アグロステンマの特徴
アグロステンマ、別名「麦撫子(ムギナデシコ)」といえば想像できるでしょうか。ナデシコ科の耐寒性1年草です。初夏のボーダーガーデンを彩る名脇役で、草丈は1m以上に成長し、茎は細くすらっとしています。ヨーロッパでは、畑に害を及ぼす雑草として扱われているほど、こぼれ種でよく増えます。日本においても、農作物の麦に小さな種が紛れて帰化した植物です。
アグロステンマの分類
- 科属:ナデシコ科ムギセンノウ属
- 学名:Agrostemma githago(アグロステンマ ギタゴ)
- 別名:麦撫子(ムギナデシコ)、麦仙翁(ムギセンノウ)、corn cockle
- 開花期:初夏(4月~7月)
- 原産地:ヨーロッパ
- 分布:温帯中心に世界中に分布域あり
日本でも全国各地に分布
アグロステンマの名前の由来
「アグロステンマ」の名前の由来は、ギリシャ語の「アグロ(野原)」と「ステンマ(花冠)」が合わさってアグロステンマとなりました。英語では「corn cockle」、トウモロコシ畑に生える雑草という意味です。「麦仙翁(ムギセンノウ)」という和名もあります。細く麦に似た葉っぱと、同じナデシコ科のセンノウに似た花姿からムギセンノウと名付けられました。
アグロステンマの原種と園芸品種3種
アグロステンマには、原種の「ギタゴ」以外にも、3つの園芸品種があります。「オーシャンパール」「桜貝」「パープルクイーン」です。こぼれ種でよく育ちます。どれも茎がすらりと長い特徴があり、切り花にすることができます。アグロステンマは園芸店で入手できます。どの種類も種子は6月以降、苗は秋ごろ出回ります。
①アグロステンマ ギタゴ(原種)
「アグロステンマ ギタゴ」は、ヨーロッパでは「穀物畑の雑草」と呼ばれるアグロステンマの原種です。麦なでしこと言えば一般的にこのギタコを指します。花はピンク色で中央に向かって白のグラデーションになっているのが特徴です。丈夫な性質で世界中に分布します。この「アグロステンマ ギタゴ」から交配を重ね、美しい園芸品種が生まれました。
②アグロステンマ オーシャンパール(園芸品種)
「アグロステンマ オーシャンパール」は麦撫子(ムギナデシコ)の白色品種。イングリッシュガーデンに欠かせない存在です。直径6~7cmで、オフホワイトのお花の中心には茶色い筋が入ります。濃色の「パープルクイーン」と混色してもきれいです。種子は6月、苗は秋から出回ります。こぼれ種でよく増えますが、先祖返りしてピンクの花が出現することもあるようです。
③アグロステンマ 桜貝(園芸品種)
「アグロステンマ 桜貝」はその名のとおり、桜貝のような淡いサクラ色のムギナデシコで、4種類の中では一番小さな品種です。咲き始めはピンクのお花ですが、咲き進むと白に変化していきます。一株で沢山咲くので、咲き初めと咲終わりが混色になった時に、とてもかわいらしい風景になる麦なでしこです。
④アグロステンマ パープルクイーン(園芸品種)
「アグロステンマ パープルクイーン」は麦撫子の中では一番ダークなカラーで人気があります。明るいパープルピンクのお花で、中央が白く抜けています。直径7cmの大輪系で大きく茂り、見事です。白系の「オーシャンパール」や「オルレヤ」などの白いワイルドフラワーと合わせると色の対比で美しく見えますよ。
アグロステンマの育て方
アグロステンマを育ててみたいけれど、種まきはできる?いつ出回るの?そんな不安をここで解消しましょう。誰でも簡単に種まきで育てることができます。寒冷地でなければ屋外で越冬も可能です。こぼれ種でもよく増えますので特別な栽培方法は必要ありません。悪天候でアグロステンマが倒れる前の対処法もご紹介します。
種まき
販売店では6月中旬くらいから翌年の開花用の種子が出回ります。蒔きどきは春か秋です。発芽温度は20℃前後で、一般的には秋まきです。発芽までは日陰で管理し、小さな双葉が出たら日なたで育てます。耐寒性はありますが、寒冷地ではハウス栽培にしたほうが無難です。こぼれ種は乾燥した庭によく出ます。冬季、まだ根の張っていない小さな苗が霜で持ち上がることがあるので気を付けましょう。
用土・植え付け
水はけのよい弱アルカリ性の用土を好みます。酸性度が気になるようでしたら苦土石灰を事前に施します。鉢植えは、市販のpH調整済み培養土をそのまま使うと便利でしょう。秋ごろ、苗が出回るので庭や鉢に植え付けます。ポットに種まきしたものは秋か春に定植します。麦なでしこは日照を好みますので、日なたに植え付けます。植え付け後は水切れに注意しましょう。
支柱
夏の花なので大雨や台風などの被害で倒れることがあります。倒れる前に支柱を立てましょう。四隅に支柱をしっかり地中に埋め込み、株を傷めないよう緩くひもを取り付けて、株が乱れないよう支えます。なるべく苗が小さいうちに立て、中から成長してくるのが理想的です。台風がくると飛ばされる可能性があり、更にきつく茎を縛るなどの対策が必要になってきます。
水やり・肥料
水やりは年間を通して乾いたらたっぷり与えます。下葉が蒸れやすいので加湿を避けます。鉢植えの物には育成期の秋から春に、必要に応じて緩効性肥料を施します。水やり代わりに液肥を与えてもよいでしょう。庭植えのものは水やりや肥料は特に必要としませんが、日照りや強風で乾燥したらたっぷり与えてくださいね。
切り戻し・摘心
麦なでしこは一年草なので基本的には切り戻しや摘心は必要ありませんが、4月頃、下から15cmほどのところで切り戻すと株がしっかりして花つきがよいようです。花柄をこまめに摘むと長く楽しめます。茎が倒れて汚くなった場合は刈り込むことになりますが、葉っぱの間からつぼみが上がってくるので真ん中以上の所で切り戻しするとよいでしょう。
アグロステンマにチャレンジしよう!
初夏のボーダーガーデンに欠かせない素材、アグロステンマについてまとめてみました。細い茎やシュッとした葉っぱが風にゆらゆら揺れる姿は、華やかすぎず素朴で郷愁さえ感じます。初夏に来た台風にはご注意くださいね。アグロステンマは倒れるものと思って支柱を立てるなど早めに備えましょうね。
出典:BOTANICA