カクレミノの用途
カクレミノは、人とどのように関わってきたのでしょうか。庭木としてはもちろんですが、他にも用途があるようです。今度はカクレミノの用途をご紹介します。
用途①庭木として利用
北側の目隠しに使える
カクレミノは、庭木として人気があります。日陰にも適応し、風や大気汚染にも強いです。他の植物が植えられない家の北側や中庭、軒下や塀に近い場所にも植えられます。葉が上の方に茂り、落葉しないことから、高さのある窓の目隠しにも最適です。北道路の家の玄関周辺に植えることもよくあります。
和風はもちろん、洋風の庭にも合う
公園や学校、神社や茶庭にもよく植えられます。和風のイメージが強い樹木ですが、洋風や自然風の庭にも合う植物です。見た目の印象が軽やかなので、どのような庭にも合わせることができます。しかし、カクレミノの人気の秘密はそれだけではありません。以下では庭木以外の用途についてご紹介します。
用途②縁起を担ぐために利用
悪いことから身を隠す
カクレミノは縁起のいい樹木とされています。なぜなら、蓑は笠とともに雨風を防いでくれるものだからです。このことから蓑は、厄災から身を隠して守ってくれるという意味があります。また、隠れ蓑の持ち主である天狗も、悪いイメージばかりではありません。神格化されて信仰の対象になっている地域もあるのです。
蓑は吉祥文様にも見られる
それらのことから蓑(みの)は、日本の伝統的な吉祥文様に蓑笠文(みのがさもん)として取り入れられるほど大切にされてきました。吉祥文様とは、よい兆しやめでたい印を表現した模様のことです。次の画像は、吉祥文様の「宝づくし」です。右側に蓑の模様があります。そういう訳で「隠れ蓑」の名を持つカクレミノは、縁起をかついで植えられることがあるのです。
北や西に植えると開運に
風水的には、カクレミノは北側に植えるとよい木とされています。北に適度な大きさの常緑樹を植えると、北からの冷気を遮ることができるとされているのです。また、家相や地相の面からみると、カクレミノは南西や西や中心の吉相植物だそうです。どの方角も、日陰を好むカクレミノにぴったりといえます。
贈り物としても喜ばれる
開運につながるカクレミノは、店舗開店祝いのフラワーアレンジメントなどの贈り物としても喜ばれます。つやつやした葉は花を引き立てるのにぴったりですし、秋には実ものとして重宝されるのです。
用途③神事にも使われた
カクレミノの別名である「ミツノカシワ(三角柏)」は、神様にお供え物をする時や、豊明節会(とよのあかりのせちえ)で酒や飯を盛る木の葉を指しています。豊明節会は、新嘗祭(しんじょうさい・にいなめさい)や大嘗(だいじょうさい)の翌日に宮中で行われた儀式と宴会です。このような神事に、カクレミノの3分裂や5分裂の葉が使われました。
用途④塗料として利用した
黄漆という塗料になる
昔は、カクレミノから「黄漆(きうるし)」と呼ばれる塗料を採取していました。盛夏にカクレミノの樹皮を傷つけて白い樹液を取り、家具などに塗っていました。
幻の塗料「金漆」の原料でもあった
平安時代に途絶えた「金漆(ごんぜつ、きんしつ、こしあぶら)」という幻の塗料にも、カクレミノが関わったとされています。金漆の原料はカクレミノ、タカノツメ、コシアブラ(いずれもウコギ科)から採取されたことがわかっています。黄金色に輝いたと言われる金漆を再現しようという研究が今も続けられています。
用途⑤お茶やお香、健康食品として利用
韓国では健康食品として人気
カクレミノの有効成分も注目されています。カクレミノの近縁種であるチョウセンカクレミノは、秦の始皇帝が「不老草」として大切にした植物です。チョウセンカクレミノは心を穏やかにし、自然治癒力を向上させるといわれています。韓国ではヒーリング効果を期待してお茶やお香を楽しむ他、健康食品としても人気を集めているのです。日本でもヨガや瞑想に取り入れることがあります。
有用性の研究が期待される
学名のDendropanaxのPanaxがギリシャ語で「すべてを癒す」の意味とお伝えしましたが、これは伊達ではありませんでした。日本のカクレミノでも同様の効果が期待できるとして、研究がすすめられています。また、カクレミノの成分が水虫菌に対して有効だとする研究結果もあります。カクレミノがもっと大きく扱われる日が来るかもしれません。
まとめ
カクレミノは、日陰や潮風や大気汚染に強く、庭木として育てやすい人気の樹木です、成長とともに葉の形が変化し、古い葉は黄変するという面白さもあります。花や実には華やかさはないものの風情を感じさせ、日本人好みかもしれません。カクレミノの有効成分については、韓国で既に注目を集めており、日本でも研究が進められています。縁起もいいカクレミノをぜひお庭に取り入れてみてはいかがでしょうか。
出典:筆者撮影