家紋とは
私たちは普段は家紋のことはあまり意識しないで生活していますが、結婚式やお葬式などの改まった儀式や、家やお寺などの構造物で家紋を見ることがありますね。そこでまず、家紋について詳しく説明します。
家紋の意味
家紋は日本古来の文化で、自分の家や名字を表す紋章です。家紋は241種、5000紋以上あると言われ、植物や動物などがモチーフとして使われています。家紋を見ればその人の素性や家柄が一目瞭然で、昔から家系を大切にしてきた日本人ならではの文化と言えます。
家紋の歴史
家紋の歴史は鎌倉時代にさかのぼります。武将が自分の家の家紋を旗や剣などに使うことで威厳を示し、また敵味方の区別にもなりました。江戸時代になると家紋は武将だけでなく一般庶民にも広がって、明治時代には紋付袴が一般的になったのでどの家にも家紋ができたのです。家紋は現代でも着物や墓石などに使用されて引き継がれています。
ボタニ子
家紋の種類
家紋はそのモチーフとなっている種類別に大きく次の5つに分けられます。
植物紋 | 植物の実・花・葉などがモチーフ、種類が一番多い |
動物紋 | 鷹・鶴・蝶などの動物がモチーフ |
器物紋 | 家具・農具・工具などの構造物がモチーフ |
文様紋 | 直線や曲線を用いた幾何学的な図柄がモチーフ |
自然紋 | 天・地・気象などの自然がモチーフ |
五大家紋とは
五大家紋の中にある「片喰(カタバミ)紋」
五大家紋とは、家紋の中でも特に種類が多い5つの家紋です。この五大家紋の中に、今回のテーマであるカタバミを用いた紋章の「片喰(カタバミ)紋」があります。この片喰紋については後ほど詳しくご紹介します。
カタバミとはどんな植物?
片喰紋を説明する前に、まず植物としてのカタバミについてお話しします!
カタバミは道端や公園などでよく見かけますね。どちらかというと雑草のイメージが強い植物なのですが、家紋の世界に於いては五大家紋に入るほど重要視されている植物と言えます。ではどうして片喰が家紋に多用されているのでしょうか?それを理解するためには、モチーフとなったカタバミとはどんな植物なのか、ということをまず知る必要があります。そこでここではカタバミとはどんな植物でどんな特性を持っているのかについてまず説明します。
カタバミの基本情報
属性 | カタバミ科カタバミ属 |
種類 | 多年草 |
開花時期 | 5月~10月 |
分布 | 日本全域、世界中の温帯から熱帯まで |
草丈 | 5~20cm |
カタバミの花の特徴
カタバミの花は黄色い5枚の花びらを持っています。開花時期は長く、春から秋にかけて次々花を咲かせます。日当たりでは花を咲かせますが、日陰では花を閉じてしまうのが大きな特徴です。
カタバミの葉の特徴
カタバミの葉はハート形をしていて3枚葉です。クローバーと同じように、カタバミにも4枚葉のものもありますが、4枚葉はとても珍しくごくまれにしか見られません。葉も花と同じように日当たりでは開きますが、日陰では閉じてしまいます。茎は地面を這うように横に伸びて行き、その繁殖力はとても旺盛です。
カタバミの根の特徴
カタバミの根は地中深くに球根を持ち、その球根から細い根をさらに地中深くまで伸ばします。そのため、茎をもって引き抜くと細い茎が簡単に切れてしまって、根から抜くことはとても困難です。駆除に困る雑草と言われるのはこういう特徴があるからです。
カタバミの別名
カタバミを漢字で書くと「片喰」
カタバミは漢字では「片喰」と書きます。これは先ほど葉の特徴のところでも述べましたが、明るい日当たりでは葉を広げていますが、光が当たらない日陰に入ると葉を閉じてしまう特性が関係しています。閉じた葉は一片が喰われたように見えることから、「片喰」と書いてカタバミという読み方になりました。
もうひとつの漢字名「酢漿草」の読み方も「カタバミ」
また、「酢漿草」と漢字で書いてカタバミという読み方もあります。この中の「漿」は難しい漢字ですが、「しょう」という読み方で、とろりとした液体や汁という意味があります。カタバミの葉や茎にはシュウ酸が含まれていて、噛むと酢っぱい味がします。そこでカタバミの汁は酸っぱいということから、「酢漿草(かたばみ)」という漢字がつきました。
別名も酸っぱいというイメージの名前が多い
カタバミは、「片喰」や「酢漿草」ほかに、「かがみぐさ」「すいば」「しょっぱぐさ」「すずめぐさ」「ねこあし」「もんかたばみ」などの別名がたくさんあります。日本中に生息しているカタバミなので、地方によって様々な呼び名があるのが面白いですね。
カタバミが使われる家紋について
ボタニ子
カタバミについてはよく分かりましたが、どうしてそのカタバミが家紋に多く使われているの?
カタバミが家紋に使われている理由
カタバミは繁殖力が旺盛だから
カタバミは繁殖力が旺盛で根も強いので、一度根付くとなかなか簡単に絶やすことができない特性があります。そこで、「(家が)絶えない」ということで、家紋としてよく使われるようになりました。特に世襲を重んじる武将の家では、家運隆盛・子孫繁栄の願いを込めて、カタバミ使った家紋が多かったと言われています。
カタバミは身近な植物だから
カタバミは日本全国のどんな場所でもよく見かける植物です。いわゆる雑草なのであまり生えすぎると厄介なのですが、どこにでもある馴染み深い植物として、昔から日本人の生活において身近な存在だったと言えます。そこで親しみのあるカタバミが家紋として使われるようになったのでしょう。
カタバミの葉の形が可愛いから
また、カタバミの葉がハートの形をしているのも理由の一つです。可愛い3枚のハートが並んでいる様子は、図柄としては魅力があり、ハートのモチーフをさまざまにアレンジすることで多様な模様が生み出されました。
カタバミが使われる家紋の種類
①片喰紋
この「片喰紋」はほかの片喰紋の基礎となっています。実物のカタバミの葉をとても忠実に表現したデザインと言えますね。
②剣片喰紋
「剣片喰紋」は片喰紋の中に剣を加えたものです。カタバミの葉の間に剣を加えたこの模様は、特に武家の家紋として好まれました。武士の命である剣と、繁栄の意味合いがあるカタバミに由来した模様を組み合わせて、シンプルながら厳かな力強さも加わった家紋と言えますね。
③丸に剣片喰紋
「丸に剣片喰紋」は剣片喰紋がさらに丸に囲まれた図柄です。この家紋は片喰紋の仲間でも一番多く普及している家紋です。剣片喰紋を丸で囲んで、「家」という一つのまとまりを強調し、丸く平安に過ごすという願いも感じ取れます。また、刀や調度品に家紋を刻むときに、丸に囲まれた方が収まりが良く見え、デザイン的にも優れていたからでしょう。
④菱地抜き方喰紋
菱地抜き方喰紋は菱形の中に片喰紋を入れた形です。菱形を用いることでシャープな印象がありますね。
⑤三つ盛り片喰紋
三つ盛り片喰紋はカタバミのモチーフを三つ並べた家紋です。このように図柄を複数使ったものもあります。
⑥七つ片喰紋
七つ片喰紋はさらに七つのカタバミを使っています。ここまでになるとかなり複雑な模様になっていますね。
⑦丸に四つ片喰紋
丸に四つ片喰紋はカタバミの葉が4枚になっています。
まとめ
カタバミと家紋の関係をご紹介しましたが、武将が好んで使った片喰紋は、植物としてのカタバミの特性に由来していることがおわかりいただけたでしょうか。普段はあまり意識しない家紋ですが、ご自分の家紋はどのような模様なのか、ぜひその由来なども合わせて調べてみてはいかがでしょうか。家系のルーツを探るいい機会になるかもしれませんよ!
そう言えば、テレビの時代劇で家紋の付いた旗などをよく見ますね~!