ムベ(郁子)とは?その特徴や伝説の果実といわれる理由をご紹介!アケビとの違いは?

ムベ(郁子)とは?その特徴や伝説の果実といわれる理由をご紹介!アケビとの違いは?

庭の生け垣として見かける郁子(ムベ)。その実は栄養価が高く“伝説の実”とし皇室に献上されたことも。現在は食用での栽培は少なくなりましたが古くから親しまれてきただけあり魅力が沢山あります。今回はそんな郁子(ムベ)についてご紹介します。

記事の目次

  1. 1.郁子(ムベ)とはどんな植物?
  2. 2.郁子(ムベ)の由来
  3. 3.郁子(ムベ)の実について
  4. 4.郁子(ムベ)の栄養価とその効能
  5. 5.アケビとムベの違いについて
  6. 6.まとめ

郁子(ムベ)とはどんな植物?

出典:写真AC

ムベはアケビ科・ムベ属に分類されるツル性の植物です。古くから長寿の象徴とされ、縁起の良い果樹として親しまれてきました。もともと暖かいところに分布していましたがその丈夫な性質から、今では関東~東北の一部にまで生息しています。現在は観賞用として育てられることが多くなりましたが、その実はかつては伝説の果実とよばれ、皇室にも献上されたことも。そこで今回はそんなムベの特徴や由来などご紹介します。

ムベの基本データ

分類 果樹・庭木
形態 常緑性ツル性植物
原産地 日本・中国・台湾・朝鮮半島
草丈・樹高 3m以上(ツルの長さ)
収穫季節 秋10~11月ごろ
受粉樹 ある方がよい
耐寒性 やや弱い
耐暑性 強い
別名 野木瓜/トキワアケビ/長命樹

特徴

むべの木は常緑性で、小さな葉が集まった掌状複葉という葉の形をしており、ツルはとても長く成長し直径8mmほどの太さになります。秋ごろに生る赤い色の果実は熟しても裂けることなく、たくさんの種を包み込んだ白色の果肉は甘く美味しいです。ムベの実やツルには高い栄養素がふくまれ、民間療法にも利用されてきましたが現在は食用としてでなく観賞用に栽培が進み、庭の生け垣に利用される他、切り花としても人気です。もともと日本や中国が原産地なのでとても育てやすく丈夫な性質ですが、自家受粉はしにくい性質のため実をつけたい場合は2~3本ほど一緒に植えつけます。

花の特徴

出典:写真AC

春になるとガクが花弁上になった小花を葉の付け根あたりに固まってたくさん咲かせます。花色は白く、中心に赤い筋が入っています。とても可憐で可愛らしいので春の生け花によく使われます。秋は実、春は花をメインとして1年中季節を通じて楽しめるなんて素敵ですね。

ムベの産地

ムベの漢字表記は「薁」となっており、これはムベが蒲生野北部に位置する奥島山に自生していたことからきています。奥島山には「むべ谷」「むべが原」「むべ蔓山」という地名が残っており、ムベの産地として知られています。

郁子(ムベ)の由来

縁起が良いと言われる理由

出典:写真AC

ムベの葉の形は『掌状複葉(小さな葉が集まり長い柄のようになった状態)』といい、この葉の数がむべの木の成長とともに3→5→7枚と増えてゆくことから七五三の木、そしてそこから無病息災の木として尊ばれ、縁起の良い木といわれるようになりました。

名前の由来

昔、むべの実には健康長寿の言い伝えがあり、献上された天智天皇がこの果実を食した際に「むべなるかな(いかにもその通りだ)」と言ったことから“むべ”の名がついたと言われています。また他にも、大贄として献上されていたことからオオニエ→オオムペ→オオムベ→ムベ、と転訛したなど諸説あります。別名として「野木瓜」「トキワアケビ」とも呼ばれています

むべの実伝説

先ほどお話しした名前の由来の一つ、天智天皇がムベを食した話に伝説といわれた理由が隠されています。そのむべの実伝説は実際に滋賀県近江八幡市に次のように残っています。

天智天皇が蒲生野(古代近江の歴史地名)に狩猟で訪れた際、現在の近江八幡で8人の男子を持つ健康な老夫婦と出会ったそうです。その時その老夫婦にどうすればそのような長寿でいられるのか尋ねたところ、この地でとれる無病長寿の霊果を毎年秋に食べているからだと言い、それを差し出したそうです。これを食べた天智天皇が「むべなるかな(いかにもそのとおりだなあ)」と仰せられたとか。その時の「むべ」がその後その果実の名称になったと伝えられているとの事です。また、それ以来朝廷に毎年献上されるようになったとされています。

近江八幡市ではこのむべの実伝説をもとに食用のムベを栽培し町おこしを進め、近年皇室へ献上を再開するまでに至っています。観光地では八幡を産地としたムベやその加工品をを購入することもできます。

郁子(ムベ)の実について

実の特徴

出典:写真AC

ムベは秋ごろになると実を結びます。形は楕円形で大きさは7~9cmほど、色はきれいな赤い色をしています。実の特徴として熟しても赤い皮が裂けず、果実の中にはたくさんの種と果肉が詰まっています。味は甘みがありとても美味しいですが、このムベの種は大きく量もあり、実とくっついているため少し食べづらいです。

実の食べ方

実の特徴でもお話ししましたが、ムベの果実の中には果肉と果汁、そしてたくさんの種がつまっています。そのため果物としてはあまり食べられる部分が少なく、またスプーンや箸などでは果肉と種を離すことが難しいため食べる際は種ごと口に含み口内で種のみ選り分けて口の外に出します。

郁子(ムベ)の栄養価とその効能

Photo byTheVirtualDenise

実はムベは健康に良い栄養素がたくさん。その果実はスタミナ果物と言われるほどの効能があり、むべの木や葉にも高い栄養素が含まれていることから生薬や民間的療法に利用されてきました。また、中国ではムベの果実や種を駆虫薬として用いられています。

実の栄養価

果実の主な栄養素としてβシトステロール、アミリンなどが含まれています。このβシトステロールには血中のコレステロールを下げる効果が、アミリンには食べすぎを予防する効果があるため健康に良い果物といえます。また、葉や茎には配糖体のスタントニン、ムベニンが含まれています。皇室に献上された伝説があるのも納得の栄養素が詰まっていますね。

効能について

ムベの茎や根を乾燥したものは野木瓜(やもっか)という生薬になり、利尿に効能があります。また、ムベの果実は栄養価が高くスタミナ果実として精がつくといわれ、脚気や脳卒中の予防薬としても利用されてきました。民間療法では、強心作用・利尿作用・通経作用・腎臓炎・膀胱炎・浮腫の薬としての効能があるとされます。むべの木だけで健康長寿が叶えられますね。

果実(煎じての服用または生で食す)  ・かぜ ・月経不順 
葉・蔓・果実(煎じて服用)  ・排尿異常・口渇・腎臓病
 ・腫れ物・浮腫

副作用・毒の注意点

ムベの果実や種、葉などに毒はなく、薬として服用した際の副作用もありません。しかし、自然に生っている実を食べる際はよく洗ってから食べましょう。アケビ科の種に毒があるという話もありますが、それは嘘で実際にはアケビにもムベにも毒はありません。しかし毒はないものの食べ過ぎると消化不良を起こしてしまうので、種は飲み込まず吐き出してください。

アケビとムベの違いについて

アケビによく似た姿

ムベはアケビ科に属しており、別名「トキワアケビ」と名がつくほどアケビによく似ています。しかしムベとアケビは実は性質がまったく違うのです。まず、ムベは常緑性であり別名のトキワも常葉からきていますが、アケビは落葉性で秋から冬にかけて葉を落としてしまいます。またその果実も大きく異なり、アケビは実が熟すと縦長に裂けますが、ムベの実は裂けません。実の形や葉は似ていますがこの二つが大きな違いといえます。

アケビとは違う活用の仕方

常緑性であることと、果実が裂けず虫がつかないことからむべの木は庭木として喜ばれ、栽培が容易であることも加わり垣根として植栽されています。さらにムベの実や蔓は日持ちが良いということで生け花にもよく使われています。床の間や玄関に飾るだけで風情があり、秋の優しい季節を楽しむことができます。

まとめ

ムベはその実の美味しさだけでなく、スタミナ果物といわれたことや茎や根から野木瓜という生薬ができるなどまさに健康長寿の木です。アケビと違い常緑性で実が裂けないこと、食用としては少し食べにくいことから現在は観賞用として栽培が進んでいますが、これからの季節はまさにムベの実が食べごろになります。今年の秋は伝説の果実といわれた実を食べてみませんか?

shirotiku
ライター

shirotiku

花や植物の、一つとして同じものがなく変わらず綺麗に咲く、そんなところが好きです。

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