水前寺菜とは?
緑と紫の葉の色が美しいちょっと珍しい野菜、水前寺菜(スイゼンジナ)をご存じですか?どこにでもあるわけではない野菜ですが、なんだか気になる名前ですよね?水前寺菜とはどんな特徴をもつ野菜なのか、また水前寺菜の育て方やおいしい食べ方をご紹介します。
水前寺菜の特徴
水前寺菜は春菊と同じキク科の野菜です。葉の表側の深い緑色と裏側の鮮やかな紫色のコントラストが美しいのが大きな特徴です。熊本県にある水前寺地区の湧き水で栽培されたことから、水前寺菜という標準和名が与えられました。
「式部草」「はんだま」
中国、東南アジアから日本に伝えられた水前寺菜には多くの別名を持っています。伝統的作物として日本各地で生産されており、愛知県では「式部草(シキブソウ)」沖縄では「はんだま」と呼ばれています。
「金時草」
「金時草(キンジソウ、キントキソウ)」は石川県金沢市の伝統野菜を意味する加賀野菜です。「金時草」の名前は、葉の裏の赤紫色が金時芋の色に似ていることに由来します。
葉の特徴
円柱状の茎に葉っぱは丸みをおびた長い楕円形、切れ込みがあり、先端はとがっています。葉の長さは10cmほどになり、やや多肉質の厚みとハリのある葉が互生します。葉の表は深緑、裏は紫、つぶすと赤い糸の汁がでます。草丈は50~90cm程度です。
2色の葉
葉の表裏の美しい色の違いが特徴の水前寺菜の葉ですが、この美しい赤紫色は山間部などの日照時間が限られ、1日の寒暖差が大きいほど、鮮やかになります。
花の特徴
多年草である水前寺菜は、夏に黄色やオレンジ色の小さな花を咲かせます。この水前寺菜の小さな頭状花は種子ができないことが特徴です。種ができないので繁殖する場合は挿す芽で増やします。
水前寺菜の育て方
水前寺菜の育て方は比較的簡単なので、家庭菜園ビギナーさんにも楽しめます。暑さに強く、生育の適温は20~25℃、6月から10月まで長い収穫時期があるのがうれしいですね。では、水前寺菜の育て方をご紹介しましょう。
必要な温度
水前寺菜を育てるにあたって大事なポイントは温度と乾燥をコントロールすることです。暑さは強い水前寺菜ですが、乾燥にはとても弱いのです。成長に適している温度は20℃~25℃程度ですので、暑すぎず、寒すぎない環境を用意します。温度差が大きいと葉の裏側の赤紫色が鮮やかになります。
水やり
乾燥には弱い水前寺菜なので、土は保水性、通気性のよいものを選びます。暑さが続く夏にはたっぷりの水やりが欠かせません。敷きわらなどで乾燥を防いであげる工夫も必要です。
育て方
前述の通り水前寺菜は、種をつけない植物ですので、買ってきた水前寺菜を挿し木にして育てます。枝を整理して水または土に挿しておくと、10日から15日程度で根が出てきます。根がしっかり出たら直接プランターなどに植え替えましょう。植え替えた後は暖かい場所で管理します。株間を35~40cmとりましょう。
育て方のポイント
日差しが強すぎる場合には葉が硬くなってしまうことがあるので注意が必要です。温度が高すぎたり、日にあたる時間が不足したりすると、葉の色の発色が悪くなることがあります。
収穫時期
水前寺菜の収穫時期は7月下旬~11月にかけてです。この間30回以上の収穫が可能です。30~35cm程度の大きさにまで成長したら、葉がやわらかいうちに茎を3cmほど残して収穫しましょう。しっかり水やりをして、肥料を追加してあげるとさらに育っていきます。肥料をやりすぎるとアブラムシの発生の原因となるので注意が必要です。
収穫方法
早朝など気温が低い時間に収穫すると持ちがよくなります。収穫は雨の日の収穫は避けて、お天気のよい日を選びましょう。雨の日に収穫すると切り口から腐ってしまうことがあるからです。収穫したら切り口を水で湿らせた新聞で覆って保存します。剪定をすると葉腋からどんどん新芽がのびてきます。
増やし方
水前寺菜は種ができない植物なので、挿し木や株分けで増やします。株分けの時期は芽吹き前の3月ごろが適しています。挿し木にするなら5~6月に茎が硬くなったころに15~20cmほどに切って、下葉を整理して前述の育て方の手順に従ってください。
食材としての水前寺菜
水前寺菜は、愛知県、石川県、熊本県、沖縄県など地方の伝統野菜として親しまれています。軽く茹でてポン酢をかけるだけで十分おいしく、お料理にも取り入れやすい食用葉です。水前寺菜とはどんな野菜なのかをまとめました。
野菜としての葉の特徴
加熱することで、モロヘイヤのように葉からぬめりや粘りがでるので食感を楽しめます。キク科独特の強い香りがありますが、味にクセはないので、天ぷら、おひたし、炒め物などさまざまなレシピに応用できます。お料理には甘みのある若い茎と葉を利用します。
旬の季節
夏の野菜、水前寺菜は暑い時期に育つため、7月~9月ごろが旬の季節となります。寒くなる11月ごろには収穫も終了、冬には地上部が枯れてしまいます。
葉の色と栄養
水前寺菜を茹でると葉は緑色にゆで汁は鮮やかな紫色になります。この紫色には、カロテン、ビタミンC、カリウムやカルシウムなどの栄養素が含まれます。この色は民間療法では血の葉、不老長寿の薬とも呼ばれ使われています。目や肌にもよい効能があるとも伝えられています。
栄養と効能
水前寺菜の葉の赤紫色の部分にはポリフェノールの1種、アントシアニンが含まれています。アントシアニンには強力な抗酸化作用があるので、老化防止の見方です。血糖値を抑える効果もあるので、健康には有益な効能をもつ野菜なのです。疲労回復にも水前寺菜をおすすめします。
選び方
おいしい水前寺菜を選ぶときのポイントは以下の通りです。まず葉の先端までハリがあってシャキッとしたものを選びます。次に葉の色にツヤがあって、色が鮮やかなもの、とくに赤紫色の部分が濃くて美しいものがよいでしょう。主に葉の部分を料理に使うので、葉のつきがよく、葉の1枚1枚が十分な大きさになっているものがおすすめです。
保存方法
他の葉野菜と同じように、水前寺菜は濡らした新聞紙などで包んでポリ袋に入れて冷蔵庫で保存します。乾燥すると傷みやすいのでビニール袋は必須です。また、横に寝かせた状態だと茎が曲がりやすくなったり、傷みが早くなるのでできるだけ立てた状態で保存が望ましいです。
水前寺菜の食べ方
水前寺菜はお浸しやみそ汁の実、天ぷらなどにするとおいしい野菜です。クセがないので、水菜や小松菜などの葉野菜と同じようなレシピで使えます。水前寺菜のおすすめの食べ方とレシピをご紹介します。
下ごしらえ
- 茎の硬い部分は食べられないので葉から切り離して捨てます。
- 葉は食べやすい大きさに切っておきます。
- 鍋に水をいれ、2~3%の塩を加えて加熱、沸騰したら葉を鍋に加えましょう。
- 菜箸で全体をざっとまぜ30~45秒程度で取り出します。
- すぐに冷水にさらし、水ですすぎながらアクを抜きます。
- ザルなどにあげて軽く水気をしぼります。
おすすめレシピ①天ぷら
水前寺菜の葉の片面だけに天ぷらの衣をつけて揚げます。かき揚げにする場合は、茎の繊維に沿って細切りにしてから他の具とまぜて揚げましょう。
おすすめレシピ②おひたし
下ごしらえした水前寺菜の葉にポン酢、だし醤油をかけ、かつおぶしなどを添えていただきます。ごま和えやからし酢味噌和えにするのもおすすめです。
おすすめレシピ③水前寺菜のサラダ
フレッシュな水前寺菜はサラダにしてどうぞ。ツナ、レタス、オリーブの実、そして水前寺菜も加えてお好みのドレッシングでいただきます。お酢を効かせるとおいしくいただけます。
まとめ
日本各地で伝統野菜として親しまれてきた水前寺菜についてご紹介してきました。育て方も簡単でいろいろなお料理に使える野菜なので、身近な食材として楽しんでみてはいかがでしょうか。
出典:写真AC