土用干しをする理由
日本にはさまざまな漬物がありますが、一度漬けたものを太陽の下で干す漬物はなかなかありません。
ボタニ子
ボタニ子
また、干すことでどのような効果が得られるのでしょうか。
理由①天日による強力な殺菌効果
まず、干すことで得られる一番の大きな効果は、太陽光による殺菌効果です。太陽光に含まれる紫外線には微生物のDNAに作用し、その微生物を殺菌または不活化させる力があります。7月20日頃といえば、曇り空が晴れてきて、ちょうど紫外線が強くなる時期です。この効果により、梅干しは腐ることなく、非常に長期間保存できるようになります。
理由②梅干しの余分な水分をとばす
天日干しには、梅干しの水分を空気中にとばす役割もあります。水分は食品が傷む原因になりますので、これを天日干しで飛ばすわけです。
理由③やわらかくなる
天気がよければ、梅干しを夜も外に置いたままにして、夜間におりる露を利用する干し方もあります。夜は室内に取り込む方法もありますが、このように夜露にあて、翌日また暑い太陽の下で干すということを繰り返すことで、梅干しがやわらかくなります。
「土用」の意味は?
土用と聞くと、「土用の丑の日」でうなぎを食べる日を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
ボタニ子
夏の始まりによく耳にする言葉ですが、「土用」とはどのような意味なのでしょうか。
土用の意味・定義
土用は1年に4回
「土用」というのは、日本に伝わる季節を表す言葉のひとつで、実は1年に4回あります。有名な「土用の丑の日」は、夏の土用のことです。他に、春、秋、冬のそれぞれの土用があります。
土用は18日間のこと
日本には、立春、立夏、立秋、立冬という二十四節気があり、暦の上ではこの日から新しい季節がスタートします。土用というのはこの4つの日の前の日から数えた18日間のことを指します。つまり、夏の土用は8月8日頃にある立秋の18日前にあたる、7月20日頃に始まり、立秋の前日までとなります。
陰陽五行説
ボタニ子
なぜこのような、18日間という土用の期間があるのでしょうか。
それは、中国の陰陽五行説に由来しています。陰陽五行説では、万物の根源を「木火土金水」と考えています。この5つを四季に当てはめると、春は草木が芽吹くので「木」、夏は暑いので「火」、秋は収穫の時期なので「金」、冬は寒いので「水」となります。しかし「土」がありません。そこで、それぞれの四季が始まる前の約18日間、1年で合計約72日間を「土」の時期にしたと言われています。
土用は季節の変わり目
土用は新しい季節の準備期間
土用は、次の季節がスタートする前の18日間となり、新しい季節の準備をする期間にあたります。また、季節と季節の変わり目ということから、天候が不安定だったり、気温や湿度の変化から体調を崩しやすい時期でもあります。
土用には土いじりをすべきでないという言い伝えも
昔から、土用には土いじりをしてはいけないと言われてきました。この言い伝えには、畑や田んぼなどの体力を使う仕事をこの時期に行うと、体調を崩しやすいという教えが含まれています。つまり土用は、体調管理に気をつけながら、新しい季節を迎えるための準備をしましょうという期間になります。
「土用干し」は他にもある
田んぼにも土用干しがある
「土用干し」という名は、梅干しを夏の土用に合わせて干すことに由来して呼びますが、実は田んぼでも「土用干し」があります。初夏に田植えをした田んぼでは、土用の時期に水を抜く場合があります。水がなくなった田んぼの土は乾燥し、ひびが入ります。しかし、この土用干しをすることで、稲はよりしっかりと根を張ります。
本や衣類も土用干しすることで虫に食われにくく?
そして強く育ち、秋には多くの収穫が期待できると言われています。また、本や衣類もこの時期に陰干しすることで、虫に食われにくくなると伝えられています。
梅干しの上手な干し方
ボタ爺
それでは、上手な土用干しの方法をご紹介していくぞ
まず、梅を保存容器から取り出し、梅どうしがくっつきすぎないように、間隔を空けてザルなどに並べます。土用干しは、日当たりがよく、風の通りもよい場所が適しています。干す際に、ザルなどを地面やコンクリートの上に直接置くのではなく、ブロックなどで高床にし、空間をつくることで風の通りがよくなります。温度や湿度、梅の大きさにより差はありますが、梅が乾いてきたら、ていねいに裏返していきます。
梅干しを干す時期は?
梅を干し始めるのは、夏土用の始まる7月20日頃です。この頃になると梅雨があけ、紫外線も強くなるので、梅を干すのに最適な時期です。しかし、なかなか梅雨が空けなかったり、天気が良くない年もあるでしょう。そのような場合は8月に入ってからでも大丈夫です。天気予報を確認して、天気の良い日が続くようになってから干しましょう。
適切な日数は?
「三日三晩の土用干し」という言葉があるように、目安は3日間です。しかし、気温が上がらなかったり、天気がよくなかったりした場合は、3日間ではなく、4、5日干しても大丈夫です。日数も大事ですが、干すことで梅干しの表面がしわしわになり、乾いている状態になることが大切です。梅の乾燥具合を確認しながら干しましょう。
ベランダでの干し方
昔は庭にござを敷いて、たくさんの梅を干したものですが、現代の住宅事情では難しいかもしれません。アパートなど、庭がない場合もあるでしょう。そのような時は、ベランダで干すことも可能です。盆ザルに数か所ひもを通して、ベランダの物干しざおにつるし、その上に梅干しを並べることで土用干しができます。梅干しを干していると、ザルの下から梅酢が落ちてくることがあるので、下に新聞紙を敷くなどして対処しましょう。
干物かごやザルで代用した干し方
梅干しを干すための盆ザルがなく、干す梅の量が少ない場合は、普段使いの大きめのザルで代用できます。梅どうしがくっつかないように並べて干しましょう。また、ザルのほかに、干物カゴを使うと便利です。干物カゴはチャックが付いているので、外からの虫や風にも安心です。また、梅が下に落ちないサイズであれば、網でも代用可能です。
梅干しを室内に取り込むタイミングは?
夜は室内に取り込む場合は、気温が下がり切る前が梅を取り込むタイミングです。また、雨にあてるとカビが発生しやすくなります。雨にぬらさないように、降りそうな時は室内に入れておきましょう。梅がしわしわになったら、十分に干しあがったというサインです。干しすぎると硬くなってしまいます。梅の表面をみて、ベストタイミングで取り込みましょう。
梅酢の干し方
梅酢は干さないというやり方もありますが、干す場合は土用干しの最後の1日に干します。保存容器のまま、よく日が当たる場所に置いておきましょう。こうすることで、太陽エネルギーにより梅酢も殺菌されます。干した梅を再び梅酢に戻す場合は、梅酢を干した日の夕方に梅を戻し入れましょう。梅を戻さない場合は、戻した場合とは食感も塩分も異なる、写真のような梅干しのできあがりです。
梅干し作りでは、なぜ一度漬けた梅を天日干しするのでしょうか。