盆栽の樹種
大きく育つ樹木を小さく育てるには特別な樹種があるのでしょうか。実はそのようなことはなく、身近に自生している樹種を盆栽として育てられます。樹種を分類して、役割を持たせて鑑賞しています。
松柏
盆栽の中でも一番格が高いとされるのが松柏(しょうはく)と呼ばれる分類です。松柏とは松、真柏、杜松など常緑の樹種です。松は日本ではめでたいもので、盆栽でも神の宿る木といわれ大事にされてきました。真柏とは深山柏槇(ミヤマビャクシン)を盆栽として育てたものです。これらの盆栽は最高級のおもてなしをする席に飾られます。日本では国賓をもてなす場に飾られることも多いです。
ジン・シャリ
松柏盆栽に特徴的な造形にジンとシャリがあります。ジンは「神」、シャリは「仏舎利(仏舎利=ブッダの骨)」と書き、枝が強い風や雪の重みなどで折れたり、雷が落ちて幹が割れたりした姿を表しています。どちらも木が荒々しい自然の中で力強く生きる姿の表現です。上の画像の曲がりくねった白っぽい部分はシャリです。
雑木
雑木は主に落葉樹ですが、松柏以外の樹種を指します。モミジやカエデ、ブナ など日本に自生する樹種です。芽出し〜若葉〜紅葉まで葉の色の変化を楽しみ、落葉後は寒木といって葉の落ちた木の姿を鑑賞します。四季を通じて見所のある盆栽です。
実もの
「実もの」とは実のなる樹種を指し、盆栽ではピラカンサや小さい実のなるマメ柿、カリンなどが多く用いられています。落葉後の秋〜冬に鑑賞時期を迎えます。
花もの
「花もの」は花の咲く樹種を指し、盆栽では梅や椿、バラなどたくさんの樹種が用いられています。小さな鉢の中で咲く花は美しさが際立ち、初めての盆栽に花ものを選ぶ方も多いです。
草
盆栽には床の間に掛け軸とともに飾る「床飾り」という飾り方があり、そのときに「添え」として草を小さな鉢に植えて飾りました。その草を独立して楽しむのが「草もの」です。宿根草や多年草が盆栽に選ばれています。また、自然の草むらをイメージさせる草の寄せ植えも人気があります。
盆栽の樹形
盆栽の長い歴史の中で、樹木を小さく育て、また針金などを使い幹や枝の方向を変える技術が発達しました。盆栽を鑑賞するときに木の姿「樹形」もポイントです。代表的な樹形を紹介します。
直幹
「直幹」とは木の幹が真っ直ぐに立ち上がった樹形です。大地にすっくと立つ力強さがあります。1本の幹が鉢に対して直角に伸びていることと、根元に土を掴むような力強い根が広がっているのが鑑賞のポイントです。
模様木
「模様木」とは木の幹が左右に自然に曲がり、幹の先端と根元が鉢に対して垂直線上にある樹形です。安定感があり、自然な樹木を感じられるでしょう。
斜幹
「斜幹」とは木の幹が左右、どちらかに傾いている樹形です。斜め方向に動きが感じられ、木の下の空間に山道や川の流れなどが想像できるでしょう。
懸崖
「懸崖」とは山や海辺の断崖に生きる木を表現する樹形です。木の力強さやダイナミックな動きが感じられます。盆栽では鉢に植え付ける際に木を傾けて植えたり、針金で枝を曲げたりするなど年数をかけて育てなければ、このような樹形は作れません。
文人木
「文人木」とは細い幹を生かし、木の上の方にだけ枝を残した樹形です。「文人」とは江戸時代に文人や詩人がこの樹形を好んだことに由来します。
まだまだ樹形はあります!