イブキトラノオ(伊吹虎の尾)ってどんな植物?
動物のしっぽのようなかわいい花を咲かせるイブキトラノオ(伊吹虎の尾)は、冬が来ても枯死することなく、翌年に新芽をだす多年草の植物です。草丈が約120cmほどに成長する丈の高い野草で、地中内にある「根茎(こんけい)」から生薬が作られる薬草としても知られています。
基本情報
名前 | イブキトラノオ |
和名 | 伊吹虎の尾 |
学名 | Bistorta officinalis subsp. japonica |
分類 | タデ科:イブキトラノオ属 多年草 |
草丈 | 約40cm~120cm |
開花時期 | 6月~8月 |
原産地と自生地
イブキトラノオは、日本やユーラシア大陸の北部が原産の野草です。日本では北海道~九州に分布し、山地や高山の草地に自生します。日当たりがよい開けた場所に群生して生えることもあり、開花時期は登山やハイキングで訪れた人の目を楽しませます。
和名の由来
日本でイブキトラノオが初めて発見された場所は、滋賀県と岐阜県にまたがる標高1,377mの「伊吹山(いぶきやま)」で、山の名前がそのまま和名に使われています。また、動物のしっぽのような花の付き方を「虎の尾」に見立てつけられています。
ボタ爺
ボタニ子
イブキトラノオの群生、私もいちど見てみたいです。
イブキトラノオの特徴
特徴①根茎と根
地中内に根っこのような茎「根茎」があります。根茎は短いごぼうのような形で太く、細い根が無数につきます。根茎から根のほかに春になると新芽がでます。
特徴②茎と葉
細い茎はほとんど枝分かれせず、複数の節をつけてまっすぐに伸びます。節からは茎を包むようにさや状の葉「托葉(たくよう)」がつき、托葉の先端部分は赤茶色です。托葉の中央あたりから外へと伸びる葉の長さは約10cm~20cmほどで、葉先が細く尖り、根元部分が幅広の披針形(ひしんけい)になっています。茎と葉は黄緑や緑色でつやはなく、マットな質感です。
特徴③花
茎の先端につく花は「花穂(かすい)」と呼ばれ、無数の小さな花が列になってつきます。花穂の長さは約5cm~8cmほどです。花色は白やピンク色、種類によって赤色もあります。花には花びらがなく、花弁のように見える大きく裂けた萼(がく)があり、萼のなかに雌しべが1本と約8本の長い雄しべがつきます。イブキトラノオと同じタデ科の植物には、花の付き方がよく似ている「イヌタデ」や「ハルタデ」、「ムカゴトラノオ」などの植物が存在します。
イブキトラノオの花のにおい
花は独特なにおいを放ち、人によってはこのにおいに不快さを感じる人もいます。ですが、イブキトラノオの花のにおいは虫を集める特性があり、チョウやハチ、ハエなどさまざまな虫が花のにおいにつられて集まります。
イブキトラノオの花言葉
花言葉は「洗練」
イブキトラノオは「洗練」という花言葉をもちます。枝分かれせずまっすぐに伸びる茎の姿や、枝先にだけつく花のようすなど、余計なものをつけないシンプルな姿が花言葉の由来に関係しているといわれています。
イブキトラノオは誕生花にもなっている
イブキトラノオは6月20日の誕生花です。トラノオ(虎の尾)と名前のつく「オカトラノオ(丘虎の尾)」や「ルリトラノオ(瑠璃虎の尾)」なども6月20日の誕生花ですが、それぞれ別の花言葉をもちます。
ボタニ子
オカトラノオの花言葉は「優しい風情」です。ルリトラノオは「忠誠心」や「明るい家庭」などの花言葉をもちます。
イブキトラノオの用途
根茎を乾燥させ、「拳参(けんじん・けんさん)」と呼ばれる生薬が作られます。拳参には口に含むと渋みを感じるタンニン類や、便秘薬のセンナにも含まるアントラキノン類のほか、パリジン・パリスチン・パリフィリンなどの薬効成分が含まれています。そのほか、イブキトラノオの根のエキスを配合した美容クリームが販売されています。
薬効や美容効果は?
拳参は鎮痛・下痢止め・口内炎・抗菌作用などの効果があるといわれています。使い方は煎じたものを服用する方法と、煎じたものでうがいする方法があり、服用では鎮痛や下痢止め効果、うがいでは口内炎の治療や抗菌作用が期待できます。根のエキスを利用した美容クリームには、肌のキメを整えハリのあるうるおい肌へ導く効果があるといわれています。
まとめ
イブキトラノオは雨季から夏にかけて白やピンク色の花を咲かせ、草丈が約120cmほどになる野草です。その根茎は短いごぼうのようで「拳参」と呼ばれる生薬になるほか、根のエキスは美容クリームにも配合されます。日本では和名の由来もなっている伊吹山に多く自生し、登山客の目を楽しませているイブキトラノオ。花のにおいは独特ですが、においに集まる虫と共に観察してみてはいかが?
伊吹山では、日本でもっとも多くイブキトラノオが確認されているんじゃ。