ワケギとは
ワケギ(分葱)とは、ネギの仲間で薬味などによく使われる緑黄色野菜です。広島県が主な生産地で最近では年中お店で売られていますが、実は3~4月が旬の野菜です。ネギとよく間違えられるので、ここでワケギの基本情報やネギとの違いなどについて紹介します。
基本情報
学名 | Alium×wakegi |
英名 | Wakegi green onion |
和名 | 分葱(わけぎ) |
属名 | ヒガンバナ科ネギ属 |
分類 | 多年(宿根)草 |
原産地 | ギリシア |
草丈 | 25~30cm |
耐寒性・耐暑性 | やや弱い |
ネギとワケギの違い
ワケギとネギは同じネギ属の植物でよく似ていますが、大きな違いがあります。その違いとは次のようなものです。
ワケギ | ネギ | |
分類 | ネギと玉ねぎの中間種 | ネギ属の植物 |
原産地 | ギリシア | 中国南部、中央アジアなど |
特徴 | 根元の部分が膨らんでいる 花が咲かない 辛味が少なく香りがやわらか |
根元から葉の部分までまっすぐ 花が咲く 独特の辛味があり香りが強い |
お店で購入するときには、根元の部分を見て区別するのがポイントです。また、ワケギはネギに比べてクセがなく加熱すると甘みが増すので、酢みそであえた「ぬた」や炒め物、スープの具などにすると美味しいのでおすすめです。
東日本での「ワケギ」は「分けネギ」のこと
ワケギは、球根で育ち根元から分かれて生えてくることが由来となってついた名前です。温暖な気候を好んで育つため、広島を中心にほぼ西日本だけで栽培されてきました。そのため「ワケギ」は東日本ではなじみがなく、さらに葉ネギの分かつ数が多い「分けネギ」という品種のことを「ワケギ」と呼んでいるので東日本の人にはよく間違えられるので注意してください。
ワケギの植え方
日本のワケギは花が咲かないため、種ではなく球根から育てます。プランターでも簡単に育てられる野菜なのですが、よく育つようにするためにはいくつかの大切なポイントがあります。ここではワケギの植え方の重要なポイントを紹介していきましょう。
土作りのコツ
ワケギを育てるときに大切なのは土作りです。畑の場合は植え付けをする2週間前に苦土石灰を1㎡あたり100~150gほど土に混ぜておき、その1週間後に堆肥と緩効性化成肥料を混ぜて馴染せます。プランター栽培の場合は、野菜用の土や赤玉土(小粒)と腐葉土を7:3の割合でブレンドし緩効性化成肥料を混ぜた土を使用します。
植え付け時期
ワケギは初夏に休眠期に入り晩夏から生育期に入ります。生育適温は15~20℃なので、8月中旬~9月ごろが植え付けに最適な時期です。東北などの寒い地域では8月~9月、九州や沖縄などの暖かい地域では9月~10月に植え付けを行うとよいでしょう。
植え付けの方法
ワケギの球根の植え方は次のような手順で行います。
- プランターで育てる場合は鉢底石を敷きその上にプランターの8分目くらい土を入れ、畑で育てる場合は畝を作っておく
- 球根が入る位の深さ(5~6cm)の穴を15cm間隔で掘る
- 1つの穴に2球ずつ球根の先が細くなった方(芽)を上にして入れる
- 球根の芽の先が少し出るように土を被せていく
- 植え付けが終わったらたっぷりと水を与える
- プランターは風通しのよい日なたに置く
植え付け方のコツ
プランターで育てる場合は、標準サイズ(横幅65cm、内容量13L)に4~5個穴を掘って植え付けるのがおすすめです。また畑で育てる場合は、幅1~1.2mで高さ10cmくらいの畝に2列に植え付るとよいでしょう。
連作障害を防ぐポイント
ワケギは、1度植えた所と同じ場所に植えると土の栄養状態や微生物などのバランスが崩れて十分に育たなくなってしまう、連作障害を起こす植物です。ワケギの連作障害を予防するためには、同じ場所での栽培は1年以上間隔をあけるようにしましょう。
ワケギの栽培方法
ワケギはあまり手間がかからず、手入れの仕方のポイントさえおさえていれば失敗することなく育てられます。ここでは、植え付けた後に必要な手入れ方法のポイントやワケギの増やし方について紹介します。
栽培方法①水やり
ワケギは乾燥すると十分育たなくなります。プランターで育てる場合は土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えるようにしましょう。畑で育てる場合は基本的には水やりの必要はありませんが、雨が降らない日が続いて土が乾燥していたら水やりをするようにしてください。
栽培方法②肥料
肥料の与え方は、ワケギの葉が10cmくらいまで伸びたら株元に土寄せをして化成肥料の追肥をします。その後は半月に1度ほど根元に土寄せをし、葉の成長具合を見ながらプランターの場合は1週間に1回液体肥料を、畑の場合は2週間~1か月に1回化成肥料を追肥してやるとよく育ちます。
栽培方法③増やし方
ワケギは、球根で育てる植物の増やし方の1つである「分球」という方法で増やせます。「分球」とは親球から新しく出た子球を切り離して使う増やし方のことです。ワケギは育っていくと自然に分球するので、植えるときに球根の外皮をむいてから分球して植え付けます。
ワケギの収穫方法
ワケギを収穫するときは根っこごと引き抜いてもよいのですが、葉だけを切り取るとそこからまた葉が伸びて再度収穫できます。ここでは、ワケギを収穫する方法とポイントを紹介します。
収穫時期
ワケギは、葉を切り取って収穫し球根を植えたままにしておくと何度でも収穫できます。収穫の目安は、ワケギの葉が20~30cmほど伸びた状態です。ただし、何度も切り取ると葉が細くなっていき美味しくなくなるので、収穫は夏に植え付けた場合なら10月~11月と3月~5月の年に2回までにしておくのがおすすめです。
収穫時のポイント
ワケギを収穫するときには、園芸用のハサミや鎌で切り取ります。切り取るときに、根元から3~5cmほど上を水平に切るとまた葉が伸びてきて再び収穫できます。収穫後に500倍に薄めた液体肥料を与えて新芽が出るのを促すのがポイントです。株ごと掘り取る場合は、葉を40cm以上伸ばして収穫します。
球根の掘り上げ
ワケギは、収穫後に球根を掘り上げておくと次の年の植え付けにも使えます。その場合は、収穫後もしばらくは球根を土の中に置いておき、6月ごろ葉が枯れたら掘り上げましょう。掘り上げた球根は風通しのよい日陰でしっかり乾燥させ、冷暗所で保存しておきます。球根が湿ったままだとカビが発生してしまうので注意してください。
ワケギを害虫や病気から守る方法
ワケギは、害虫や病気が付きにくく手入れが少なくてすむ野菜です。しかし、環境や天気などによって時折、害虫や病気に侵されることがあります。ここでは、害虫や病気の予防法や対処法などについて紹介します。
主な害虫とその対策
害虫①ネギアザミウマ
ネギアザミウマは、ネギの仲間の天敵ともいえる害虫です。体長が1~2mmほどで、成虫・幼虫ともに葉を食べるだけでなく、ウイルスの感染源にもなります。ネギアザミウマが付くと葉に小さな白い斑点ができ、ひどい場合は葉全体がかすり状に白くなります。梅雨明けの時期に増加しやすく、植え付けたばかりの株が狙われやすいです。
<対処法>
- 球根を植え付けるときに粒状の殺虫剤をまく
- 雑草から移されるのでこまめに雑草を抜く
- 症状が現れた葉は摘み取る
害虫②ネギアブラムシ
体長1.8~2mmの黒色の小さな虫で、葉の汁を吸ってワケギを枯らしてしまいます。6月ごろに多く発生し、ウイルスの媒介にもなります。
<対処法>
- 植え付けのときに粒状の殺虫剤をまく
- 反射光を嫌うので銀色のテープを周囲に貼る
- アブラムシがついたらワケギ用や野菜用の殺虫剤を使用する
主な病気とその対策
病気①白色疫病
カビが原因で起こる病気です。病原菌の発育適温が15~20℃なので、2~3月で暖かい日が続いたときや4月の気温が低く雨が続いたときなどにかかりやすくなります。発症すると葉の先が白くなり葉が垂れ下がったりよじれたりして枯れていきます。1株が発症するとあっという間に広がっていく怖い病気です。
<対処法>
- 土の水はけをよくしておく
- 肥料を与えすぎないようにする
- 発症した株はすぐに抜き取りほかのワケギから遠ざける
病気②さび病
カビが原因で起こる病気です。発症すると葉にオレンジ色のぷっくりした小さな斑点ができ、斑点がやぶれてさび色の粉(胞子)が飛び出します。病気が進行すると葉全体がさび色の粉にまみれて枯れてしまいます。春(5~6月)と秋(10~12月)の2回発生しやすく、発症してしまうと対処の難しい病気です。
<対処法>
- 風通しのよい場所で育てる
- 肥料が切れると発症しやすいので定期的に肥料を与える
- こまめに雑草を取り除く
- 発症した株はすぐに抜き取り焼却する
まとめ
ワケギは、育て方のコツさえ掴んでいれば家庭菜園初心者でも簡単に育てられる野菜です。今回紹介した植え方や手入れの仕方を参考にして、美味しいワケギを育ててみてください。