昆布茶(こんぶちゃ)の概要
昆布茶とは、乾燥させた昆布を細かく刻む、または粉末にしたものに、湯を注いで作る飲み物のことです。古くから親しまれてきた飲み物で、江戸時代には風味茶の1種として飲まれていました。現在では塩やあられ、玉露などが配合された粉末昆布茶が一般に流通しています。
インスタント飲料の元祖
粉末昆布茶が生まれたのは、1918(大正7)年のことです。食品メーカー「玉露園」の創業者・藤田馬三が開発しました。生存競争が激しいお茶の世界で生き残るには、他店にはない新しい茶の味が必要だと考えた藤田氏は、昆布茶の味を工夫し、もっと手軽に飲めるようにすることを思いつきます。原材料の昆布の吟味や、美味しくするための調味料の配合など、研究に研究を重ねた結果、粉末昆布茶が生まれました。
粉末昆布茶は、インスタントコーヒーよりもずっと早くに市販されたんだ。だから「インスタント飲料の元祖」ともいわれているよ。
粉末昆布茶はその後も改良が進められ、現在も玉露園の商品として活躍しています。
現在は調味料として人気
現在は嗜好品の多種多様化もあって、昆布茶の飲料としての需要は減少傾向にあります。ところが、昆布茶の全体的な販売量は伸びています。これは昆布茶には料理の調味料としての需要もあるのが理由です。昆布茶は、昆布を刻んだり粉末にしたりして、扱いやすくした品物といえます。昆布といえば、出汁(だし)の素となるほどの旨味成分のかたまりです。そのため昆布茶は、昔から旨味調味料として利用されてきました。
惣菜店やスパゲティー専門店などで、料理の隠し味として昆布茶が使われていたんだ。最近ではコンビニ弁当にも使われているよ。
昆布茶の調味料需要は、以前は業務用が多かったのですが、近年では家庭用需要も増えています。そのため販売量が伸びているのです。
「玉露園」や「不二食品」などの昆布茶メーカーも、公式サイトで昆布茶を使った料理のレシピをたくさん公開しているよ。
昆布茶の種類
梅昆布茶(うめこんぶちゃ)
乾燥させた梅を配合した昆布茶を「梅昆布茶」といいます。梅の酸味と昆布の旨味の組み合わせが人気です。また、951(天暦5)年に疫病が流行したことを憐れんだ空也上人が、青竹でたてた茶に、梅干しと結び昆布を入れたものを振る舞ったという伝説があります。このため無病息災を願い、正月や大みそかに茶を飲む「福茶」という行事で、正月に梅昆布茶を飲む習慣が京都に伝わっています。
空也上人は平安時代中期の僧侶で、後世で「浄土宗の先駆者」と評されたほどの人物なんだ。多くの社会事業を行うなど、多大な業績を残しているよ。
信頼できる史料が少ないため、謎が多い人物ですが、数多くの伝説が残されています。非常に強い影響力を持った人物であったのは確かでしょう。
化学調味料不使用昆布茶
名前が示すように、化学調味料を一切使用していない昆布茶のことをいいます。一般的な昆布茶には、美味しくするための旨味調味料が添加されていることが多いです。しかし近年は美容や健康への意識の高まりから、塩分や化学調味料の過剰摂取を抑制する傾向が強まっています。このため、化学調味料不使用の昆布茶が販売されるようになりました。
kombucha(コンブチャ)
名前は似ていますが、飲み物としては全然違います。20世紀初頭のロシアで流行した、微炭酸の発酵飲料です。砂糖を加えた紅茶、または緑茶に菌株を漬け込んで発酵させて作ります。じつは昔、日本で流行した「紅茶キノコ」こそが、このコンブチャという飲み物です。近年、海外セレブの間で人気が上昇したことをきっかけに、日本でも次第に人気が出てきています。
欧米で「コンブチャ」というと、この飲み物を指していることが多いんだ。間違えないように注意してね。
次のページでは、自家製昆布茶の作り方をご紹介します。
インスタント飲料の代表格・フリーズドライのインスタントコーヒーが市販されたのは、1938(昭和13)年です。