位置から伸びる葉っぱ
楓の葉っぱの一番の特徴は、茎に対しての葉っぱの付き方にあります。楓の葉っぱは「対生」といって、茎に対して左右に伸びる葉っぱの付け根が、同じ位置にあります。アジサイやウツギなども同じように葉っぱが対生します(反対に、茎に対して交互についている葉っぱを「互生」といいます)。
楓の花の特徴
春に小さく目立たない花を咲かせる
楓は、寒さが和らぎ暖かくなってくる季節、4~5月頃に小さな花を咲かせます。淡い黄色や紫色、紅色などのあまり目立たない花です。なぜ小さく地味な花を咲かせるかというと、風媒花といって、風にのって種が飛ばされていくため、鳥や虫に気づかれるようにいい香りを出したりきれいな色をつけたりする必要がないからです。
楓の種の特徴
風にのって飛んでいく
楓の種は、左右に広がる2つの羽でクルクルとまわりながら風にのって飛んでいきます。その様子は小さくかわいらしい竹トンボのようです。この後ご紹介しますが、楓とモミジでは種にも違いがあり、楓は10~11月頃、モミジは暑い季節の7~9月頃に飛んでいきます。
楓とモミジの違い
楓とモミジの違いをご存知ですか?実はどちらも同じムクロジ科カエデ属で、植物分類上は一緒です。ではどのように呼び分けているのでしょうか。楓とモミジの違いについてまとめてみました。
楓(カエデ) | 紅葉(モミジ) | |
葉 | 手のひらのような形の葉っぱの切れ込みが浅い。 | 手のひらのような形の葉っぱの切れ込みが深い。 |
種 | 左右に広がる羽のような2つの葉っぱの下に種がついている。 種が飛ぶ時期は10~11月。 |
左右に広がる羽のような2つの葉っぱの上に種がついている。 種が飛ぶ時期は7~9月。 |
紅葉(モミジ)の名前の由来
紅葉する葉っぱを「もみじ」と呼んでいた
モミジという名まえの由来は、古語に葉の色が赤くきれいに色づくという意味の「もみづ」「もみづる」という動詞があり、また、「もみ」が紅色を意味するため、そこから「もみじ」という名詞になりました。もともとは、楓の種類に限らず、肌寒くなる季節、黄色や赤色にきれいに色を変え紅葉する全ての葉っぱを「もみじ」と呼んでいました。モミジを漢字で書くと「紅葉」になります。
楓の種類
楓は世界中に150種類以上、日本には20~30種類自生しています。そんなたくさんの種類がある楓の中から、イロハカエデをはじめ、いくつかご紹介していきます。
切れ込みがある葉っぱを持つ楓
イロハカエデ
イロハカエデは、太平洋側に多く自生する日本で一番有名な楓で、イロハモミジとも呼ばれています。イロハカエデは4~5月頃、淡い黄色や紫色の5~6mmほどの小さな花を咲かせます。葉っぱは3~6cmの大きさになります。
ヤマモミジ
ヤマモミジは日本海側に多く自生しています。葉っぱはイロハカエデの葉っぱとよく似ていますが、ヤマモミジの葉っぱのほうが少し大きく5~10cmほどの大きさになります。春に咲く花は淡い黄緑色や、淡い紅色をしています。
オオモミジ
オオモミジは、太平洋側に多く自生しています。葉っぱの縁にきれいな均等のギザギザの鋸歯があります。種も葉っぱもイロハカエデよりも大きく、葉っぱは7~10cmの大きさになります。オオモミジは淡い黄色や淡い紫色の花を咲かせます。
イタヤカエデ
イタヤカエデは、イロハカエデなどと比べると切れ込みが浅く、人の手のひらの形より、カエルの手のひらの形に近いです。葉っぱの縁にはギザギザがありません。紅葉の季節には黄色に色を変えます。早春の頃には幹からメイプルシロップがとれます。また、春には黄色の花を咲かせます。
切れ込みがなく楕円形の葉っぱを持つ楓
メグスリノキ
メグスリノキは、その樹皮を煎じて飲むと疲れ目などに効くといわれ、「千里眼の木」とも呼ばれています。秋になると、とてもきれいに紅葉します。葉っぱは切れ込みがない楕円形で、3つの葉っぱがくっついてつきます。葉先のほうに少しギザギザがあります。春には黄緑色の花を咲かせます。
チドリノキ
チドリノキの葉っぱは、切れ込みがなく楕円形です。葉っぱの縁にはくっきりとしたギザギザの鋸歯があり、葉脈も均等に細かくくっきりとしています。秋には黄色く葉っぱの色を変えます。春になると淡い緑色の目立たない小さな花をつけます。
クスノハカエデ
クスノハカエデの葉っぱは切れ込みがなく楕円形で、縁にはギザギザもなく、光沢がある緑色をしています。日本では沖縄に自生しています。紅葉することがなく一年中緑色をしています。春には淡い黄色の花を咲かせます。
外来種の楓
トウカエデ
トウカエデは中国原産の楓です。葉っぱは葉先の方に浅い切れ込みが二つあります。花は淡い黄緑色をしているので、葉っぱに紛れて目立ちません。
サトウカエデ
サトウカエデは北米原産の楓です。カナダの国旗のデザインに使われています。樹液を煮詰めると甘いメイプルシロップになります。葉っぱは3~5に分かれていて、その分かれた先にまた切れ込みがあり、7~15cmほどの大きさになります。春になると黄緑色の小さな花を咲かせます。サトウカエデはとても丈夫な木のため、メイプル材として床材などにも使われています。
楓の花言葉
花言葉は「美しい変化」「大切な思い出」
楓の花言葉は、「美しい変化」「大切な思い出」「遠慮」「節制」などがあります。緑色の葉っぱが黄色や赤色にきれいに色づく様子が、「美しい変化」という花言葉にぴったりです。ちなみに英語の花言葉は「reserve(蓄え、保留する)」です。この花言葉は、楓からしばらく蓄えておくことができるメイプルがとれることからきています。
まとめ
楓にはたくさんの種類がありますね。カエルの手のような形の葉っぱや、黄色や赤色に鮮やかに紅葉する木々に目がいきがちですが、控えめに小さく咲く花や、かわいらしくクルクルと飛んでいく種など、四季折々楽しませてくれます。ぜひいろいろな季節に注目してみてください。
出典:BOTANICA