タチアオイ(立葵)とは
タチアオイ(立葵)は、梅雨時から夏にかけて赤やピンクなど色とりどりの花を咲かせる植物です。背の高いまっすぐに伸びた茎とひらひらとした薄い花びらの大きな花が美しく、日本では観賞用や薬として昔から親しまれてきました。
基本情報
学名 | Althaea rosea(アルセアローズ) |
英名 | Holly hock(ホリホック) |
和名 | 立葵(タチアオイ) |
属名 | アオイ科ビロードアオイ属 |
分布 | 地中海沿岸西部地域からアジア |
形態 | 多年草・二年草・一年草 |
草丈 | 60~200cm |
花の色 | 白・赤・ピンク・オレンジ・黄・黒・紫・褐色 |
ボタニ子
開花時期
タチアオイの開花時期は6月~8月です。花は花穂の下のほうから順々に咲いていくため、長い期間で開花を楽しめます。開花時期には日本各地で色とりどりのタチアオイが観賞可能です。またタチアオイの有名な観賞スポットには、東京都中央区の鉄砲通り沿いの植栽スペースや千葉市花の美術館の前脇庭などがあります。
タチアオイの特徴
特徴①存在感のある咲き姿
タチアオイは茎を高くまっすぐ伸ばし、花茎の下から上に向かって順々に花を咲かせていくという特徴を持っています。花は一重咲きと八重咲きがあり、アサガオの花のように薄い花びらで、ひらひらとした美しい形をしています。背が高いこともあり、存在感が抜群です。また、葉の縁がカエデの葉っぱのように5~7裂で、表面は星状に生えた細かい毛で覆われています。
特徴②薬草とされていた
タチアオイは、平安時代ごろに薬草として中国から日本へと渡ってきたとされています。タチアオイの花や根を乾燥した蜀葵根(しょっきこん)という胃腸薬や利尿剤として利用され、現在も漢方薬として使われています。また西洋でも昔から咳止めや潰瘍、傷などの炎症を抑える効果の期待できる薬として利用されたり、花びらを乾燥させてハーブティーとして用いられたりしていました。
ボタニ子
ハーブティーにはリラックス効果や美肌効果、二日酔いやむくみ改善の効果があるとされているの。今でも飲まれているんだよ。
タチアオイの花言葉
タチアオイには、姿の美しさや強い生命力に由来した明るい意味の花言葉が複数付けられています。真っすぐ伸びるタチアオイの様子から、ポジティブな花言葉がつけたれたことに納得できるでしょう。
気高く威厳に満ちた美
雨が多い季節に花を咲かせるタチアオイは、降雨に負けることなくまっすぐ茎を伸ばして凛と立ち、美しい花を咲かせます。この姿が気高く見えることから「気高く威厳に満ちた美」の花言葉が付けられました。高貴な美しさから、女の子の名前に「葵」の文字を入れるケースも多くあります。
豊かな実り
花が終わった後にたくさんの実をつけることから「豊かな実り」という花言葉も付けられました。タチアオイの1つの実の中には、20~40個もの種が入っています。生命力が強く、繁殖しやすいという性質からもタチアオイにぴったりな花言葉です。
大望
タチアオイの「アオイ」という名前の語源は「仰日(アフイ)」という言葉だといわれています。この言葉には「お日様を仰ぐ」という意味があります。アオイの葉っぱが太陽に向かって生えることから、この名前で呼ばれるようになりました。葉っぱの習性や空に向かってまっすぐ成長していく姿から、希望を持って進んでいく「大望」という花言葉が付けられたのです。
タチアオイにまつわる名前の由来
タチアオイは中国から日本に入ってきた外来種です。昔から生活にも密着した植物で、いろいろな呼び方をされて親しまれてきました。また、タチアオイは西洋でも古くからなじみのある植物で、西洋独自の呼び名もあります。「和名」「学名」「英名」「別名」など、タチアオイの名前の由来を知っていると誰かに話したくなるかもしれません。
和名「立葵(タチアオイ)」の由来
「立葵(タチアオイ)」という名前は、日本の固有種であるフタバアオイに花の形が似ていて、まっすぐ立って伸びる姿から付けられたとされています。タチアオイと呼ばれるようになったのは江戸時代以降で、それまでは中国からきた葵という意味の「唐葵(カラアオイ)」の名前で呼ばれていました。
別名「梅雨葵」の由来
タチアオイは、梅雨入りの時期に花が咲き始めて梅雨が去るころに花の時期が終わることから、「梅雨葵(つゆあおい)」とも呼ばれています。タチアオイは下から順々に花を咲かせていくため、江戸時代ではタチアオイの花が咲き始めたら「梅雨入り」、咲き終わりを「梅雨明け」の目安にしていました。
ボタニ子
季節感のある素敵な別名だね!
別名「コケコッコの花」の由来
タチアオイの花は、北海道の一部の地域で「コケコッコの花」や青森県の一部の地域で「コケラッコの花」などと呼ばれています。タチアオイの花弁の根元部分がベタベタしてくっつきやすいため、花びらをニワトリの鶏冠に見立てておでこや顔に付けて遊ぶことから名付けられました。
学名「アルテアローズ」の由来
タチアオイの学名である「アルテアローズ(Althaea rose)」は、ギリシャ語で「治療」という意味の「アルテア(Althaea)」とタチアオイの花がバラの花に似た形をしていることが由来です。学名が示すとおり、タチアオイは古代から薬草として利用されてきた植物で、最古のハーブの一種ともいわれています。
英名「ホリホック」の由来
タチアオイは、英名を「Hollyhock(ホリホック)」といいます。12世紀ごろに、タチアオイが十字軍によってキリスト教の聖地シリアからヨーロッパに持ち帰られたことと、花の形がゼニアオイに似ていたことが由来とされています。ゼニアオイは古代ヨーロッパで使われていたアングロ・サクソン語で「hock」と呼ばれており、聖地を意味する「holly」と合わせて「Hollyhock(ホリホック」と名付けられました。
タチアオイの種類
近年、タチアオイは園芸用に品種改良が進められ、豊富な花の色や一重咲きや八重咲きなどさまざまな種類のものがあります。品種改良が進んだことによって、ガーデニングで人気を集めています。
サマーカーニバル
サマーカーニバルは、八重咲きの花を咲かせる種類のタチアオイです。草丈は約150cm、花径は約12cmとほかのタチアオイより大きくて見ごたえがあります。花数が多い点も特徴で、赤・ピンク・黄色・白などさまざまな色の花を咲かせるため、園芸で人気の高いタチアオイです。
ブラックホリホック
ブラックホリホックはクロタチアオイとも呼ばれ、その名のとおり黒に近い黒紫色の花を咲かせるのが特徴です。一重咲きの多年草で、草丈が150~200cmにまで伸びます。開花時期が5月~7月で、ほかの種類のタチアオイより少し早めです。花びらには「鎮痛作用」「鎮痙作用」「抗酸化作用」があるとされ、ハーブティーとして使われます。
ボタニ子
ブラックホリホックのハーブティーは黒いけれど、レモンの果汁を数滴入れるとピンク色に変わるよ!目にも楽しいハーブティーなんだね。
マジョレット
マジョレットは、草丈の低い種類のタチアオイです。草丈は60~70cmで淡い色の八重咲きの花を咲かせます。開花時期は7月~9月ごろで、ほかのタチアオイに比べて少し遅めな点が特徴です。
タチアオイの美しさに触れてみよう!
梅雨のどんよりと暗い日が多い季節に色鮮やかな花を咲かせるタチアオイは、その姿から前向きな花言葉が多く付けられています。より美しい花が咲くように品種改良が行われたのも頷けるでしょう。タチアオイの花は美しさだけでなく素敵な花言葉がある点からも、栽培するとポジティブな力をもらえるかもしれませんね。
原産地ははっきりしていないんだ。トルコ原産種と東ヨーロッパ原産種との雑種だといわれているよ。