木になるイメージの南国フルーツ
バナナやココナツなどの南国フルーツには、木に実る画像が数多くあります。そのため、南国フルーツは木になった果実を収穫して食べるというイメージが持たれやすいといえるでしょう。しかし南国のフルーツには多くの種類があり、すべてが木になるわけではありません。なり方や増え方はそれぞれに特徴があります。
ボタ爺
アボカド、パパイヤなどは木になる果実、ドラゴンフルーツはサボテンの果実じゃよ。
ボタニ子
そういえばパイナップルはどんななり方をするのかな?
パイナップルは木になる?
パイナップルは木にならない!
パイナップルは、ヤシのような南国イメージの高木ではありません。地下茎からロゼット状(放射状)に硬い剣のような形の長い葉を多数出し、高さ60~100cm程度に成長する多年草の植物です。熱帯アメリカ原産、パイナップル属アナナス科(パイナップル科)の植物で、葉の縁がギザギザしている場合もあります。
ボタ爺
パイナップルは園芸の世界では果樹に分類されるが、パイナップル畑の画像を見ると見た目の特徴は草に近いぞ。
パイナップルはアナナスの仲間
パイナップルと観葉植物のアナナスは同じ種類の植物です。園芸の世界では果実を収穫する目的で栽培する種類をパイナップル、観葉植物として育てる種類をアナナスと呼びわける場合があります。アナナスにはミニパイナップルのほか、特徴的な花が咲く種類が多く存在します。
ボタニ子
パイナップルの株とアナナスは見た目や実のなり方が似ているものが多くあります。
ボタ爺
100均などで人気のエアープランツもアナナス科の植物じゃよ。
パイナップルの果実ができる場所
パイナップルの果実はどこにできる?
上の画像を見てわかるように、パイナップルの果実ができるのは短く太い茎の先です。パイナップルはチューリップやヒヤシンスなどの草花のように下から伸びた茎の先に花をつけて結実するなり方をします。
ボタニ子
パイナップルの果実の下側の丸い部分は茎から切り取った跡ですね。
パイナップルと果実の見た目が似ている木
アダンは果実の見た目がパイナップルとよく似た植物です。アダンはパイナップルと果実のなり方が異なりますが、沖縄県などでは比較的ポピュラーな植物で目につきやすいことから、観光客にパイナップルが木になっていると勘違いされることもあります。
ボタニ子
見た目が似ているので、パイナップルの画像にアダンがまぎれこむ場合もありますよ。
アダンの特徴
アダンはタコノキ科タコノキ属、高さ2~6mの雌雄異株の小高木で、パイナップルと同じような構造をした果実が木になります。白~クリーム色で雄株は葉のわきに垂れ下がるように、雌株は枝の先にそれぞれ違った花が咲くのが特徴的です。果実の色は、若いうちは緑色で熟すと黄色~鮮やかなオレンジ色です。密集して生える特性があり沖縄県などで防風林として利用されています。
ボタ爺
アダンは畑ではなく海岸の砂地に群生する植物じゃよ。
ボタニ子
アダンの花言葉は「新しい恋」「勇敢」「繊細な美」です。
パイナップルの果実がなるまで
パイナップルは、20~30℃の高温多湿な場所で育つ単子葉植物です。畑に苗を植えてから花穂が出て花が咲くまでに、約12~18か月かかります。花が咲いてから約半年後に結実し、その後に普段食べるパイナップルの大きさまで育ちます。
ボタニ子
単子葉植物は種が芽を出すときに、葉っぱを1枚出す植物です。
ボタ爺
あまり知られていないが受粉して種もできるぞ。
パイナップルの花
花の構造
上の画像のように、パイナップルは100~200個の小さな花が、株の中心から60~100cmに伸びた茎の先に円筒状に集まって咲きます。下から順番にらせん状に咲く小さな花は硬い苞(ほう)に包まれ、花びらとがくが3枚、雄しべが6本、雌しべが中央に1本と典型的な単子葉植物の形です。
ボタニ子
苞とは葉が変形したもので、つぼみを包む形をしています。
ボタ爺
販売用に大量に栽培されるパイナップルは、薬などを使い上から下まで同時に花を咲かせる場合があるぞ。
花を支える軸
パイナップルの円筒形に集まる小さな花を支える軸は、先の部分に成長点があり、花が咲いた後も成長します。そのために、パイナップルの果実の上には見た目が冠のような葉が伸びています。
花言葉
パイナップルの花言葉には「you are perfect!」「あなたは完全です」「完全無欠」「welcome(歓迎)」などがあります。パイナップルの果実は小さな花が集まって立派な形を作っているため、この花言葉がつけられたとされています。
パイナップルの実
パイナップルは、小さな花のひとつひとつが実になる集合果(多花果)です。パイナップルの果実の表面にある硬い六角形をしたデコボコひとつひとつが、花が咲いた後に結実した部分で「本当の実」とされています。
ボタニ子
複数の実が集まって形となる果実のことを集合果(多花果)と呼びます。
ボタ爺
パイナップルは受粉しなくても実がなるという特徴があるぞ。
果実の構造
パイナップルは実ができた後に、雄しべの下にある子房、花びらや雄しべ雌しべ、がくなどをつける花たく、苞、花の集まりの中心にある軸の部分などがくっつきあい、水分を含みながら肥大化します。普段食べているパイナップルは、実ではなく肥大化した部分をおいしい果実として食べています。
ボタニ子
ボゴールパイン(スナックパイン)の画像を見るとわかりやすいですよ。
パイナップルの果実は追熟しない
パイナップルは植え付けから約18カ月以降、果実の香りがよくなり柔らかくなったら収穫できます。熟す前に収穫し、一定期間保存しても成熟しないという特徴があります。購入したパイナップルは長く保存しても甘くおいしくなりません。新鮮なうちに食べましょう。
ボタニ子
観光農園などではパイナップルをぎりぎりまで成熟させて、その場で芯までおいしく食べられるものがあります。
ボタ爺
輸入パイナップルは追熟目的ではなく、輸送中に腐らないように完全に熟す前に出荷するのじゃよ。
パイナップルの種
パイナップルはひとつひとつの花で受精します。ちょうど皮として取り除く部分と食べる部分の間あたりに、褐色をした幅約2mm長さ約5mmでゴマ粒のような大きさの種ができます。すべての花が受精すれば、硬い実だけを取り除くと果肉の表面に種がたくさんついているのが確認できるでしょう。
食べるときにパイナップルの種が見つからないのはなぜ?
畑で大量に育てられるパイナップルは、おいしく食べるためにさまざまな手が加えられた結果、同じ種類の間で受精しにくくなりました。そのために、販売されているパイナップルにはほとんど種がありません。
ボタニ子
まれに、よく見ると市販のパイナップルから種が見つかりますよ。
ボタ爺
種がみつかるのは、ハチなどが別の畑から別の品種の花粉を運んできて受精するからじゃよ。
出典:写真AC