ミツガシワ(三槲)とはどんな植物?
ミツガシワの特徴
花期は4月~8月
ミツガシワ(三槲)とは、ミツガシワ(三槲)科ミツガシワ(三槲)属に1種類のみ存在する多年草です。高さは成長すると15cm~40cmほどになります。浅い湿原などで水中に根を横ばいに這わせて増え、白い小さな花をたくさん咲かせます。花期は4月~8月です。(※上の写真は白い花が咲いたミツガシワの群生)
北半球に広く分布
北極圏周辺の北半球に広く分布し、日本では北海道から九州まで生息地が広がっています。
ミツガシワの花
白い綿毛をつけた純白の花
ミツガシワの花は、蕾のうちはピンクがかっていますが、一つに合着した花弁が5片に深く裂けて咲く(合弁花冠)と、白い縮毛をたくさんつけた純白の花になります。この白い毛は寒さや強い日差しから身を守るためとされます。花の直径は1cm~2cmほどの大きさで、茎先に均等についた柄に10~20輪ほどの花をつけます。花期は場所によって4月~8月と幅広いですが、実際に咲いてから散るまでの期間はほぼ1カ月です。
ミツガシワは氷河期の生き残り
ミツガシワは約200万年前の氷河期から北極周辺の北半球に広く生息していた生き残り植物の一つと言われており、「氷河期の遺存植物」と呼ばれます。今と同じ白く美しい花姿のままで、人類出現よりはるか昔に力強く咲き誇っていた姿を想像すると感動すら覚えます。多くの人々がこのミツガシワに魅了される理由の一つかもしれませんね。(※上の写真は雪の結晶を思わせる純白のミツガシワ)
暖地でも生きるミツガシワ
通常は北海道・東北の寒冷地の湿原などでよく見られるミツガシワですが、関東地方以西の温暖な地域で見られる群落は少なく、分布地域も点在しています。生育が難しく絶滅危惧種に指定して保護に努める県が多いです。分布の限界は北九州地域になります。間氷期に環境の適した湿原などで生き残ったのが理由と言われます。猛暑の地でもたくましく生き続けたミツガシワには強い生命力があるのですね。
ミツガシワの根は二ホンジカの大好物
ミツガシワの根は二ホンジカの大好物であるため、二ホンジカの増加によるミツガシワの食害が、北海道から九州まであちこちで報告されるようになりました。ミツガシワの群生する国立公園尾瀬ケ原湿原でも根が掘り荒らされて深刻な被害を受けています。温暖化や森林伐採などの人的要因で起こった二ホンジカの大繁殖で、ミツガシワは危機にさらされているのです。
ミツガシワの花言葉はなに?
花言葉は「私は表現する」
ミツガシワの花言葉は「私は表現する」です。学名のMenyanthesがギリシャ語の「menyein(表現する)+ anthos(花)」が語源になった名前であることと、下から上に向かってだんだんと白く美しく咲きあがっていく様子が、自らの存在を慎ましくも誇らしげに表現しているように見えることからつけられました。(※上の写真は下方で咲いたミツガシワ、上の蕾はこれから咲こうとしています。)
ミツガシワの名前の由来は?
柏の葉に似ている?
ミツガシワ(三槲)の名前の由来は、3枚の葉が集まっている生え方や葉の縁の波形がブナ科の柏の葉に似ていることから名付けられたという説があります。漢字で「三柏」(ミツガシワ)とも書かれます。柏の葉の縁はミツガシワの葉の縁より波形が深い鋸葉になっています。(※上の写真は柏の葉)
家紋の「三柏」に似ている?
葉の形が家紋の「三柏」に似ていることから名付けられたという説もあります。「柏の木」は古来から「神聖な木」とみなされ、神職に使える家の家紋に多く使われています。また武将山内一豊が用いた「丸に三柏」の家紋も有名です。(※上は実際に使われている「三柏」家紋の写真)
ミツガシワの別名
ミツガシワには水半夏(ミズハンゲ)の別名があります。また、葉を乾燥させたものは、よく眠れる薬効から、中国では睡菜(スイサイ)や瞑菜(メイサイ)と呼んで睡眠薬にしたり、日本では葉の苦み成分を健胃薬として「睡菜葉」(スイサイヨウ)の生薬名で江戸時代から利用してきました。
まとめ
4月になるとミツガシワの花が見られるようになります。桜前線のように華々しく報じられたり、人々の目に飛び込んでくることはありませんが、キラキラと光る水辺で咲くミツガシワの花前線を想像するのも楽しく思えます。やはり花言葉「私は表現する」は、凛と潔い白さで咲き上がるミツガシワの花にふさわしいですね。機会があったらミツガシワに会いに行ってみてはいかがでしょうか。(※上の動画はいわき市の差塩湿原)
出典:写真AC