桜の品種:早咲きの桜
桜の品種とは、原種・野生種となる桜を自然交配させて生まれた品種と、人工交配させることで生み出された園芸品種の桜のことです。まずは桜の中でも早咲きとされている品種と、八重桜の中でも早咲きの品種を8種ご紹介します。
桜の品種①ソメイヨシノ(染井吉野)
ソメイヨシノ(染井吉野)はエドヒガンとオオシマザクラを人工交配させて生まれた園芸品種です。淡いピンク色から白に近い花を咲かせる一重桜で、北海道南部から九州・四国地方に生息しています。ソメイヨシノの名前の由来は、江戸時代に染井村の植木職人が生み出し、昔から桜の名所である吉野山からきています。
開花時期は3月上旬〜4月下旬にかけて
花の特徴
- 花の直径は約3〜4cmでやや大きい
- 花びらは5枚、先端に切れ込みがある
- 雌しべ・雄しべは白や黄色
- 花は咲き始めの淡いピンク色から徐々に白に変化する
葉っぱの特徴
- 葉っぱの縁には細かく鋭い鋸歯(きょし)がある
- 葉っぱは花が満開に近づいた頃に生えてくる
樹の特徴
- 樹高は最大約15mでやや高木
- 樹皮の色は暗い灰色から茶褐色で、横筋が入っている
桜の品種②カワズザクラ(河津桜)
カワズザクラ(河津桜)は、オオシマザクラとヒカンザクラの自然交配から生まれた、早咲きで有名な品種です。濃いピンク色や淡いピンク色の花を咲かせる一重桜で、主に静岡の河津町に生息していますが、太平洋沿岸部でも見ることができます。カワズザクラは昔、原木が静岡県の河津川沿いで見つかったことから「河津桜」と名前がつけられました。
開花時期は1月下旬〜3月上旬にかけて
花の特徴
- 花の直径は約2〜3cm
- 花びらは5枚で丸っぽく、先端に切れ込みがある
- 雌しべ・雄しべは濃いピンク色や白
- 萼(がく)や萼筒(がくとう)も濃いピンク色が多い
- 花は咲き初めの濃いピンク色からから徐々に色あせてくる
- 花の咲き初めから満開になるまでの期間が長い
葉っぱの特徴
- 葉っぱの縁には大小の鋸歯が交互にあり、鋸歯の先端が少し曲がっている
樹の特徴
- 樹高は最大約8mくらいで低木
- 樹皮は赤みがかった暗い灰色や茶褐色で、横筋が入っている
桜の品種③フユザクラ(冬桜)
フユザクラ(冬桜)はオオシマザクラとマメザクラを人工交配させて生まれた、年に2度の開花時期がある早咲きの園芸品種です。淡いピンク色から白に近い花を咲かせる一重桜で、主に関東地方に生息しています。フユザクラは寒い冬にも咲くことから「冬桜」と名前がつけられ、別名「寒桜」とも呼ばれています。
開花時期は3月中旬〜4月上旬・10月下旬〜12月下旬にかけて
花の特徴
- 花の直径は約2〜3cm
- 花びらは5枚で少し細く、先端に切れ込みがある
- 雌しべ・雄しべは白やピンク色で少し長い
- 花柄(かへい)が短い
- 花は咲き始めの淡いピンク色から徐々に白へと変化する
- 地面に近い枝の花から開花していく
葉っぱの特徴
- 葉っぱは新芽は赤茶色から徐々に緑色へと変化する
樹の特徴
- 樹高は最大約10mくらいでやや低木
- 樹皮は暗い茶色で少し光沢があり、横筋が入っている
フユザクラは1年に2度の開花時期があることから「四季桜」や「不断桜」としても有名です。2度の開花時期のうち、見頃は3月中旬〜4月上旬にかけてです。
桜の品種④フダンザクラ(不断桜)
フダンザクラ(不断桜)はヤマザクラとオオシマザクラの自然交配から生まれた品種です。白い花を咲かせる一重桜で、主に九州地方に生息しています。フダンザクラの名前の由来は、秋から春まで花が絶え間なく咲き続けることからきており、この開花期間の長さは桜の中でも珍しいと言われています。
開花時期は10月中旬〜4月上旬にかけて
花の特徴
- 花の直径は約2.5〜3cm
- 花びらは5枚で、先端に切れ込みがある
- 雌しべ・雄しべは濃いピンク色や白
- 花柄はやや短い
葉っぱの特徴
- 葉っぱの新芽は赤茶色で徐々に緑色へと変化する
- 花の開花と同時期くらいに葉っぱも生えてくる
樹の特徴
- 樹高は最大約7mくらいで低木
- 樹皮は赤みがかった暗い灰色や茶褐色で、横筋が入っている
開花期間のうち、見頃は3月中旬〜4月上旬にかけてです。
桜の品種⑤コヒガン(小彼岸)
コヒガン(小彼岸)はエドヒガンとマメザクラの自然交配から生まれた品種です。淡いピンク色から白に近い小さい花を咲かせる一重桜で、主に関東地方に生息しています。コヒガンは「ヒガンザクラ(彼岸桜)」の別名とされており、花や葉っぱが小さいことから「小彼岸」という名前がつけられました。
開花時期は3月中旬〜4月中旬にかけて
花の特徴
- 花の直径は約1.5〜2.5cmで小さい
- 花びらは5枚で、先端に切れ込みがある
- 雌しべ・雄しべは白や淡いピンク色
- 萼筒(がくとう)が丸く膨らんでいる
- 花の開花期間は短く、咲き始めから1週間くらいで散り始める
葉っぱの特徴
- 葉っぱは花の開花後に生えてくる
樹の特徴
- 樹高は最大で約5mくらいで低木
- 樹皮は暗い灰色や茶色で、縦に割れ目が入っている
桜の品種⑥トウカイザクラ(東海桜)
トウカイザクラ(東海桜)は、シナミザクラとコヒガン(彼岸桜)を人工交配させて生まれた園芸品種です。淡いピンク色の小さい花を咲かせる一重桜で、東北から九州地方に生息しています。トウカイザクラは「啓翁桜(ケイオウザクラ)」の別名とされており、愛知や静岡など東海地方から産出されたものは「東海桜」と呼ばれています。
開花時期は3月中旬〜4中旬にかけて
花の特徴
- 花の直径約1.5〜3cmでやや小さい
- 花びらは5枚で、先端に切れ込みがある
- 雌しべ・雄しべは白や淡いピンクで、雌しべが長い
- 花にはほのかに香りがある
葉っぱの特徴
- 葉っぱは花の開花後に生えてくる
樹の特徴
- 樹高は最大約5mくらいで低木
- 樹皮は暗い茶色や茶褐色で少し光沢があり、横筋が入っている
自生しているトウカイザクラは3月頃に開花が始まり、切り花は12月初め頃から開花させることもできます。
次のページでは桜の品種として、シロタエ(白妙)・ショウゲツザクラ(松月桜)・ヤエベニシダレ(八重紅枝垂)・ナデンザクラ(南殿桜)・ギョイコウ(御衣黄)・ウコン(鬱金)をご紹介します。
ソメイヨシノは桜の開花宣言の標準木としても有名です。