ハナカイドウの概要
ハナカイドウは、春に桜の後を追いかけるように咲き始めます。淡い紅色の美しい花を咲かせ、花後には暗赤色の実をつけて装いを変化させます。中国が原産の植物で、日本には室町時代にハナカイドウの仲間が海を渡ってやってきました。ハナカイドウと呼ばれる本種は、江戸時代に日本に入ってきたものです。
基本情報
名称 | カイドウ、ハナカイドウ、スイシカイドウ |
学名 | Malus halliana |
分類 | バラ科リンゴ属 |
区分 | 落葉低木 |
原産地 | 中国 |
高さ | 1.5〜5m |
開花期 | 4月中旬〜5月上旬 |
耐寒性/耐暑性 | あり/あり |
特性 | 日当たり(強い西日を避ける) |
海棠(カイドウ)の棠は「梨」をさし、海から渡ってきたという意味で海棠の字がつけられました。特に花の美しい海棠は花海棠(ハナカイドウ)、実が大きい海棠は実海棠(ミカイドウ)と呼ばれるようになったといわれます。
時代ごとに解釈の変わる「カイドウ」
カイドウと呼ばれた植物は、国やその時代ごとに異なる植物でした。原産地の中国ではホンカイドウをカイドウと呼びます。日本では最初、カイドウとは室町時代に入ってきたミカイドウをさしました。その後、江戸時代にはカイドウをハナカイドウと呼ぶようになります。
特徴
ハナカイドウの枝はしなやかで、花柄(かへい)を長く伸ばして枝いっぱいに花をつける姿が美しく目を引きます。半開状態で下垂して咲くのが特徴で、花姿からスイシカイドウ(垂糸海棠)の別名もつけられました。葉を開花と同時に広げるため、新緑の葉が淡い紅色の花を際立たせます。
ボタニ子
桜との違い
桜と混同されやすいハナカイドウには、桜との明確な違いがあります。ハナカイドウと桜は同じバラ科の植物ですが、バラ科のなかでもハナカイドウはリンゴ属、桜はサクラ属に分類されます。花の咲く時期も着目点です。ハナカイドウは桜の花が終わった後に咲き始め、葉を同時に広げる点が桜とは異なります。
ボタニ子
ハナカイドウは落葉低木なのに対し、桜は落葉高木に分類されることから、樹高によっても見分けることが可能なのよ。
花言葉
ハナカイドウの花言葉には、「美人の眠り」「艶麗」「友情」「温和」があります。中国の玄宗皇帝が、寵姫の楊貴妃をたとえた「カイドウの眠り未だ足らず」が由来とされる花言葉「美人の眠り」「艶麗」は、ハナカイドウの美しさをさらに印象づけます。
ハナカイドウの栽培カレンダー
季節ごとにすること
春は開花後にお礼肥
ハナカイドウの開花時期は、4月中旬~5月上旬です。花が散った後、お礼肥を与えます。花後の剪定も忘れないように気をつけましょう。
夏は乾燥に気をつける
ハナカイドウは乾燥に弱いため、鉢植え栽培では水やりを欠かさないのが重要です。直射日光が長時間当たっていないかの確認も必須です。
冬は植え付けや追肥の季節
ハナカイドウの植え付け・植え替えは冬場が最適です。植え替え時は根の整理をして、新しい鉢に植えましょう。肥料もこの時期に与え、花が咲くのを待ちます。
ハナカイドウの育て方【準備~植え付け】
春の庭に、枝いっぱいに淡い紅色の花を咲かせたハナカイドウを楽しむために、上手な育て方のポイントを詳しくみていきましょう。
栽培環境
ハナカイドウは日光を好む植物のため、庭木として地植えする場合は日当たりのよい場所を選びましょう。満開の花を楽しむには日光が不可欠で、半日陰も避けたほうが安心ですよ。日光を浴びた時間が少ないと花数が極端に少なくなり、咲かない原因にもなります。またハナカイドウは乾燥も嫌うため、強い西日を避けることも覚えておきましょう。
ボタニ子
ハナカイドウは鉢植えでも育てられるよ!四季ごとに日当たりが最適な場所に移動できるメリットがあるね。
用土
ハナカイドウは水はけがよく肥えた土を好む性質のため、植え付け前にあらかじめ腐葉土と堆肥をしっかりすき込んでおきます。鉢植えで育てる場合は、小粒の赤玉土4:腐葉土3:黒土3の割合で土を作りましょう。
植え付け
ハナカイドウの植え付けは、暖地は12〜2月、寒冷地は3月に行いましょう。植え穴にたっぷり水を与えてから、苗を植え付けます。接木苗の場合は、接木部分をしっかりと土で覆うように植えまましょう。鉢植えの場合は、根鉢より一回り大きい鉢に植え付けます。根を密に張らせるためには、大きすぎる鉢は選ばないように気をつけましょう。
ハナカイドウの育て方【日常管理】
水やり
ハナカイドウは乾燥を嫌う植物のため、鉢植えは土の表面が乾いたら、鉢底から流れ出るまでたっぷりと水を与えましょう。夏の時期は水切れを起こしやすいことから、涼しい時間帯の朝と夕方、1日2回たっぷりと水やりします。庭木の場合は、根づいてしまえば降雨のみで問題ありません。夏場に雨が降らないときに、土の乾燥具合を見ながら水を与えましょう。
追肥
花後、お礼肥として緩効性化学肥料を与えましょう。また、2月ごろには、開花に向けて栄養を与えなければいけません。骨粉や油かすなどの有機質肥料を株元に一握り程度与えてください。
剪定
日当たりが悪いと、ハナカイドウは極端に花数を減らします。加えて、枝葉が混み合うことでも花数に影響します。幹にしっかりと日光が届くように剪定が必要です。花後すぐと、落葉期の冬に軽く整える程度に剪定します。誤って花芽を切り落としてしまうなど、剪定の方法が間違っていると花が咲かない原因になります。
花が終わったころの剪定
花後すぐに花芽ができ始めるため、伸び過ぎた枝を少し整える程度の剪定にします。この時期の強剪定は控えましょう。ただし、接ぎ木苗の場合は根元から伸びてくる枝を見つけ次第剪定します。
落葉期の剪定
この時期に花芽のついていない枝や、強く伸び過ぎた枝、からみ枝などを剪定します。徒長枝は半分くらいに切り詰めましょう。花芽は前年度に萌芽した短い枝の先につくため、誤って落とさないように気をつけます。
植え替え
植え替えは植え付け時期と同様の、落葉期にあたる2月ごろ行いましょう。鉢植えの場合は、2〜3年に1回を目安に、根詰まりを起こしていないかの確認をかねて植え替えます。
ボタニ子
次のページでは、ハナカイドウにつきやすい害虫やかかりやすい病気を解説するよ!
ハナカイドウの開花は、桜の花が終わりを迎えるころだよ。