腐生植物とは?奥深い生態や・特徴や種類を詳しく解説!

腐生植物とは?奥深い生態や・特徴や種類を詳しく解説!

腐生植物は光合成を行わず、植物の根に生息している菌根菌から養分を調達して生育している植物です。花期だけ地上に現れます。さまざまな種で腐生植物が確認されていますが、未だに全容は明らかになっておらず、研究が続いている植物です。複雑な生態系のため栽培は困難です。

記事の目次

  1. 1.腐生植物とは
  2. 2.腐生植物の奥深い生態
  3. 3.腐生植物の特徴
  4. 4.腐生植物の種類一覧【ラン科】
  5. 5.腐生植物の種類一覧【ラン科以外】
  6. 6.腐生植物を見つけてみませんか

腐生植物とは

出典:写真AC

腐生植物とは、自分で光合成をする能力がなく、陸上植物の根に生息している「菌根菌」と共生して養分をもらっている植物のことをいい、現在は菌従属栄養植物と呼ばれています。複雑な生態系で生育しているため、山で採っても別の環境で栽培するのは困難です。腐生植物は、その奥深い生態から未だに解明途中であり、新品種の発見も続いています。

菌従属栄養植物

かつて腐生植物は、菌従属栄養植物のうち腐生性の菌と共生しているもののみを指していました。しかし現在は、腐生植物という名に変わって菌従属栄養植物と称することが一般的です。菌従属栄養植物は、被子植物だけでも、ラン科、ホンゴウソウ科、ツツジ科、ヒナノシャクゾウ科、リンドウ科など、幅広い科で存在が確認されています。ところが植物自体が大変小さく、開花・結実期以外は地上に現れないため、日本においても全体的な分布図や、多様性の全貌は、まだ明らかになっていません。複雑な生態系の再現が難しいため、栽培も困難です。

腐生植物と寄生植物の違い

寄生植物と腐生植物の違いは、共生する植物の違いにあります。寄生植物とは、生きた植物から養分を吸収している植物のことをいいます。一方腐生植物は、陸上植物の根に生息する「菌根菌」から養分を調達する植物のことです。寄生植物は栽培が可能ですが、腐生植物を栽培するのは困難を極めます。

名前の由来

出典:写真AC

腐生植物の「腐生」とは、一般的には菌類に対して用いられる言葉で、死んだ生物を分解して栄養にしている形態のことを表します。実際の腐生植物は、外界の有機物を直接分解するわけではなく、菌類に寄生して栄養をとっています。

腐生植物の奥深い生態

Photo by pfly

腐生植物は、陸上で育っている普通の植物とは全く違った生態を獲得して生活しています。そのために、光の届かないような暗い場所や、受粉を行う昆虫や鳥がいないような場所で生育することができるのです。複雑な生態系で生存しているので、家に持ち帰って栽培しても育たないことがほとんどです。絶滅危惧種に指定されている種もあるので、見つけても観察だけにしましょう。

生態①菌との関係は一方のみ

出典:写真AC

菌根共生系では、菌と植物の双方にとって利益がある相手が選ばれます。つまり、菌は光合成によって得られる炭素をより多く供給してもらえる植物を選び、植物は養分やミネラルをより多く受け取れる菌を選ぶということになります。しかし腐生植物は、植物側が供給するはずの炭素を供給せず、逆に炭素化合物を菌類から受け取るという形の相互関係をつくっているのです。

生態②腐生食物は菌をだましている

腐生植物は、菌に「栄養を与えます」というサインを出して繋がることに成功しますが、実は菌には何も与えず、養分やミネラルだけを受け取るシステムを構築しています。つまり、腐生植物が菌をだましている構造が成り立っているのです。菌側も自分に利益がない関係は普通なら遮断しますが、巧妙なだましテクニックにより、腐生植物は菌のチェックをかいくぐっています。

生態③自動自家受粉する種もある

出典:写真AC

腐生植物の中には、自動的に自家受粉を行っている種類もあることが、近年明らかになってきました。腐生植物は光合成をする必要がないため暗い林床でも生育が可能ですが、このような場所には花粉を運搬するような生物がなかなか訪れません。そこで、繁殖のために、自動自家受粉を進化させたと考えられています。

腐生植物の特徴

腐生植物は光合成を行わないため、茎や葉を地上に伸ばしている必要がありません。子孫を残すために花径を伸ばして花を咲かせ、枯れたらまた地下だけで生育しています。

特徴①花

光合成をしない腐生植物は、開花のときだけ地上に現れます。地上に花径は伸ばしますが、花は開かず、つぼみの中で自家受粉を行う種類もあります。

特徴②葉

腐生植物は光合成をしないので、ほとんどの種類の葉は退化し、鱗片葉だけが茎に互生していることが多いです。その結果、ひょろひょろとした花径だけが目立つ姿になっています。

特徴③大きさ

腐生植物は、そのほとんどが数cmほどの大きさで、地面をなめるように観察しないと発見できないくらい小さい個体です。しかしまれに、ラン科のツチアケビのように高さ1m近くまで大きくなる種類があります。

腐生植物の種類一覧【ラン科】

Photo by Jim Morefield

近年菌従属栄養植物とも呼ばれる腐生植物は、ラン科、ツツジ科、ヒメハギ科、リンドウ科、ヒナノシャクジョウ科、コルシア科、サクライソウ科、ホンゴウソウ科などに発生し、日本だけでも約60種が報告されています。まずはラン科の種類を見てみましょう。

ツチアケビ

出典:写真AC

ツチアケビは、ナラタケと共生関係にある大型の腐生ランです。腐生植物には珍しく、高さが1mに届くものもあり、暗い林床でとても目立ちます。アケビが直接土から生えているように見えるので、この名前がつきました。果実は鮮やかな赤色で10cmほどに成長します。まるでウインナーソーセージがぶら下がっているようにも見えます。

ショウキラン

出典:写真AC

ショウキランは高さ10~20cmほどの多年生の腐生植物です。北海道~九州までに分布し、やや湿性な林床に生育しています。7~8月の花期のみ、地上に花径を伸ばし、淡い赤紫色で目立つ花が1週間ほど咲きます。腐生食物のランの多くは白い色や、黒い褐色のような色をしているので、このような華やかな色は珍しいです。

オニノヤガラ

オニノヤガラは、ナラタケ属と共生関係にあるラン科の腐生植物です。地上茎は60~100cm伸び、花は初夏~夏にかけて、茎の上部に黄褐色で筒状に膨らみ、多数咲きます。腐生植物の中では大きいほうなので、見つけやすい種です。オニノヤガラという名前は、直立する茎を、鬼がもっている弓の矢に例えてつけられました。

サガミラン

サガミランはラン科シュンラン属の腐生ランです。6~10月に、高さ10~20cmの花径を地上に伸ばします。少し緑ががった花径の先に、透き通ったクリーム色の花を2~4個つけます。薄暗い林の中で、上品に咲く姿が美しい花です。

マヤラン

マヤランはラン科シュンラン属の腐生ランで、夏と秋の2回花を咲かせます。関東南部~沖縄県にかけて、クヌギやコナラなどブナ科の樹木やカバノキ科の樹木の根元で見つけられます。花は白地に赤紫色の模様をつけており、薄暗い林の下ではよく目立つ存在です。10~30cmほど伸びた花径の先に2~6個ほど花が咲きますが、葉はなく、ひょろひょろ細い花径が伸びている印象です。花期以外は地上に何もありません。

クロムヨウラン

クロムヨウランはラン科ムヨウラン属の腐生植物です。腐生植物の多くは白色ですが、この種は茎が黒く、花は淡黄褐色です。花径は20~40cmほど伸びて、花は7~8月の天気のよい午前中だけ開きます。本州~九州の常緑広葉樹林床下に自生しています。

ムロトムヨウラン

ムロトムヨウランはラン科ムヨウラン属の腐生植物です。四国の広葉樹の林床下に生育しており、花径は20~45cmほど伸びて、6~15cmの黄白色の花が7~8月に咲きます。クロムヨウランに似ていますが、クロムヨウランより大きく、昼過ぎまで花が咲いているところに違いがあります。

腐生植物の種類一覧【ラン科以外】

腐生植物のツツジ科、ヒナノシャクジョウ科、ホンゴウソウ科で比較的よく見かける種類を見てみましょう。

ギンリョウソウ

出典:写真AC

ギンリョウソウは、透明感のある白い茎の先端にキセルのような花をつけるツツジ科の腐生植物です。茎の高さは20cmほどで、葉の退化した鱗片葉がたくさん互生しています。体全体が透けるような白色で、柱頭だけ瑠璃色に光り輝く怪しげな姿から、「ユウレイソウ」という別名ももっています。日本全土の山地で、やや湿り気のある林床に生育している植物です。

アキノギンリョウソウ

Photo by S Mair

アキノギンリョウソウは、8~10月頃に開花するギンリョウソウに似た植物です。ギンリョウソウとの違いは、花弁の縁に不規則なギザギザがあることと、柱頭の中央部の色が黄褐色になっていることです。

シャクジョウソウ

シャクジョウソウは、ツツジ科シャクジョウソウ属の腐生植物です。全体的に淡黄褐色で10~20cmのびた茎の先に4~8個集まった花をつけます。花期は6~8月で、1~1.2cmほどの長楕円形で下向きに咲き、外側に毛が生えています。シャクジョウソウという名前は、僧侶が持つ「錫杖」に似ていることからつけられました。

ヒナノシャクジョウ

ヒナノシャクジョウは、日本では関東以西の暗い林の中で自生しているヒナノシャクジョウ科の腐生植物です。ヒナという名のように、高さが10cmほどのとても小さな腐生植物で、花も1cmに満たないくらいのサイズですが、まるで発光しているかのように暗い林の中でも目立つ白さが特徴です。

ルリシャクジョウ

ルリシャクジョウはヒナノシャクジョウ科の腐生植物で、5~15cmに細く伸びた茎の先に1~2個の筒状の花をつけます。腐生植物はほとんど白~クリーム色をしていますが、ルリシャクジョウは体全体が青紫~藍色で、暗い林の中で美しく佇んでいる姿が印象的です。日本では九州や沖縄の常緑樹の林で自生しています。

タヌキノショクダイ

タヌキノショクダイはヒナノシャクジョウ科タヌキノショクダイ属の腐生植物です。夏に湿った落ち葉の中で、白い透明な花を咲かせます。茎の高さは3~4cmと小さく、花径の先端につける花は壺状になっており、3枚の花被片から細長い突起が飾りのようについています。全体の形が、昔のろうそくを灯した燭台に似ていることから、この名前がつきました。

ホンゴウソウ

ホンゴウソウはホンゴウソウ科の多年草の腐生植物で、赤紫のような色をしており、落ち葉の下など暗い林床下で生育しています。茎は3~5cmほどで、茎の先端には雄花をつけ、その下に雌花があります。全体にとても小さく目立たない植物で、1度見つけても見失ってしまうほどです。

ボタニ子

ボタニ子

腐生植物は絶滅危惧種に指定されているものもあります。採種して栽培を試みたりせず、山歩きをしながら出会いを楽しみましょう!

腐生植物を見つけてみませんか

光合成を行わず、陸上植物の根に生息している菌根菌から養分を調達しているという腐生植物は、まだ発見されずにひっそりと生育している種もあるようです。最初は代表的な腐生植物を見つけることも楽しいですが、目が林床に慣れてきたら、新品種の発見も不可能ではないかもしれません。山のきれいな空気をタップリ吸いながら、ロマンを求めて林の中を歩いてみませんか。

ぽんた 
ライター

ぽんた 

植物からたくさんのパワーをもらっています。 特に、日陰でひっそりと咲く花々に心奪われます。 みなさまにも、さまざまな植物の魅力をお伝えします。

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