カラスビシャク(烏柄杓)とは?その特徴や生薬としての効果をご紹介!

カラスビシャク(烏柄杓)とは?その特徴や生薬としての効果をご紹介!

カラスビシャク(烏柄杓)は道端などで見られ、種だけでなく塊茎やムカゴの部分でも増え、その強い繁殖力のため畑では厄介者とされます。一方で生薬としての効果があり、「半夏」の生薬名でも知られています。今回はカラスビシャクの特徴や生薬としての効果をご紹介します。

記事の目次

  1. 1.カラスビシャク(烏柄杓)の概要
  2. 2.カラスビシャク(烏柄杓)の特徴
  3. 3.カラスビシャク(烏柄杓)の名前の由来
  4. 4.和暦の「半夏生」とは
  5. 5.半夏(カラスビシャク)の効能
  6. 6.まとめ

カラスビシャク(烏柄杓)の概要

出典:写真AC

サトイモ科多年草の薬用植物

カラスビシャク(烏柄杓)はサトイモ科ハンゲ属の多年草で、学名をPinellia ternataといいます。朝鮮半島や中国、日本では北海道から九州にかけて分布し、田畑や道端で見られます。草丈は30~40cmほどで、開花時期は5~8月です。カラスビシャクには吐き気を鎮め、痰切り、鼻炎、食欲不振、消化不良などの改善に有効な薬用成分が含まれており、「半夏(はんげ)」の生薬名で知られます。

カラスビシャク(烏柄杓)の特徴

出典:写真AC

葉の様子

カラスビシャクは約10cmほどの葉柄2~3本が根本部分から立ち上がり(根生)、先端に3枚1組の小さな葉をつけます。小葉は5~10cmほどで先端の尖った長い楕円形です。葉柄の中ほどにムカゴができます。

花の様子

開花時期は5~8月頃です。花茎は緑色で、葉の根本部分から分かれて葉よりも高く伸びます。花茎の先に6~7cmほどの仏炎苞(ぶつえんほう※1)をつけます。仏炎苞につつまれるように肉穂花序(にくすいかじょ※2)が出ます。(※1:筒状で上部が開いた緑色の苞のこと。サトイモ科によく見られる。※2:花軸が多肉化して花が表面に密生したもの。)

果実の特徴

花後にできる実は液果(肉質な果皮を持ち、液汁が多い実)です。

強い繁殖力

カラスビシャクは、塊茎、種子、ムカゴのいずれの部分でも繁殖できるため、畑では厄介な雑草として扱われ、すぐに抜き取られてしまいます。

カラスビシャク(烏柄杓)基本情報

  • 分類:サトイモ科ハンゲ属の多年草
  • 学名:Pinellia ternata
  • 分布:朝鮮半島、中国、日本全土に分布。田畑や道端で見られる。
  • 草丈:30~40cm
  • 開花時期:5~8月
  • 葉の特徴:長い柄が根元から立ち上がる(根生)。3枚一組の小葉を2~3枚先端につける。小葉は5~10cmほど。
  • 花の特徴:葉と根元から分かれ、葉より高く伸びる。緑色で、仏炎苞が棒状の肉穂花序をつつむ。
  • 実の特徴:液果
  • 別名:狐の蝋燭(きつねのろうそく)、蛇の枕(へびのまくら)、へそくり
  • 生薬名:半夏(はんげ)
  • 薬効:鼻炎、気管支炎、吐き気、消化不良、神経性胃炎、食欲不振など症状の改善
  • 花言葉:心落ち着けて
  • 似ている花:浦島草(ウラシマソウ)、サトイモ科テンナンショウ属の多年草で、北海道から九州までの山地の湿地に分布し、花色は紫。開花時期は4~5月。

カラスビシャク(烏柄杓)の名前の由来

出典:写真AC

カラスビシャク(烏柄杓)の語源

カラスビシャクは漢字で「烏柄杓」と表記します。仏炎苞を小さな柄杓(ひしゃく)に見立て、人が使うには小さく烏が使うのにちょうどよいと名付けられたといわれます。

別名「へそくり」の由来

カラスビシャクの別名「へそくり」は、昔農家のお年寄りが孫の子守をしながら、畑のカラスビシャクの塊茎を掘り集めて売り、小遣い稼ぎをしたという説に由来します。

ボタニ子

ボタニ子

別名の「狐の蝋燭(きつねのろうそく)」と「蛇の枕(へびのまくら)」は、カラスビシャクの不思議な形から名付けられたのでしょうね。

和暦の「半夏生」とは

農耕生活に基づいた和暦

季節を表す言葉に「半夏生(はんげしょう)」があります。カラスビシャク(半夏)が生える時期のことで、もともと夏至から10日後~小暑の前日までを意味しましたが、現在では太陽の黄経が100°に達する日(7月1日か2日)を指します。この「半夏生」は「二十四節気」に補填するかたちで使われた「雑節」と、二十四節気をさらに細分化した「七十二候」に分類されます。

ボタニ子

ボタニ子

暦の「半夏生」は「ハンゲショウ(片白草)」という別の花を由来とする説がありますが、もともとはカラスビシャクを指したと考えられています。

中国から伝わった「二十四節気」

「二十四節気」とは、小寒・大寒・立春・雨水・啓蟄・春分・清明・穀雨・立夏・小満・芒種・夏至・小暑・大暑・立秋・処暑・白露・秋分・寒露・霜降・立冬・小雪・大雪・冬至の24の節目を表し、中国から日本へ伝えられました。今の私たちにとっても馴染み深いものもあり、生活に根づいています。

「七十二候」は「二十四節気」をさらに細かく分けたもの

二十四節気を日本の気候に合わせてさらに初候、次候、末候の3つずつに分けたものを「七十二候」と呼びます。この七十二候のうち、夏至の末候は「半夏生(はんげしょう、はんげしょうず)」と呼びます。カラスビシャクが生える時期を意味する「半夏生」「半夏生ずる」は、昔からこの「半夏生」の時期までに田植えを終わらせるという、農耕生活の一つの目安となっていました。

「雑節」は季節の移り変わりを表す暦日

「二十四節気」や「五節句(端午の節句や七夕など)」に加え、昔の人々は「雑節」という暦を用いて季節を捉えていました。雑節は9つあり、「半夏生」もこの中に含まれます。ほかに、「彼岸」や「八十八夜」、「土用」など今でも耳にするものがあります。

「半夏生」には毒が降る?!

「半夏生の時期には毒が降るから井戸に蓋をする」や「半夏生に採れた野菜を食べてはいけない」といわれることがあります。これはカラスビシャクに毒があるとされたからという説や、半夏生が梅雨明けの直後にあたり、カビや雑菌が繁殖しやすく、注意を促したという説があります。また、地方によって、半夏生の頃にタコやうどんなど特定の食べ物を食する習慣が残ります。

ボタニ子

ボタニ子

「半夏生」は俳句の夏の季語にもなっています。

LOVEGREEN「2019年の夏至は6月22日|暦のある生活(二十四節気)」
「二十四節気」や「七十二候」など和暦についての詳しい説明や「半夏生」について紹介されています。
神仏ネット「半夏生とは/毒が降るという半夏生の意味やタコ等の風習について解説」
暦の「半夏生」についてのわかりやすい解説や「半夏生」にまつわる食べ物まで紹介されています。

半夏(カラスビシャク)の効能

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半夏(カラスビシャク)の薬用成分

カラスビシャクにはアミノ酸類、アルカロイドのコリン、澱粉、脂肪酸類、シトステロールの配糖体、エフェドリンなどの薬用成分が含まれています。また、シュウ酸カルシウムの針晶、3,4-ジハイドロオキシベンズアルデヒドの配糖体を含有し、特有のえぐ味があり、口唇粘膜に感じる刺激があります。

半夏(カラスビシャク)の薬効

半夏には咳や痰を伴う鼻炎、気管支炎、つわりなどの吐き気、消化不良、神経性胃炎、食欲不振などの症状を改善する薬効があるとされます。半夏単独では独特の苦みが強いため、一般的には生姜などほかの生薬とともに用いられます。また、大棗(なつめ)や山薬(やまいも)など食用可能な穏やかな薬効の生薬と異なり、半夏ははっきりした作用を持つため食用はされません。

半夏(カラスビシャク)を含む漢方薬

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半夏を含む漢方薬には、大半夏湯(だいはんげとう)、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)、小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)、二陳湯(にちんとう)、二朮湯(にじゅつとう)、小青龍湯(しょうせいりゅうとう)、釣藤散(ちょうとうさん)、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)などがあります。

タケダ健康サイト「タケダの生薬・漢方薬事典/生薬図鑑」
半夏の薬効成分、漢方処方について紹介されています。
養命酒「生薬百選71 半夏(ハンゲ)」
半夏の概要と生薬成分、漢方処方について紹介されています。

まとめ

出典:写真AC

種のほかにも塊茎やムカゴで増え、繁殖力が強いために時に厄介者扱いされますが、薬用成分を含む植物としても知られるカラスビシャク。季節を表す言葉「半夏生」として伝わり、半夏生の頃に降る雨は「半夏雨」と呼ばれ、俳句では夏の季語となっています。道端などでも比較的容易に見つけられるので、見かけたらその不思議な姿をじっくり観察してみてはいかがでしょうか。

harumama
ライター

harumama

ガーデニングは初心者でよく失敗しますが、花が好きで庭にあれこれ種をまいています。最近は野菜にも手を出し始め、今年はミニトマトとゴーヤーのリベンジを狙っています!小学生の息子も土いじりが大好きなようで、先日苔玉を一緒に作りました。植物の生長が毎日のちいさな楽しみになれば、と思っています。

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