ムラサキハナナ(紫花菜)とは
厳しい寒さが和らぐ3月ごろ、空き地や畑のそばでムラサキハナナ(紫花菜)が群生して咲いているのがよく見かけられます。その名の通り、紫色で菜の花のような花を咲かせる植物です。よく間違われる花大根(ハナダイコン)とは葉の形状が異なり、細い葉をもつ花大根に対して、ムラサキハナナは卵形の葉が茎を抱くように展開しているのが特徴です。
ムラサキハナナの基本情報
科/属 | アブラナ科オオアラセイトウ属 |
別名 | オオアラセイトウ他 |
分布 | 日本全土 |
花期 | 3月~5月 |
形態 | 越年草 |
原産国 | 中国 |
ムラサキハナナ(紫花菜)は別名が多い
日本では、ムラサキハナナ(紫花菜)やオオアラセイトウ(大紫羅欄花)の名が一般的ですが、ほかにも多くの呼び名があります。どれもムラサキハナナを指す言葉であり、多くの人が春一面に咲く、紫色の花の美しさに魅せられたのだと想像してしまいますね。さっそくムラサキハナナの呼び名を由来とともに紹介します。
ムラサキハナナ(紫花菜)
日本で販売する種子や苗は、ムラサキハナナの流通名が一般的です。ハナナ(花菜)とは、菜の花(アブラナ科アブラナ属)を指す言葉として知られています。黄色い菜の花と違い、紫色で菜の花に似た花を咲かせるアブラナ科の植物のため、紫花菜と呼ばれるようになったのでしょう。
オオアラセイトウ(大紫羅欄花)
アラセイトウとはストックの和名であり、漢字では紫羅欄花と書きます。細かい毛におおわれ厚みのあるストックの葉をポルトガル語で毛織物を指すラセイタ(羅背板)にたとえたものだといわれています。ストックよりも背丈が大きくなることからオオアラセイトウと呼ばれ、ストックは別名コアラセイトウともいいます。
ショカツサイ(諸葛菜)
中国では三国時代の軍師、諸葛亮孔明が軍隊を率いたときに、ムラサキハナナの柔らかい新芽を野菜として採取したことから諸葛菜と呼ばれるようになりました。日本へは江戸前期の辞書で、諸葛菜とは蕪(またはコールラビのようなもの)のことを指すとしており、孔明が駐留時に蕪を植えて兵糧にしたという伝説とともに、諸葛菜の名が伝わっています。
ニガツラン(二月蘭)
旧暦の2か月目に紫色の花を咲かせることから、中国では二月蘭という名で古くから親しまれています。多くの人が、観賞するために大学のキャンパスや植物園など、野生の環境で一面に咲きほこる美しい紫色の風景を写真に収めているのではないでしょうか。山菜として食べ方のバリエーションも多く、心疾患の薬草としても知られています。
シキンソウ(紫金草)
紫金草は、中国南京市の紫金山に由来しています。星薬学専門学校(現在の星薬科大学)の初代校長である山口誠太郎先生が南京市で軍務についたときに、現地に咲いていた花の種を持ち帰り、戦争で犠牲になった人への鎮魂を込めて、紫金草の名で日本で広めたとされています。このことから「平和の花」「ピースフラワー」としても知られ、星薬科大学の校花としても紹介されています。
出典:筆者撮影