干し芋とは
「干し芋」とは蒸したさつまいもを切って乾燥させた食べ物です。発祥の地は静岡県御前崎市で、日本では古くから各地で作られてきました。現在は流通している干し芋の約90%を茨城県で生産しています。干し芋は完全に乾燥させてはいないため少しの水分を含み、ねっとりとした歯応えややさしい甘味が特徴です。
干し芋の歴史
さつまいもの伝来
さつまいもは日本に本来あった作物ではありません。さつまいもは紀元前3000年ごろに南米アンデス地方で作られていた作物で、コロンブスがスペインに持ち帰ったことで世界中に広まりました。日本には約400年前に中国から沖縄(当時の琉球)に渡来し、その後、鹿児島(当時の薩摩)で作られるようになりました。それが「薩摩いも」の名前の由来にもなっていますが、鹿児島では長く「薩摩いも」ではなく「唐(から)いも」と呼ばれていました。
干し芋の誕生
1766年の春、駿河の国(静岡県)御前崎沖で遭難した薩摩の船を近くに住む住人が助けました。助けられた薩摩の船乗りがお礼としてサツマイモを贈り、以後サツマイモが作られるようになりました。1800年代に干し芋を作り始め、カラカラに乾燥させると保存期間が伸び、携帯しやすくカロリーも高かったため保存食として全国に広まりました。
生産高日本一
干し芋の生産量日本第1位は茨城県です。さつまいもの生産量も全国第2位と多く、さつまいもの生産にあった土壌、海から吹く風や冬期に雨が少ない気候が乾燥の作業にあっていたなどから、特産品に育って行きました。茨城の干し芋では珍しい「丸干し」も有名です。
干し芋の呼び名
干し芋は作り方やさつまいもの栽培が簡単だったため、全国で作られていました。そのため、その土地固有の呼び名で呼ばれてきました。いくつか挙げると、乾燥いも、切り干しいも、煮切り干し、いも切り干し、ほっしい、いもするめ、ゆでかんころ、蒸しこっぱなどです。
干し芋の栄養
干し芋はさつまいもだけで作られるため、とてもヘルシーで栄養面でも優れています。コレステロールが入っておらず、食物繊維が多く整腸作用が期待できます。
主な栄養成分
- ビタミンB
- ビタミンC
- ビタミンE
- カリウム
- 鉄分
- マグネシウム
干し芋の作り方
干し芋作りの材料はさつまいもだけで、クッキング初心者でもかんたんに美味しく作れます。さつまいもの収穫時期にたくさんもらってしまったり、お子さんがお芋掘りに行ってたくさん持って帰ってきたりしたら、作ってみましょう。ここでは代表的な作り方をご紹介します。
干し芋に適したさつまいもの品種
干し芋の生産地の茨城県では、「玉豊」「玉乙女」「いずみ」という品種で多くが生産されています。家庭で作るにはスーパーなどで購入できる品種で構いません。「紅はるか」や「安納芋」などが多く市販されています。「紅はるか」はしっとりとして甘く、焼き芋などにしてもおいしい品種です。「安納芋」はとても甘く、水分も多くねっとりとした食感の品種です。
干し芋の作り方①天日干し
こちらでは蒸し器を使い、縦切りにし、天日干しで作る方法を紹介します。細長く切った昔ながらの干し芋を作る方法です。数日間は晴れの日が続くことを確認してから作ることをおすすめします。
手順1:さつまいもを蒸す
蒸し器の水を沸騰させ蒸気が上がったら、よく洗ったさつまいもを入れます。鍋で代用する場合は蓋にふきんを被せて水滴が落ちないように気をつけてください。40分程弱火で蒸します。竹串がスッとかんたんに通れば蒸し上がりです。
手順2:皮を剥く
さつまいもの荒熱がとれたら、取り出して皮を剥きます。キッチンペーパーで包みながら、竹串などを使ってむきましょう。黒っぽい色にしないためには、少し厚めにむくのがコツです。
手順3:カットする
さつまいもの繊維を切らないように、縦長に切ります。包丁で切るのが難しい場合はエッグカッターを利用したり、大量に作る場合は市販の干し芋スライサーを利用するのもよいでしょう。
手順4:天日干しで乾燥
干し芋は完成するまでに4日〜5日はかかるので、虫や鳥避けに網で覆います。干し網(一夜干しネット)を使用するのがよいでしょう。蒸した芋を重ならないように並べ、よく日の当たる場所に吊るしておきます。夜は家に取り込みます。毎日、芋を裏返してまんべんなく日差しや風に当ててください。外側が乾燥し、内側がしっとりした状態でできあがりです。長く保存するなら、内側まで乾燥させてください。
干し芋の作り方②オーブン
炊飯器を使って蒸し、輪切りにしてオーブンで乾かす方法をご紹介します。天日干しは天候によって失敗することもあるので、時間をかけずに確実に作りたい方や、お子さんと一緒に作りたい方にもおすすめです。
手順1:さつまいもを蒸す
さつまいも(中ぐらいのサイズ2本)をよく洗います。炊飯器に水カップ2杯とさつまいもを入れて炊飯ボタンを押すだけです。玄米モードを使うと通常の白米より炊きあがりまでの時間が長く、ねっとりした仕上がりになります。火を使わないのでクッキング初心者やお子さんでも簡単でしょう。
手順2:皮を剥く
熱いうちにキッチンペーパーで包みながら、竹串などを使ってむきましょう。黒っぽい色にしないためには、少し厚めにむくのがコツです。
手順3:カットする
さつまいもが冷めたら7〜8mm幅の輪切りにします。または、さつまいもの繊維に沿って縦になるように1cmほどの拍子切りにしてもよいでしょう。
手順4:オーブンで乾燥
オーブンシートを引いた天板に蒸したさつまいもを重ならないように並べます。オーブンを予熱なしの100℃に設定して30分焼きます。次にさつまいもを裏返し、30分焼きます。干し芋の硬さのお好みにより、焼く時間を調整してください。
出典:写真AC