互生・対生・輪生って?
「互生」「対生」「輪生」とは植物の葉のつき方(葉序:ようじょ)をいい、読み方はそれぞれ、「ごせい」「たいせい」「りんせい」です。このほか「コグサギ型葉序」「偽輪生」「束生」などの葉の付き方もあります。
互生とは
互生とは、1本の茎や枝から葉が1枚ずつ互い違いに生える葉序のことです。右側から1枚生えたら、次は左側から生えます。互生の植物を真上から見るとらせん状に葉が生えているのがわかります。なるべくほかの葉の影にならないように、中心の茎や枝のまわりに角度を変えて葉をつけるらせん生です。多くの樹木が互生に葉をつけます。
互生の葉の付き方の特徴
互生の葉の付き方の特徴は、葉が互い違いに生えることです。互生の生え方にも種類があり、1/3葉序、2/5葉序、3/8葉序、5/13葉序が挙げられます。例えば、1/3葉序は茎を中心に360°とし、それを3で割ります。1枚目が生えたところから1つ隣の約120°ずれた場所に2枚目の葉が生えることを繰り返します。ほかの葉の影にならないようにすると、らせん状になるのです。
ボタニ子
互生の葉のメリット
互生に葉を付けるメリットは、ほかの葉の陰になりにくいことです。葉は光合成をするために、太陽の光を浴びます。ほかの葉の影にならず、なるべく多くの光をいろいろな角度から吸収しようとして、違う場所に葉をつけるようになりました。互生のデメリットは葉の数が少ないことですが、日当たりのよい場所であれば、1枚の葉にたっぷり日差しが当たるので解消されます。
互生の葉の植物
互生に葉を付ける植物は、ムクゲやケヤキ、ヤマモモなどの樹木に多いです。クルミやヤナギ、ブナやナラの木の仲間も互生葉序です。果実ではマンゴーやパイナップル、野菜ではジャガイモやカリフラワーも互生に生えます。ホウセンカ、プラタナス、バラやヒマワリなどの花の仲間も互生葉序です。
対生とは
対生は「対になって生える」という意味です。1本の茎や枝を中心に左右対称の双葉のように2枚ずつ葉が生えます。葉には1枚で生える単葉と、小葉が集まって生える複葉がありますが、複葉の場合も小葉の集合体が左右対称に生えれば対生です。また、対生には2列対生と十字対生の2種類があります。
対生の葉の付き方の特徴
2列対生とは1本の茎や枝の枝先に向かって2枚ずつ葉が連なる生え方です。十字対生とは、1本の茎や枝に2枚1ペアの葉が生えたら、次は角度を90°変えて、2枚1ペアの葉が生えます。次のペアはまた90°角度を変えるので、真上から見ると十字の形に見えます。
ボタニ子
同じ科の植物は同じ葉序のことが多いの。十字対生はミントやバジル、シソなどのシソ科に多いのよ!
対生の葉のメリット
2列対生の植物のメリットは左右対称に葉がつくため、重みが分散されてバランスがよく成長することです。また葉の数が互生よりは多いため、多少葉が重なっても光合成ができます。十字対生は下部の葉茎が広がりやすい傾向があります。上の葉が取りこぼした日光を下の葉が受け止める仕組みです。
対生の葉の植物
カエデやカズラなどの木の仲間が、対生葉序で2列対生です。レンギョウやタマアジサイ、ナデシコなどの花も2列対生に入ります。十字対生はシソ科のバジルやオオバ、ミントやローズマリーなどのハーブやガクアジサイ、ムラサキシキブやシマトネリコなどの庭木に多いです。樹木の多くは互生で、対生は珍しいので見分けるときに役立ちますよ。
輪生とは
輪生の意味は、1カ所から3枚以上の葉がでる葉序の種類です。3枚生えると3輪生、4枚生えると4輪生といい、葉の数にあわせて名前の数字が増えます。車輪のような形に葉が生えるためこの呼び方になりました。輪生は草花によく見られる葉序で樹木ではあまり見られません。コスモスの花のような葉の生え方です。
輪生の葉の付き方の特徴
輪生の葉は、茎や枝を中心に360°を葉の数で等分した角度に生えます。3輪生の場合は360°を3で割って約60°に1枚、4輪生ではおよそ90°に1枚です。下の葉と上の葉が重ならないように、下の葉と葉の間に上の葉がくるような角度に生えます。真上から見ると、3輪生は葉が6枚に見え、4輪生では8枚に見えます。
輪生の葉のメリット
輪生のメリットは葉が多いことです。葉が多ければ多いほど光合成ができることになりますが、実際は自分の葉の影になって、下のほうの葉は光合成が難しくなります。それでも、数が多ければほんの少しの日光も取りこぼすことなく受け止められるよう工夫をしたのが輪生の植物です。1枚の葉が受ける光は少なくても、数が多くあれば光合成は可能でしょう。
輪生の葉の植物
草花に輪生の植物が多く、ツリガネニンジン、イチリンソウ、コバノミツバツツジなどは3輪生です。ヤエムグラの仲間には、6輪生~8輪生のものがあります。ミドリゴゼンタチバナも6輪生です。輪生の植物は葉がこみあっていて、後述する偽輪生との見分けがつきにくいものがあります。
互生・対生・輪生以外の葉の付き方
コクサギ型
互生、対生、輪生のほかに、「2対互生」という葉の付き方があります。読み方は「についごせい」です。ミカン科のコグサギという植物の葉の付き方をしているので、一般的には「コグサギ型」とも呼ばれています。一見互生に見えますが、実は2枚ずつ、互い違いに葉をつける植物です。柑橘系に多い葉序で、ほかにはクマヤナギやサルスベリ、ヤブニッケイやケンポナシなどがコグサギ型葉序です。
偽輪生
偽輪生(ぎりんせい)は、アカネ科の植物に多く、一見すると輪生に似た葉序をしています。しかし4つの葉のうち2つは托葉(たくよう)といって、葉が生えてくる葉柄(ようへい)の根本に生える葉の形に似たトゲや突起状のもので、実際の葉は2枚で対生です。ヒトリシズカも偽輪生です。
束生
葉が集中して生え、花束のような形になるものを「束生」(そくせい)といいます。束生は葉が多いので、輪生の植物と思われがちです。しかし実際は、葉が生える節と節の距離がとても短くつまってできる現象なので、互生、対生、輪生のどの植物でも見られます。葉柄をよく観察するとどの葉序かわかるでしょう。
葉の付き方の進化
葉序の進化は諸説ありますが、輪生、対生、コクサギ型、互生へと進化したという説があります。それぞれの植物が育つ環境で、いかに日光を効率よくたくさん浴びられるかを模索し、進化した結果が、現在の互生、コグサギ型、対生、輪生の形です。葉の生え方や角度、数や形を変え生き延びるための工夫をしました。
先祖返り
互生のなかに対生している葉があったり、対生葉序でありながら3輪生した葉が生える植物があります。強めに刈り込んだり、日当たりが悪く、日光を求めて細長く伸びる徒長(とちょう)をしたりした茎や枝によくみられる現象です。植物ホルモンの関係で起こることで、輪生、対生、コグサギ型、互生と進化したと考えると、先祖返りだといわれています。
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ハナゾノツクバネウツギによく見られるわ。
植物たちの工夫
互生・対生・輪生は、植物が自分たちが生き残っていくのに適した形に進化した結果です。自生する場所や気候に合わせて、光合成のしやすいように工夫をこらしています。同じ科の植物は似た環境で育つため、同じ葉序になることがほとんどです。葉の付き方を見ると植物の種類の見分けがつきます。
ほかの葉序も、360°を5や8で割って同じようにずれて葉が生えるのよ。2/5葉序はだいたい144°、3/8葉序は約135°、5/13葉序はおよそ140°ずれるわ。