ワインは専用の種類のぶどうで造られる
ワインの原料として栽培されているぶどうと、普段デザートとして食べるぶどうは、じつは使っている品種が異なります。世界各地で栽培されているたくさんのぶどう品種のうち8割以上がワイン用のぶどうで、生のまま食卓に並ぶぶどうはごく一部といわれていますよ。「ワイン用ぶどう」と「食用ぶどう」を区別するのは、それぞれの用途に合わせた特徴を持っているためです。
ワイン用と生食用のぶどうの違い【特徴】
特徴の違い①皮の厚さ
ワイン用のぶどうと生食用のぶどうとは「皮の厚さ」が違います。ワイン用のぶどうは食用に比べ皮が厚いのが一般的です。これはぶどうの皮が、ワイン特有の香りや色の元になっているためです。生食における皮の厚さは食べづらさに繋がりますが、ワインを造るうえでは、皮の厚さはとても重要視されます。
特徴の違い②種の大きさ
ワイン用のぶどうは皮の厚さと同様に、種も大きく目立つという特徴があります。ぶどうの種はワイン(特に赤ワイン)の渋みに繋がります。しっかりとした種が入ったぶどうであることが、コクのあるおいしいワインの必須条件です。品種改良された種なしぶどうは気軽に食べられて魅力的ですが、ワイン用には向きません。
特徴の違い③味
ワイン用と生食用では、味わいにも大きな違いがあります。生食用のぶどうは大粒で実の部分が多く、たっぷり果汁の入ったみずみずしいものが人気です。しかしながらワインを造るうえでは、このみずみずしさはデメリットです。水分量が多い分、香味成分が少なくなってしまいます。小さな粒の中に香味成分や酸味・渋みが濃縮されたぶどうのほうが、ワイン造りには最適です。
ワイン用と生食用のぶどうの違い【育て方】
育て方の違い①用土
果樹栽培は、養分をたっぷり含んだ土壌が適しています。生食用のぶどうも同様ですが、ワイン用は異なります。ワイン用のぶどうの育て方では、水はけがよく、やせた土地を選ぶのがポイントです。肥料が十分に与えられた土壌では、枝葉はしっかり育つ代わりに、果実に養分が集まりづらくなるためです。養分や水分が不足した環境のほうが、ぶどうの木が水分や養分を集めようと頑張るので、ギュッと味が濃縮された果実になります。
育て方の違い②仕立て方
生食用のぶどうは「棚づくり」と呼ばれる、頭上に金網を渡した屋根のようなスタイルの育て方が一般的です。無理なくぶどうの房に手が届く高さで、作業のしやすさも考えられています。一方ワイン用の仕立て方は「垣根づくり」です。ぶどうの木1本につくぶどうの房数を制限して、厳選した果実に果実味を濃縮させることが可能です。同じ理由から、ワイン用ぶどうでは育ちの悪い枝葉を切り落とす「夏季剪定」も行います。
病気や害虫への対処は共通
ワイン用・生食用いずれの育て方でも、注意するべき病気や害虫は同じです。病気は「べと病」「さび病」「黒とう病」などに注意しましょう。薬剤による防除はもちろん、落ち葉や枯れた巻きひげなどをこまめに取り除くことも大切ですよ。害虫はブドウトラカミキリやブドウスカシバ、フィロキセラなどが発生します。特にブドウトラカミキリは剪定後の枝を枯らしてしまうため、収穫量に大きく影響する害虫です。
出典:写真AC