ジキタリスとは?
バラやさまざまな草花が咲き乱れる初夏の庭に、白やピンクや紫の花穂をすらりと伸ばすジキタリス。ガーデニングの好きな方なら、一度は目にしたことがある画像ではないでしょうか。大きなものでは草丈180cm、花穂は50cmにもなるジキタリスは、どんな植物と合わせても存在感を失うことはありません。豪華であるが故、一見すると手間がかかりそうな植物に思えますが、特徴を理解して育てれば、誰でもあの魅力的な花を咲かせることができるのです。
ジギタリスの基本情報
【学名】digitalis
【和名】キツネノテブクロ(狐の手袋)
【別名】フォックスグローブ
【科名】オオバコ科
【属名】キツネノテブクロ属(ジキタリス属)
【原産地】ヨーロッパ、北東アフリカ~中央アジア
【園芸分類】草花
【形態】一年草、二年草(本来は多年草、宿根草)
【草丈】30cm~180cm
【日照】半日陰
【耐寒性】強い
【耐暑性】弱い
【花色】ピンク、オレンジ、クリーム、アプリコット、白、紫、赤、黄、茶、複色など
【開花時期】5月~6月
ギジタリスの主な種類
ジキタリス・パープレア
ジギタリス・パープレアの基本情報
学名 | digitalis purpurea |
科名 | オオバコ科 |
草丈 | 100cm |
花色 | ピンク、オレンジ、白、紫、黄、茶、複色など |
開花時期 | 5月~6月 |
もっとも品種が豊富で、さまざまな花色が揃うジキタリス・パープレア。100cm以上に背を伸ばし、日光に向かって花を咲かせる性質があるので、日差しを考慮して植えると見ごたえのある植栽になります。花持ちが良いので切り花にも向いています。育てて、飾って楽しめる魅力的な品種です。
ギジタリス・パープレア・エクセルシアグループ
ギジタリス・パープレア・エクセルシアグループの基本情報
学名 | digitalis purpurea Excelsior Group |
科名 | オオバコ科 |
草丈 | 150cm~180cm |
花色 | 白、紫、赤、黄色、ピンク、クリーム |
開花時期 | 5月中旬~ |
草丈180cmにもなり、花は片側だけではなく茎の周り全体に付くので、どの角度からも見ても美しい、とても華やかな品種。白、紫、赤、黄色、ピンク、クリームなど、花色も豊富です。切り花にも向いているので、自宅で贅沢に活けるのも楽しみです。
ジキタリス・パープレア・フォクシーグループ
ジキタリス・パープレア・フォクシーグループの基本情報
学名 | digitalis purpurea Foxy Group |
科名 | オオバコ科 |
草丈 | 50cm |
花色 | 白、ピンク、ローズなど |
開花時期 | 5月~7月 |
草丈50cmほどの矮性品種で、たくさんの花茎を上げるので、コンパクトな庭もバランスよくまとまる品種。秋に種を撒いて、翌年の初夏に花を咲かせるので、他の品種よりも早く花を楽しむことができます。白、ピンク、ローズなどの花色で、庭を華やかに彩ります。
ジキタリスの特徴
本来は多年草や宿根草として扱われる植物ですが、耐暑性が弱いため、日本のじめじめとした夏の季節は根腐れなどのトラブルを起こしやすく、一般的には一年草、または二年草として扱われています。春に種を撒くと翌年、秋に撒くと翌年~翌々年の初夏に花が咲きます。
かつては特効薬としても
明治時代に日本に渡ってきましたが、当時は観賞用ではなく、打撲や傷の手当てに利用されていました。その後、強心剤としての薬効が認められ、うっ血性心不全の特効薬として利用されていましたが、副作用の危険が低くないため、現在では積極的に使われることは少なくなっています。
ジキタリスの原産地
ヨーロッパ、北東アフリカ~中央アジア原産で20種以上が分布します。最も園芸品種が多い「ジキタリス・パープレア(プルプレア)」は西ヨーロッパ、南ヨーロッパ原産です。現在の人気ぶりでは想像がつかないかもしれませんが、日陰で繁殖し、いけにえの儀式が行われる夏に花を咲かせることから、かつてヨーロッパでは、不吉なイメージを持たれていました。「血のついた男の指」 「魔女の指ぬき」などと不名誉な呼び名がついていたこともあったそうです。
ジキタリスの花の特徴
ジキタリスが最も美しい季節は初夏
ジキタリスの花の季節は5月~6月です。ベル型の花は、ピンク、オレンジ、クリーム、アプリコット、白、紫、赤、黄、茶、などの花色があり、花の内側には細い毛が生え、濃いめの色の斑点が見られます。まっすぐに伸びた茎の先にできる花穂は30cm~50cmほどになり、下から上に向かって順番に咲き進みます。
ジキタリスの葉の特徴
葉は卵形の長い楕円形で、ふちは細かな鋸葉になっています。ツヤはなく、表裏に細かな毛が生えていて、やわらかくカサカサした手触りです。株元は円を描くように葉が付き、長く伸びた茎には交互に付きます。花が終わるとこの株元のロゼット状の葉だけを残して冬を越します。
ジキタリスの実と種の特徴
ジキタリスの季節が終わり花が落ちると、茎に沿ってぽこぽこと黄緑色の実ができるので、その実が茶色くなるまで待ってから種を採取します。自然にこぼれてしまう直前に充実した種を取ることができるので、よく観察してみましょう。実をそっと破ると、ジキタリスの大きな姿からは想像つかないほど小さな種が大量に出てきます。
ジキタリスの毒性
強心剤としても知られるジキタリスですが、花、種、葉、茎、根の全草に強い毒性があります。「ジゴキシン」や「ジギトキシン」などを含み、食べてしまうと胃腸障害、下痢、おう吐、頭痛、不整脈、めまいなどを引き起こします。葉がコンフリーとよく似ているため、過去には誤食による死亡事故も起きています。強い毒性なので、栽培や取り扱いには十分に注意しましょう。
葉が似ているコンフリーにも毒性が
ちなみに、コンフリーは以前、食用とされていましたが、多量摂取することで肝障害を引き起こす「ピロリジジンアルカロイド」が含まれていることがわかり、現在では厚生労働省から摂食しないよう注意勧告が出ています。
ジキタリスの花言葉
「不誠実」
花言葉の元になった神話
ゼウスの妻ヘラが日課である礼拝を抜け出して、大好きなサイコロ遊びをしていたところ、そのサイコロを地上に落としてしまいます。サイコロを取ってくるよう頼まれたゼウスは、日頃からサイコロ遊びばかりしているヘラに不満を感じていたため、そのサイコロをジキタリスに変えてしまいました。このギリシャ神話から「不誠実」という花言葉がつけられたと言われています。
そのほかの花言葉
ほかに、「隠しきれない恋」 「熱愛」 「健康的」 「熱い胸の思い」 「誠心誠意」 「青春」 「熱情」 「君は美しいだけ」 「不真面目」などの花言葉があります。
ジキタリスの名前の意味
名前の由来は「指サック」
ラテン語で「指」という意味の「digitus(ディギトゥス)」に由来します。ジキタリスの花の形が指サックに似ていることにちなんで名前がつけられました。また、鶏小屋に忍び込もうとするキツネに、妖精が足音や足跡を消すための手袋を与えたという話から、「キツネノテブクロ」や「フォックスグローブ」と呼ばれるようになったそうです。
まとめ
ジキタリスについてご紹介しましたが、いかがでしたか?大型で豪華なジキタリスは庭に取り入れるのに躊躇してしまいそうですが、バラはもちろん、意外に草花との相性が良く、お互いに引き立てあって美しい景観を作ってくれます。そんな優秀なジキタリスですが、不吉なイメージを持たれていた過去や、猛毒を持つ一面も。また、ユニークな名前の由来など、さまざまな顔を持つ魅力的なジキタリス。お気に入りを見つけて、ぜひ、育ててみてはいかがでしょうか。
出典:BOTANICA