シンビジウムとは?
シンビジウムの特徴
シンビジウムの株のつくり
シンビジウム( シンビジューム)は、バルブとよばれる葉の根元の基部から構成されています。株の生育・開花に必要な栄養をたくわえる丸みをおびた部分から、葉が7~9枚程度伸びており、一鉢に3~4のバブルが植えられていることが多いです。
シンビジウムの花のつくり
花びらは上側に3枚と下に2枚で構成され、真ん中に花びらが変化したリップ(唇弁)とおしべとめしべが一緒になった、すい柱とよばれる部分で構成されています。
シンビジウムは多年草
多年草とは?
多年草とはひとつの個体が2年以上枯れることなく、生育して花を咲かせる植物のことをいいます。似ているものでは宿根草がありますが、こちらは生育に適さない温度になると地上部が枯れる植物を指します。
多年草と宿根草のちがい
- 多年草は2年以上枯れることない常緑
- 宿根草は生育期間外は地上部は枯れる
多年草としてのシンビジウム
シンビジウムは花の寿命もたいへん長く、最初の一輪が咲いてからしおれるまでほぼ100日以上花をつけています。株としても何十年も生育し生育適温を守り世話をすれば、越冬も簡単で枯れてしまうことはめったにありません。葉は常緑で2~3年サイクルで新しいものに交代し、花は1年に一度開花します。
写真はシンビジウム・トラシアナムという原種で大変長寿な蘭で、100年以上まえに日本にやって来た株が現存していることでも有名です。シンビジウムが多年草という性質を顕著に表している例といえます。
基本情報
シンビジウムは冬の鉢花として人気が高く、贈り物にも選ばれることが多い洋蘭です。デンドロビュウムやコチョウランと共にたくさん流通されており、また耐寒性も高い方なので手入れがしやすくで育てやすいので初心者でも楽しめます。
分類 | ラン科・シンビジウム属 |
形態 | 多年草 |
原産地 | アジア・オセアニア (交配種のもとの原種はインド・ネパール・中国・タイ・日本) |
草丈 | 30~80cm |
花色 | 白・ピンク・オレンジ・黄・緑・紫・茶 |
耐寒性 | ややよわい |
耐暑性 | 強い |
開花時期 | 12月~4月 |
原種について
市場に出回っている栽培種を作り出すための、野生の固有種のランのことを原種といいます。インドやネパールや中国やタイそして日本に自生しているランを交配して、作出された蘭がいまのシンビジウムです。
シンビジウムの種類と品種
一般に売っているシンビジウムは原種の交配でつくられた「クローン」であるために種はつきません。原種のさまざまな交配で品種は3000以上と言われ、毎年のように新しいシンビジウムが生まれています。
花の大きさによる種類
大型種
花の大きさが10cm以上で葉の長さが100cm以上のシンビジウムを大型種といいます。華やかでシンビジウムのよさが出ますが、支柱をたてないと茎が折れてしまうことがあり注意がひつようです。
小型種
花の大きさ5~6cmで葉も短い種類です。大型種にシュンランのような小型種をかけあわせた種類で、テーブルシンビの名前で出ています。最近の住宅事情を考えると小型のものが手入れしやすく人気があるといえます。
中型種
大型種と小型種の中間一般的に多く出回っているシンビジウムです。いちばん種類が多いので選びやすく、葉の長さも50cm程度なので日当たりのよい場所を確保すれば楽しめます。
キャスケードタイプ
花が滝のように垂れ下がった(下垂)タイプです。
シンビジウムの品種(色の系統)
交配により3000以上の品種があり、毎年あたらしい品種も生まれているシンビジウムですが、色の系統による代表的な品種をご紹介します。
白系
サラジーン’アイスキャスケード’:下垂性のシンビジウムで白い花をたくさん咲かせる品種
ピンク系
プリンセスマサコ:皇后雅子さまのご成婚のときに作出されたシンビジウムで白に近いピンクに淡いピンクの縁どりが気品と上品さを兼ね備えています。中輪~大輪
オレンジ系
ミルクティー:淡いオレンジのシンビジウムで部屋にあわせやすいかわいい花を咲かせます。中輪
黄系
ラブリームーン’クレッセント’:明るい黄色の花弁に印象的な赤いリップのシンビジウムです。中輪~大輪
緑系
夢たまごテーブルシンビ:リップもふくめて緑色で涼しげな印象のシンビジウムです。
その他の色
他にも紫やブラウン系や複色系など多種多様な色があります。
シンビジウムの年間栽培カレンダー
シンビジウムの育て方
シンビジウムの手入れの基本
- 11月~5月は室内の日光の当たる場所で世話をする(夜間温度は7℃以下はNG)
- 夜間の温度は13~15℃が生育適温
- 5月の連休後くらいから日当たりのよい野外で世話をする(遮光は必要)
- 夏場は野外で育てる(35~40%遮光下)
- 水やりは用土が乾いたらたっぷりとあげる
シンビジウムの用土
シンビジウムの植え込み材料は洋蘭用の培養土で、軽石やバークを主体になったものを使います。培養土はちょっと見るとがれきのような感じをうけますが、それは原種の生育地が山岳地帯のためです。カトレアやデンドロビウムのように、樹皮に着生しているのではないので水ごけでは根腐れします。
シンビジウムの鉢
植え込みの鉢はプラスティック製か化粧鉢が適しており、テラコッタのよう鉢は植え込みの用土が水はけがよいので乾きすぎてしまい水切れをおこします。また、シンビジウムの根はまっすぐに下に向かって伸びるので直径よりも高さのある蘭鉢とよばれるものがよいでしょう。
シンビジウムの手入れ
- 日光のあたる場所でそだてる(夏は野外で遮光)
- 冬は越冬のために室内で育てる(最低気温は7℃が生育適温の下限)
- 植え込みの用土は蘭用の培養土を使い、鉢は蘭鉢(プラスティックや化粧鉢)
- 水やりは用土が乾いてからたっぷりとあたえる
シンビジウムの開花時期
冬咲き系のシンビジウムの開花は11月下旬から4月上旬が開花時期となります。シンビジウムには夏の咲く「夏咲き系」や秋に咲く種類もありますが、いちばん一般的なのは冬咲き系でクリスマスや年末のころにたくさん出回ります。冬の鉢花として買い求める方も多いと思いますが、毎年花を咲かせるのには少しの手入れのコツがあります。
シンビジウムに花芽をつけるには?
- シンビジウムは日光を好みますので、通年日当たりのよい場所での世話が欠かせません。
- 肥料は生育期だけ液肥を週1回水代わりに、置き肥も併用で与えます。
- 冬の生育適温は夜間7℃以下にならない部屋での温度管理が必要。
- 生育期に葉芽がたくさん出るので芽かきという葉数を制限する作業をします。
まとめ
蘭栽培を始めるならまずシンビジウムが初心者向きといえます。水やりのタイミングも他のカトレアや胡蝶蘭やデンドロビウムより簡単なので、まずはお気に入りの一鉢をみつけて取り組んでみてはいかがですか?日光がふりそそぐ日当たりのよい室内で、冬の鉢花としてぜひ迎えてあげてくださいね。翌シーズン、越冬がうまくいって花芽が一本でも出たら成功と考えて気長に付き合うとよいと思います!
出典:BOTANICA