クサギは何の仲間?
クサギをインターネットで調べると、シソ科と書いてあったり、クマツヅラ科と書いてあったりします。これは一体どういうことなのでしょうか。クサギの分類の謎に迫ります。
クマツヅラ科からシソ科に移された
クサギは従来クマツヅラ科だった
クサギはシソ科クサギ属の植物です。しかし従来はクマツヅラ科に分類されていました。ムラサキシキブやダンギク、ハマゴウなどもクマツヅラ科からシソ科に移されています。もともとこの2つの科には似たところがありました。その中で液果(えきか:漿果ともいい、水分が多く果肉が多い果実のこと)や蒴果(さくか:乾燥して裂けて種子を飛ばす果実)を持つものをクマツヅラ科に分類していたのです。
APG体系でクサギはシソ科に
一方、痩果(そうか:単純で乾いた果実)になるものをシソ科とされていました。なるほど、クサギの実は果肉があるように見えますから、クマツヅラ科とされたのですね。しかし、DNA解析による分子系統学に基づいたAPG体系では、クサギはシソ科に移されたのです。クサギやムラサキシキブの実は液果の原始形質なのでしょう。シソ科の特徴としては他に、茎や葉に強い匂いがあることも挙げられます。
クサギの仲間の植物
クサギの仲間には観賞用になるものもある
シソ科クサギ属の植物の中には、観賞用に栽培されるものもあります。東南アジア原産の常緑低木であるヒギリ、アフリカ原産の常緑つる性木本であるゲンペイクサギ、中国原産の落葉低木であるボタンクサギなどです。ボタンクサギもクサギ同様に繁殖力が強く、野生状態でも生育することがあります。
匂いのために「クサギ」の名がつく植物も
また、植物の中には匂いのために、「クサギ」の名前がついたものがあります。ミカン科のコクサギ、シソ科ハマクサギ属で海岸沿いに生えるハマクサギなどです。
クサギの利用
北海道から九州・沖縄まで広く分布し、古くから私たちの身近にあるクサギですが、お神酒(みき)以外に役に立つのでしょうか。大きくなる樹木ではないので、木材としてはあまり利用されません。下駄の材料にしたり、沖縄ではイカの疑似餌の材料とする程度のようです。クサギの、その他の利用方法をまとめました。
クサギは庭木になる?
日本では庭木としてあまり使われない
樹形が暴れるためか、日本では庭木としてはあまり使われません。しかし暑さにも寒さにも強く、目立った病害虫もないため、栽培は容易です。砂防地の安定化のために緑化樹木としても用いられます。種子以外に根からの不定芽で勝手に増えるので、逆に迷惑がられることもあるほどです。しかし、満開の花は見ごたえがあり芳香もあることから、ヨーロッパでは庭木として栽培されます。
クサギは食用になる?
クサギは臭い匂いとあくを抜いて食用に
クサギの若葉は、山菜として食用になります。「臭いのに食べるの?」と思う方もいるかもしれません。しかし、摘んでしばらく置いたり加熱したりすると、不思議なほどに臭い匂いが消えてしまうそうです。動画ではあく抜きをしてから佃煮にしていますが、お茶やてんぷら、油炒めや山菜ごはんにして食べるのも美味しいといいます。乾燥して保存食にもされてきました。味は少し苦みがあるそうです。
クサギには薬効がある?
殺菌効果や利尿作用がある
クサギには薬効もあるといいます。殺菌効果があるので、腫れ物や皮膚病に葉の汁を塗っていたのです。また、クサギを煎じた汁には利尿作用があるので、民間療法で下痢やリウマチ、高血圧の改善を期待して服用されてきました。クサギの花言葉に「治療」とあるのは、クサギの薬効が重要視されてきたからなのかもしれません。
染料として利用
クサギの実は青系の染料として貴重
クサギの実は草木染めを趣味とする人たちに大切にされています。草木染めで青系の色が出るのは、藍とクサギだけなのです。クサギの実は古くから「常山の実」と呼ばれて青色染料として利用されてきました。
青の色素はトリコトミン
特に、クサギの実を藁の灰汁で煮出した液は浅青色(はなだ色)の原料になります。実の青色色素は、名古屋大学の佐々木教祐らの研究で構造が解明され、トリコトミンと命名されました。赤いがくの部分も染料として利用され、鉄媒染で渋い灰色に染まるそうです。
まとめ
クサギは北海道から九州・沖縄まで広く分布し、古くから日本人にとって大切な樹木でした。茎や葉の匂いが臭いといわれますが、個人差があり気にならない人もいます。花も実も美しく特徴的です。若葉は食用にもなり、実は草木染めの染料として人気があります。道端でクサギを見かけたら、匂いを嗅いだり利用したりしてみましょう。
- 1
- 2
出典:写真AC