園芸種の種類と見分け方
園芸種は1964年に英国王立園芸協会で提唱されて9つの品種に分類されています。
- 1群 アジアティック・ハイブリッド
- 2群 マルタゴン・ハイブリッド
- 3群 キャンディダム・ハイブリッド(マドンナリリー・ハイブリッド)
- 4群 アメリカン・ハイブリッド
- 5群 ロンギフローラム・ハイブリッド
- 6群 トランペット・ハイブリッド(オーレリアン・トランペット・ハイブリッド)
- 7群 オリエンタル・ハイブリッド
- 8群 そのほかの交配品種(下位分類)
- 9群 上記以外の野生種・変種など
今回は、それらの中でも市場でよく見かける主なものとして、5つの代表的な品種をご紹介します。
種類 | 特徴 | 品種例 |
アジアティック・ハイブリッド | 香りが無い。赤・黄・橙など花色が豊富。 | コネチカットキング |
オリエンタル・ハイブリッド | オリエンタルリリー。大輪。強い芳香あり。 | カサブランカ |
トランペット・ハイブリッド | 筒状や花弁が反った星形の花。 | ゴールデンスプレンダー |
ロンギフローラム・ハイブリッド | 横向きの花。芳香あり。 | スノークィーン |
マルタゴン・ハイブリッド | 小さい花が下向きに咲く。茎が太い。球根に上根がない。 | マルタゴンリリー |
コネチカットキング【アジアティック・ハイブリッド】
アジアティック・ハイブリッドは、エゾスカシユリなどの日本の自生種とアジア極東に自生するユリをもとに作られた交配種です。丈夫で育てやすく、赤・黄・橙の色素であるカロチノイドに着目して交配されました。花はスカシユリ亜族の系統から上向きに咲きます。
コネチカットキングは鮮やかな黄色でインパクトのある強健種です。園芸種の利点は野生種の病気などにかかりやすい弱点を克服したところといえるでしょう。
アジアティック・ハイブリッドの見分け方
- 花色が豊富で花びらが厚く、無香なこと
カサブランカ【オリエンタル・ハイブリッド】
オリエンタル・ハイブリッドは、オリエンタルリリーとも呼ばれ、日本に自生する原種のユリを中心として交雑された園芸品種です。病気にやや弱く、反日蔭での栽培が望ましいです。花色は白からピンク系のものが多く、強い芳香を持ち、大輪の花を咲かせます。
純白で大輪のオリエンタルリリー・カサブランカはあまりにも有名ですね。カサブランカは今やユリの代名詞ともいわれるほどの人気ぶりです。
オリエンタル・ハイブリッドの見分け方
- 強い芳香と大輪の花
- 花形は漏斗状や、雌しべ、雄しべとも花から飛び出したような球状になること
ゴールデンスプレンダー【トランペット・ハイブリッド】
トランペット・ハイブリッドはオーレリアン・ハイブリッドとも呼ばれ、中国原産のユリを中心に交配されました。その名のとおり、花形はトランペットのような形をしています。丈夫で栽培しやすい品種です。
トランペット・ハイブリッドの見分け方
- 筒状の花形
- もしくは花弁が反った星形の花を咲かせること
スノークィーン【ロンギフローラム・ハイブリッド】
ロンギフローラム・ハイブリッドは、日本のテッポウユリと中国のタカサゴユリなどの交雑種で、新テッポウユリとも呼ばれます。
ロンギフローラム・ハイブリッドの見分け方
- 芳香があり、細長い筒状の花を咲かせること
マルタゴンリリー【マルタゴン・ハイブリッド】
マルタゴン・ハイブリッドは下向きに咲く、日本ではほとんど見ない品種です。花被は厚く、葉は輪生(茎の1つの節から3枚以上の葉が輪を描くように生えてくること)します。色の種類も白やライトイエローといった淡いものから、ピンク、赤紫や濃赤といった具合に多彩です。
マルタゴンリリーはタケシマユリをもとに交配されたユリで、和名はクルマユリ・ピンク。6月ごろに、1本の太い茎に花径5cmほどの小さい花をたくさん咲かせます。
マルタゴン・ハイブリッドの見分け方
- 花被の厚い下向きの小さい花であること
- 上根がないという珍しい特徴があること
下位分類の種類と見分け方
下位分類といっても花として劣っているわけではありません。むしろ品種改良を重ねた結果、丈夫で育てやすい品種となっているものがほとんどです。野生種のウィルス病に弱かったり育てにくかったりといった点を改善されています。下位分類の説明をするための園芸種の表記として、アジアティック・ハイブリッドを(A)と表記、オリエンタル・ハイブリッドを(O)と表記、トランペット・ハイブリッドを(T)と表記、ロンギフローラム・ハイブリッドを(L)と表記します。
下位分類の種類
下位分類とは園芸種をさらにかけ合わせた交雑種のことで、その種類にはLOハイブリッド、LAハイブリッド、OTハイブリッドがあります。これらの下位分類は、英国王立園芸協会で9つに分類された品種のうちの第8群(そのほかの交配品種)に相当します。
下位分類名 | 組み合わせ | 特徴 |
LOハイブリッド | ロンギフローラム・ハイブリッドとオリエンタル・ハイブリッドの交雑種 | 花色は少ないが大輪の花 |
LAハイブリッド | ロンギフローラム・ハイブリッドとアジアティック・ハイブリッドの交雑種 | 多彩な花色と大輪の花 |
OTハイブリッド | オリエンタル・ハイブリッドとトランペット・ハイブリッドの交雑種 | 病気に強く、花茎が強い |
OAハイブリッド | ー | 交配が難しい |
オリエンタルリリーの名花・カサブランカ
オリエンタル・ハイブリッドがオランダから初めて日本に輸入されてきたのは1989年のことでした。その時に話題になったのが今ではすっかりおなじみとなったオリエンタルリリー・カサブランカです。当時は都内の花屋で1本1万円の値がついたそうですから驚きですね。ユリの白花種の中でも最も大輪で花弁も厚く、丈夫で育てやすいという、まさに切り花としてもNo1の存在でしょう。
このカサブランカを筆頭とするオリエンタルリリーは、もとは日本原種のユリを交配してつくられたものでした。それが再び日本に逆輸入で里帰りした形になるとはなんとも不思議なことですね。
ユリの人気の品種の活用法
和の庭を彩る
おちついた佇まいの和風の庭には、やはり野趣あふれる原種タイプのユリが似合うでしょう。オニユリの赤味の強いオレンジ色が辺りを明るくします。それ以外にも、原種系のタカサゴユリの群生なども似合うかもしれませんね。
憧れのイングリッシュガーデン
多種多様な植物の共演となるイングリッシュガーデンですが、ここで本領を発揮するのは、なんといってもオリエンタルリリーでしょう。圧倒的な存在感を放つ大輪の花は、庭のフォーカルポイントとなります。スカシユリの鮮やかな色合いも緑の中によく映えることでしょう。
ウエディングブーケ
ウエディングブーケといえば白い花。ここはカサブランカの出番ですね。バラや胡蝶蘭に勝るとも劣らない人気ぶりではないでしょうか。カサブランカ単独での大人っぽいブーケも素敵ですが、大輪の花に数種の小花をあしらったウエディングブーケも可愛らしい印象で人気です。
お別れの供花
仏花というと菊のイメージが強かったのですが、近年では白いユリがよく使われるようになりました。葬儀での供花はもちろん仏壇に供える花としても最適です。カサブランカの強い香りが気になるのであれば、香りの柔らかなテッポウユリがおすすめですよ。
プレゼントなら矮性タイプ
草丈が高すぎて贈り物にはちょっとどうかな…と思われがちなユリですが、小さいタイプもあるんです。草丈30~40cmの矮性タイプのスカシユリは色鮮やかなビタミンカラーで、見ているだけでも気持ちを元気にしてくれます。
出典:写真AC