マコモダケとは?
マコモダケは、東南アジアや東アジアに広く分布する植物です。イネ科の植物なので水のある場所に自生する特徴があり、日本でも河川や湖、沼などで生育しているのを見ることができます。なおイネ科の植物なので食用としても流通していますが、可食部分や食べ方は一般的なイネ科植物の特徴とは違います。
古代日本では穀物に分類
主食になる穀類といえば、日本ではコメ、麦、アワ、豆、キビ(またはヒエ)の五穀を意味します。ところが日本最古の書物「古事記」では主食となる穀類は五穀ではなく六穀であるとしており、そのうちの1つにマコモダケが含まれます。さらに穀類としてのマコモダケの歴史は、コメの歴史よりも長いのも特徴です。
黒穂菌に寄生させて作る
イネ科に分類されるマコモダケは、栽培方法もイネや米を栽培する方法とほぼ同じです。ただしマコモダケは成長すると根元に「黒穂菌」と呼ばれる菌を寄生させ、実を肥大する特徴があります。ただしイネ科植物の中で黒穂菌が成長に関係するのはマコモダケのみで、ほかのイネ科植物にとって黒穂菌は厄介な病気です。
黒穂菌とは?
黒穂菌とは、担子胞子で繁殖する特徴を持つ菌の1種です。主にキノコなどが同じ特徴の胞子を持っていますが、マコモダケはイネか植物なのでキノコ類ではありません。通常だと黒穂菌が繁殖したイネ科植物は「黒穂病」という病気にかかり枯れるのですが、マコモダケは黒穂菌がなければ実が成長せず収穫ができません。
収穫の旬を過ぎると黒穂菌の影響で変色する
黒穂菌によって肥大した部分を可食部分とするマコモダケは、旬の時期に収穫すると黒穂菌の黒い斑点が出ないため真っ白い実になります。ところが旬を過ぎると黒穂菌が大繁殖し、実の部分にも大量の黒穂菌の斑点が現れます。さらに収穫をせず黒穂菌を放置すると、実の斑点は大きくなり全体が黒く変色します。
マコモダケの旬
マコモダケの旬は、可食部分によって違います。野菜として出荷されるマコモダケは秋が旬の秋野菜ですが、お米の代用になるマコモダケの種子は1年を通していつでも収穫できるため、旬は特にありません。さらに葉は実の収穫後に刈り取るため、実を収穫した直後が葉の旬といえます。
顔料として重宝
マコモダケは黒穂菌が繁殖することで可食部分をぷっくりと膨らませるのですが、旬を過ぎると可食部分は黒穂菌の影響で黒く変色します。この黒い部分を取り出し顔料にしたものが「マコモズミ」です。なおマコモダケから抽出したマコモズミは、日本の伝統工芸品である漆器や鎌倉彫りなどに使われています。
女性の化粧品としても使われた
成人女性のたしなみだったお歯黒も、マコモダケの顔料が使われた。
日本では明治時代に政府によって禁止されるまで「お歯黒」という化粧文化がありました。お歯黒は歯を黒く塗る化粧の1つで、歯を黒く塗る化粧道具の1つにマコモダケの顔料が使われました。なおマコモダケの顔料は、お歯黒のほかに眉墨としても使われています。
別名「神様の草」
マコモダケの名は宗教でもよく登場しますが、なかでも特に有名なのが仏教に登場するマコモダケです。伝説ではブッダがマコモダケで編んだむしろに病人を寝かせると、あらゆる病気が治ったといいます。同じような伝説は世界中の宗教にもあるため、マコモダケは「神様の草」「神様が宿る草」ともいいます。
しめ縄もマコモダケが原料
日本の神社でよく見かけるしめ縄は、穢(けが)れを嫌う日本の神様のために結界として境内の入り口や鳥居などに取り付けます。そんなしめ縄は「神様の草」と呼ばれるマコモダケを原料にしており、しめ縄のほかにも神社の神事や伝統行事などでマコモダケを使うことがあります。
産地によって呼び方が違う
日本も原産地の1つであるため全国で栽培されているマコモダケですが、産地によってはマコモダケとは違う呼び方が主流になっていることもあります。特に九州・沖縄地方ではその傾向が強く、沖縄県では「マクブー」、鹿児島県奄美大島では「タイワンダーナ(台湾竹)」という呼び方が一般的です。
中国では「美人腿」と呼ぶ地域もある
野菜として出荷されるマコモダケは緑の葉鞘に包まれた状態で出荷されますが、料理するときは葉鞘を数枚はがし中の白い実だけを取り出して料理します。なお硬い葉鞘に包まれたマコモダケの実は傷もなく色も真っ白なので、中国では「色の白い美人の足に似た野菜=美人腿」と呼ばれています。
穀物としてのマコモダケは、コメの歴史よりも古い。