ヤマシャクヤクの育て方
ヤマシャクヤクは、育てる環境を自生地の条件に近いように整えると成長がよいです。育て方がとても難しいわけではありませんが、日常の手入れや病気と害虫の予防が大切です。増やし方は株分けする方法が一般的ですが、実生(みしょう=種子から発芽させて新しい苗を得ること)で増やせます。種をとらない場合は、花後に茎を切り落として株に養分を回します。
環境
ヤマシャクヤクは日陰を好む植物のため、年間を通して強い日差しがあたる場所は避けましょう。芽が出る3月から花の終わる6月頃までは、直射日光はよくありません。1年中日陰で風通しのよい場所が適していて、地植えの場合は樹木の下がよいでしょう。鉢植えの場合は、時期によって置く場所を変えて日陰を保ち、真夏の暑さ対策をしっかりとします。
ヤマシャクヤクは、厳しい寒さの中では冬越しができません。1年を通して日陰の環境を好みますが、自生できる北限は関東地方とみられています。冬越しのための特別な作業は必要ありません。寒さが続くようなとき、鉢植えの場合は室内に移動させるとよいでしょう。根は休眠していますが、適度な水やりは必要です。
用土
ヤマシャクヤクは湿度がありすぎてもよくないので、水持ちと通気性のよい用土を準備します。目安としては、赤玉土と鹿沼土を1:1にして、軽石の小玉を加えてもよいでしょう。植木鉢の場合は、最初から大きめの鉢やプランターを用意します。根が横に張って大きく根塊へと成長するためです。植木鉢は多湿になりやすいので、風通しのよい場所を確保しましょう。
肥料
ヤマシャクヤクは根茎が大きくなって成長する植物です。根と芽の成長は比例するので、肥料が重要で、しっかり与えると花がよく咲きます。植え付けの際に元肥として根にあたらないよう置き肥を施します。肥料を好むといっても与えすぎはよくありません。春は芽の出る頃から夏に向けて半年に2回程度、2ヶ月に1回程度の一定期間を空けて与えるとよいでしょう。
ヤマシャクヤクは、秋に花芽が大きく成長するため、液体肥料を2週間に1回の割合で与えます。植え替えをする場合は、同時に肥料を施すとよいでしょう。地植えの場合も、鉢植えと同様に春と秋に肥料を与えます。地植えの場合は、化成肥料を使うと土が痩せることがあるため、有機系の小粒の肥料を株元に撒く方法が楽にできます。
水やり
ヤマシャクヤクは、水やりが葉の成長を保つ大きなポイントです。葉は光合成をして根に栄養を送る役割をしているので、葉に勢いがなくなってきたら水切れのサインです。水分が多くなりすぎると、根腐れを起こして葉が倒れてしまいます。表面の土が白っぽく乾いたら水やりをしましょう。季節によっては雨ざらしも、植木鉢の中が多湿になる原因の1つです。
植え替え
ヤマシャクヤクの植え替えは、2年に一度くらいで行うとよいでしょう。植え付けた翌年は、花がつかないことがあります。植え替えの時期は休眠期の9~10月頃ですが、成長を見て早めに行うと根を傷めません。植え替えをしない場合は、芽の付け根が見えない程度に土の量を調整すると冬の乾燥から守れます。
病気や害虫
ヤマシャクヤクはボタン属の植物で、ボタンがかかる病気や害虫の予防が必要です。梅雨時のうどんこ病が多く見られ、土壌のウィルス病などを防ぐためにも定期的に薬剤散布が効果的です。害虫は、テッポウムシやヨトウムシ、ハダニなどの被害に遭いやすいです。害虫は見つけ次第駆除するとともに害虫が好むような環境にしないこと、予防のため薬剤散布をするとよいでしょう。
増やし方
ヤマシャクヤクは実をつけるため、増やし方としては株分けと種まきの2種類があります。株分けは花期以外の時期に行うとよいでしょう。株分けは根茎に芽がついている状態で分けることが大切です。実は袋果(熟すと果皮がはじけて種子がこぼれる)で完熟した種は黒く、赤い場合は不稔(ふねん=種子になっていない、形成異常で生育していない)です。
株分け
株分けは花期を除いた時期であれば問題ありません。根茎の形によっては分けることば難しい場合があり、無理に分けると根がつかないで枯れることがあります。芽に根茎がついていることを確かめて刃物で切り取り、切り口は殺菌剤を塗布しておきましょう。切り口をそのままにしておくと、腐ってしまう原因になります。植え替えの時期に株分けを行うと失敗しにくいです。
種まき
増やし方として種まきをしたい場合、実がはじけると黒い種子が下に落ちるので、拾って別の培養土に蒔いて薄く土をかぶせます。発芽するまで2~3年かかるので、根気よく管理する必要があります。日陰で乾きすぎないよう水やりを続けましょう。発芽してから開花まで4~5年かかるのが一般的です。
まとめ
ヤマシャクヤクは白い花と実の美しさが印象的です。蕾から花開く頃に茶花としてよく見かける花です。実がはじけたときの美しさは、別の見ごたえがあります。地植えの場合は、場所によって花が咲いたり、株がなくなってしまうことがあるので、自生の環境に近い場所を探しましょう。花が咲くまで根気がいりますが一度育ててみてはいかがでしょうか。
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