彼岸花とは
彼岸花は中国原産の多年草で、日本には古い時代に渡来して帰化したと考えられています。秋の彼岸の頃に花を咲かせることなどから彼岸花と名付けられました。先に花が咲き、葉はあとから生えてくる夏植え球根植物です。
ボタニ子
ほんとだ、花が咲いてるときは葉っぱがない!いつ生えてくるんだろう?
彼岸花の基本情報
学名 | Lycolis radiata |
科・属名 | ヒガンバナ科・リコリス(ヒガンバナ)属 |
原産地 | 中国 |
形態 | 多年草 |
花の色 | 赤 |
草丈(花茎) | 30cm~60cm |
葉の色 | 濃緑色 |
特性 | 毒性がある、球根で増える、群生する |
彼岸花の特徴
彼岸花は地表から長く伸びた花茎の先に、赤い花びらが放射状に反り返った鮮やかな花を咲かせます。花茎が伸び始めてわずか1週間ほどで開花するのが印象的です。日本に伝わった種類は種ができず、球根の自然分球で増え、群生します。球根は、タマネギのような鱗状葉が球形にあわさった鱗茎です。
彼岸花の毒性
彼岸花は、全草にリコリンなどのアルカロイド系有毒成分が含まれています。体内に摂取すると、吐き気や腹痛、下痢、神経の麻痺症状を引き起こすことがあります。作物をモグラやネズミの被害から守るために、毒性のある彼岸花が田畑の縁に植えられてきました。土葬の頃の墓地に多く植えられたのも同じ理由からです。また、飢饉のときに毒抜きをした球根からデンプンを採って非常食にするなど、毒性を避けつつ上手に活用されてきました。
さまざまな別名
彼岸花には、「曼殊沙華(マンジュシャゲ)」「火事花」「葬式花」「幽霊花」「ハミズハナミズ(葉見ず花見ず)」などたくさんの別名があります。鮮やかな花の形にちなんだ名前もあれば、毒性に注意を促す名前、墓地など咲いている場所からイメージされる名前などがみうけられます。そして、「ハミズハナミズ」は、葉と花の生育サイクルをあらわす呼び名です。
彼岸花の葉が生えるのはいつ?
彼岸花の生育サイクル
彼岸花は、ハミズハナミズとも呼ばれ、花と葉がお互いを見ることがない(同時に生えない)ユニークな生育サイクルの植物です。樹木では桜のように花が咲き終える頃に葉が萌え出す植物はありますが、草花では珍しく、彼岸花などリコリス属植物の特徴です。
彼岸花の花が咲く時期
彼岸花が咲くのは秋の彼岸の頃です。先端に苞(ほう)をつけた花茎が地表から伸び、1週間ほどで苞がはじけて真っ赤な花が輪状に咲きます。なぜいつもその時期に咲くのか不思議ですが、地中の球根で作られた花芽が気温の変化を感じ取って地表に出てくるとの説が有力です。咲き終わると花茎とともに枯れ、自然に倒れて萎びます。
彼岸花の葉が生える時期
彼岸花の葉は、花と花茎が枯れてほどんど痕跡のなくなった10月中旬頃に、地表から出てきます。球根から10枚前後の葉が出てきて、長く伸びると放射状に広がります。繁ったまま冬を越し、光合成をおこなって球根に養分を蓄えるしくみです。春になると葉が枯れて地上部は休眠状態になり、5月下旬頃から球根で蕾の準備を始めます。
彼岸花の葉の特徴
葉の形状
彼岸花の葉は長い線状で、幅は6mm前後、長さは30cm~40cmほどに伸びます。葉の色は濃緑色で光沢があり、中脈と裏側がやや白っぽいのが特徴です。球根から伸びて放射状に広がります。水仙の葉に少し似ていますね。水仙の葉は幅が広く、彼岸花のように中心に白い筋がなく、しっかり立ち上がります。彼岸花との大きな違いは、水仙は葉があるうちに花が咲くことです。
葉の毒性
葉にも毒がある
彼岸花は、全草に有毒成分が含まれています。多く含まれているのは球根ですが、毒性は葉にもあります。山菜と間違えたり紛れて一緒に収穫したりしないように注意が必要です。毒性は、口にしなければ大丈夫です。花や葉にさわるのは問題ありませんが、切り口から出る液に触れるとかぶれることがごくまれにあるので、皮膚の弱い人は気をつけてください。
ボタニ子
毒性があるのは知っていても、花が咲いていないから彼岸花の葉と気づかないかも!気をつけなきゃ。
彼岸花の葉と山菜のノビルはどう見分けたらいいですか?
彼岸花の葉は平たくて、中央に白っぽい筋が入っています。ノビルは細くて丸みがあり、ネギのような匂いがします。掘り上げてみると、彼岸花の球根は茶色で、ノビルは白です。
彼岸花の仲間【リコリス】
日本に帰化した彼岸花には種ができませんが、同じリコリス属の仲間や、種のできる種類との交雑種が存在します。それらは彼岸花も含めて欧米で人気が高まり、「リコリス」と呼ばれることも増えてきました。それぞれ葉の出る時期に若干の違いはあるものの、いずれも毒性があり、花と葉が同時に生えないのが共通の特徴です。
シロバナヒガンバナ(白花彼岸花)
シロバナヒガンバナ(シロバナマンジュシャゲ、学名:Lycoris albiflora Koidz)は、ショウキズイセンと彼岸花の自然交雑種といわれています。白花ですが変異が多く、白や淡いクリーム色などいくつか異なる色合いの種類があります。開花や葉の出る時期などは彼岸花とほぼ同じで、種もできません。
ショウキズイセン(ショウキラン)
ショウキズイセン(鍾馗水仙、学名:Lycoris aurea)は、中国から日本の温かい地域に自生します。8月~10上旬頃に大きな橙色の花が咲き、花後に黒い種ができます。葉は花が枯れた晩秋~春に繁り、葉幅は彼岸花より広く長さ60cm前後の緑色の広線形で、中脈が黄緑色です。 名前の由来は、花の姿が魔除け飾りなどに使われる鍾馗様を思わせ、葉が水仙に似ているからだといわれています。英語名はゴールデン・ハリケーン・リリーです。
ナツズイセン
ナツズイセン(学名:Lycoris squamigera)は中国原産で、8月頃に青みがかったピンク色の上品な花が咲き、葉が出るのは早春です。夏咲きで葉が水仙に似ているため、夏水仙と呼ばれます。花の咲くときに葉がないことから、ハダカスイセン(裸水仙)の別名があります。
キツネノカミソリ
キツネノカミソリ(学名:Lycoris sanguinea)は日本に自生し、8月~9月に開花します。花色はオレンジ色、黄赤、ピンク色で、ほかのリコリス属の花と異なり、花びらはあまり反り返りません。葉の形状がカミソリに似ていることから、この名がつけられました。葉が出る時期は2月頃~初夏で、葉幅は彼岸花より広く、水仙の葉に似ています。全草に毒性があり、黒い種ができます。
彼岸花の葉を探してみよう
彼岸花の不思議な輝きを放つ花と、寂しい冬の時期に艶やかに繁る葉は魅力的ですね。花の咲いていた場所を覚えていたら、別の季節に葉っぱを探してみてはいかがでしょうか。彼岸花の毒性や生育サイクルを知り、適切な注意を払いつつ、豊かに観賞しましょう。
出典:写真AC