サルオガセモドキとは?
サルオガセモドキは着生植物
遠目には糸の束かボロ布のように見えるサルオガセモドキ。こんな姿でも、れっきとした被子植物なのです。地面に根を張らず、他の植物に固着する着生植物です。
サルオガセモドキ基本データ
- 和名:サルオガセモドキ
- 学名:Tillandsia usneoides
- 分類:パイナップル科ハナアナナス属
- 分布:北米南部〜南米
ボタニ子
とろろ昆布みたいだね!
土が不要の着生植物
サルオガセモドキは樹木の幹や枝に付着し、大気中の水分や養分を吸収して生きています。このように地面に根を張らず樹木や人工物に付着する植物のことを着生植物と総称します。
インテリア向きのエアプランツ
土を必要としない着生植物を「エアプランツ」と総称します。畑やプランターが不要で、都市部の集合住宅でも栽培できるため今やエアプランツは園芸の主要カテゴリのひとつと化しています。着生植物は土を必要としないので、土が散らかる心配がなくインテリア向きです。
ボタニ子
具体的な取り付け方・育て方は2ページ目を見てね。
パイナップル科に分類される
サルオガセモドキはパイナップル科に分類されます。よく見るとパイナップルの葉と質感が似た植物体が連なっています。
花の形が似ている
ボタニ子
パイナップルとサルオガセモドキの共通点ってなんなの?
植物の分類は花の形態を基準としてきた歴史があります(現在はDNAの配列で研究されています)。サルオガセモドキとパイナップル、花の形が似ていると思いませんか?
パイナップルの花。紫色の花弁を3枚もつ花がたくさん集まり、ひとかたまりになっています。
ボタニ子
似てる・・・のかな。花びらの形や枚数は一緒だね。
光合成の仕組みも似ている
パイナップル科は、夜のうちに二酸化炭素を吸収・貯蔵しておき、昼間は気孔を閉じたまま光合成ができる仕組み(CAM型光合成)を備えています。昼間に気孔を閉鎖できるので乾燥への耐性が上がります。サルオガセモドキにも同じ仕組みが備わっているので、他の着生植物より日当たりの良い場所を確保できる可能性が上がるのです。
サルオガセモドキの名前の由来
ボタニ子
「サルオガセモドキ」って不思議な響の名前だね。どんな意味?
漢字で書くと「猿麻桛擬」
サルオガセモドキの「オガセ」は、漢字で「麻桛」と書きます。麻糸を巻き取って束にした状態を指します。
確かに「かせ糸」に似ていなくもありませんね。
意味深な「モドキ」
ボタニ子
サルオガセモドキの「モドキ」が気になるなぁ。「モドキ」ってことは本家の「サルオガセ」がいるんだよね。
モドキではない本家サルオガセがこちらです。
ボタニ子
確かに似てるね!だからサルオガセ「モドキ」なんだ。
サルオガセは植物ではなく地衣類という生物であり、カビやキノコと同じ菌類(真菌類)に属します。本来、菌類は葉緑体を持たないので光合成ができません。しかし地衣類は体内に光合成微生物(緑藻やシアノバクテリア)を住まわせており、住処を提供する代わりに光合成で作られた養分を「家賃」として得ています。
ボタニ子
マンションのオーナー(地衣類)と住人(光合成微生物)みたいな関係だね。
サルオガセモドキの学名にある「ウスネオイデス(usneoides)」は、サルオガセを意味する "Usnea" と「〇〇に似たもの」を意味する "-oides" がくっついたもの。和名・学名ともに、本家サルオガセありきのネーミングなのです。
ボタニ子
なんか「まがい物」扱いされてるみたいで可哀想・・・
サルオガセモドキの別名や総称を整理しよう
サルオガセモドキには様々な別名があります。近縁種をひっくるめた総称もあるので、混乱しないように整理しましょう。
別名:ウスネオイデス
サルオガセモドキは学名が「チランジア・ウスネオイデス」なので、「ウスネオイデス」と呼ばれることもあります。和名か学名かの違いだけで、指している植物は同じです。
別名:スパニッシュモス
サルオガセモドキは「スパニッシュモス」とも呼ばれます。直訳すれば「スペインのコケ」。サルオガセモドキの原産地であるペルーやコロンビアは16世紀にスペイン統治下に置かれ、これらの地域の産物はスペインを経由してヨーロッパにもたらされました。サルオガセモドキもスペイン経由でヨーロッパに伝わったため、今でも英語名は「スパニッシュモス(Spanish moss)」が一般的です。
総称:チランジア
チランジア(Tillandsia)とはサルオガセモドキが属するハナアナナス属のことです。「属」は「種」よりひとつ上の分類階級なので、「チランジア」はサルオガセのみを指すのではなく「サルオガセモドキを含むハナアナナス属の総称」ということになります。
いろいろなチランジア
以下の種類もハナアナナス属なので、「チランジア」と総称されます。
総称:エアプランツ
「エアプランツ」は学術的な分類用語ではなく、定義は曖昧です。園芸業界では「土に根を張らなくても空気中の水分を吸収して生きられる植物」を指し、そのほとんどが「チランジア」に属します。そのため園芸用語としては、ほぼ「エアプランツ = チランジア」という扱いになっています。
ボタニ子
いろんな呼び方があるんだね。この記事では「サルオガセモドキ」で統一するよ。
次のページでは、サルオガセモドキの栽培管理をご紹介!
出典:写真AC