納豆も腐る
納豆は発酵食品のため、もともと腐っているから腐らない食べ物というイメージがあるかもしれません。実は、納豆でも腐ります。「発酵=腐敗」ではないからです。発酵と腐敗とでは、食べ物や人の体に与える影響がまったく違います。
発酵と腐敗の違い
発酵と腐敗は、どちらも菌を繁殖させてできるもので、メカニズムは同じです。実は、発酵と腐敗の違いは人の価値観によって区別されています。人がおいしいと感じて体によい影響を与えるものが「発酵」、人が苦みや悪臭を感じて体に悪い影響を与えるものが「腐敗」とされています。発酵食品でも日にちが経って、人がおいしくないと感じれば、それは腐敗になります。
発酵と腐敗の違い
- 発酵:食べ物の旨味や風味をだし、人の体によい影響を与える
- 腐敗:食べ物に苦みや悪臭を引き起こし、人の体に悪影響を与える
納豆が腐るとどうなる?
納豆は賞味期限から5日ほど過ぎてくると、納豆菌が弱まり、腐敗が始まります。納豆が腐ると見た目や食感などさまざまな変化が現れます。食べても害はないものの、おいしさは感じられません。正しい見分け方で、納豆が腐っているかの判断をしましょう。
食感が変わる
納豆が腐ると食感が変わります。豆の弾力のある食感ではなく、まるで砂のようなジャリジャリとした食感に変わります。苦みもでてきて、納豆本来のおいしさを味わえません。
糸を引かない
納豆といえば、ネバネバと糸を引くのが特徴で、おいしさの証でもあります。しかし、納豆が腐ると粘りがなくなり、あまり糸も引かなくなって、ドロッと溶けたような水っぽい感じになります。納豆の色も濃い茶色になってくるため、色での見分け方もポイントです。
アンモニア臭がする
納豆が腐ってくるとにおいも変わります。納豆独特のにおいから、アンモニア臭のような鼻にツンとくるにおいに変化します。腐っているかどうかの見分け方は、においをかいで判断してみるのもよいでしょう。
納豆が腐っているかの見分け方
- 味:苦みが出てくる
- 食感:砂のようにジャリジャリとしている
- 見た目:粘りがなくドロッとした水っぽい感じ
- におい:アンモニア臭のようなツンとしたにおい
納豆の白い粒はカビ?
賞味期限を過ぎた納豆を開けたとき、白い粒々が付いているのを見て「カビ」だと思い、食べようかどうか迷ったという経験をした人もいるでしょう。実は、白い粒はカビではなく発酵によって発生するものです。
白い粒の正体
納豆の表面に付いている白い粒々の正体は、チロシンというアミノ酸の結晶です。賞味期限を過ぎたり、賞味期限内でも10℃以上の場所に長時間置かれていたりすると、発酵が進みチロシンの白い粒が発生します。賞味期限が過ぎた納豆を食べたときにジャリジャリとするのは、チロシンを一緒に食べているからです。納豆の風味は落ちてしまいますが、体に害はないため食べても問題はありません。
ボタニ子
チロシンは疲労回復や集中力アップなどの効能があるので、悪いものではないよ!
納豆にもカビは生える
納豆菌とカビ菌では、繁殖する温度や時間が違うため、同じ状況下では発生しません。もし納豆を作る段階で、カビ菌が付着してしまっても、納豆ができるころには納豆菌の数が圧倒的に多く強いので、カビ菌が繁殖できないからです。しかし、保存状態が悪かったり、長期間保存していたりすると納豆菌が弱ってしまい、まれにカビが生えることがあります。
繁殖する温度と時間
- 納豆菌…47℃~50℃で約20時間
- カビ菌…20℃~25℃で5日間
カビが生える原因①乾燥
納豆は10℃以下の冷蔵保存が一般的です。しかし、冷蔵保存していても賞味期限から2週間以上も経ってくると、湿度の少ない冷蔵庫の中では、納豆が乾燥してしまいカビが生えることあります。
カビが生える原因②解凍後の保存状態
冷凍保存すると、納豆菌は眠った状態になり、解凍すると発酵が再び始まります。冷凍保存した納豆は、食べる前日に冷蔵庫でゆっくり解凍するのがおいしく食べられる方法です。しかし、解凍した納豆を何日も冷蔵庫に入れた状態のままにしておくと、湿度が少ないため納豆が乾燥してしまいカビが生えることがあります。
カビが生える原因③手作りするときの環境
市販の納豆は無菌室で作られているため、賞味期限内にカビが生えることは極めて少ないです。しかし、納豆を手作りする場合、納豆を作っている段階の何かのきっかけでカビ菌が付着してしまい、さらに発酵しているときの環境が悪いと、カビが生える原因になります。
出典:写真AC