南天は薬であり毒でもある
薬も過ぎれば毒となる
南天の薬効成分には、アルカロイドという有毒成分も含まれています。南天実に含まれているアルカロイドのドメスチンには鎮咳作用がありますが、大量摂取すると知覚や運動神経の麻痺を引き起こします。また、南天葉に含まれているアルカロイドのナンジニンには、防腐・解毒の効果がありますが、これも大量に摂取すると大脳および呼吸中枢の興奮や麻痺を引き起こしてしまいます。
意外な形で役立つ毒性
野鳥のヒヨドリやヒタキは、よく南天の実を食べます。ですが前述したように南天の実には毒があるため、一度にたくさん食べることはしません。熟した実には種が入っているので、どこかで排泄された際に、その地で発芽して生息地を広げていきます。しかも一度にたくさん食べられないため、種は少しずつ、色んな場所へ運ばれていくことになります。有毒成分が生息地を広げることに、一役買っているのです。
南天の種類・品種
古くから縁起物の庭木、生薬の木として愛されてきた南天は、園芸植物として改良されてきた歴史も長いです。そのため種類も品種も豊富にあります。その一部を紹介しましょう。花、紅葉、実と季節ごとの変化が楽しめるのが南天の特徴とされていますが、種類によっては花や実をつけなかったり、あまり紅葉しないものもあります。購入する際には、その点もきちんと確認しましょうね。
お多福南天(オタフクナンテン)
紅葉を楽しむ園芸品種
お多福南天は、江戸時代に誕生した南天の園芸品種です。「阿亀南天(オカメナンテン)」「五色南天(ゴシキナンテン)」とも呼ばれています。矮小種という背の低い種類の品種で、50cmほどしか生長しません。この品種の最大の特徴は、花や実をほとんどつけないことです。その代り、晩秋から冬にかけて、非常に美しい紅葉を見せてくれます。
寄せ植えやグランドカバーにおすすめ
背が低く、葉の美しさを楽しむ品種なので、カラーリーフのような扱いが可能です。鉢植えなら寄せ植え、庭木にするならグランドカバーが向いています。特に色彩の乏しい冬の季節は、お多福南天の赤い葉が庭を美しく彩ってくれるでしょう。南天と同じく丈夫で手間もかからないので、管理が楽である点も魅力です。
白南天(シロナンテン)
前にも触れましたが、白南天はやや黄色がかった白い実をつける南天の園芸品種です。「白実南天(シロミナンテン)」とも呼ばれています。あまり紅葉しません。紅白が共に縁起のよい色とされていることや、風水でも鬼門に白南天、裏鬼門に赤南天を置くとよいとされていることから、赤と白の両方の南天を庭に植えている方も多いです。
錦糸南天(キンシナンテン)
錦糸南天は、江戸時代に誕生した南天の園芸品種です。「琴糸南天」と表記することもあります。糸のように細い葉からこの名前が付けられました。その独特の姿と、生長が遅く樹高が高くならないことから、盆栽として栽培されることも多いです。この品種を元に「赤縮緬(アカチリメン)」「織姫(オリヒメ)」「千鳥(チドリ)」など、多くの種類が生み出されています。
折鶴南天
密生した葉が、折り重なるように見えることから「折鶴」という名前がついた南天の園芸品種です。葉柄がよれたり、曲がったりする珍しい特徴を持っています。生長が遅いので、狭い場所にも植栽が可能です。夏には花が咲き、秋には真っ赤に紅葉し、冬には赤い実をつけるので、季節ごとに楽しめます。独特の葉もあいまって、不思議な魅力を持つ品種です。
笹葉南天
笹のように尖った葉が特徴的な南天の園芸品種です。もう一つの大きな特徴として、初夏に入ると黄色い花を咲かせる点もあげられます。紅葉する時期に入ると真っ赤に紅葉し、晩秋には赤い実をつけるので、季節ごとに楽しめる品種です。ただし南天の基本種と比べると、性質的にやや弱く生長も遅いので、丁寧に管理しましょう。
まとめ
南天について、いろいろと紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。縁起がよくて季節ごとの変化が楽しめる南天は、とてもお得な植物です。花や実をつけなかったり、紅葉しない種類もあるので、選ぶ際には気をつける必要がありますが、自分の好みや用途に合った選び方ができるという楽しみもあります。好みと用途に合った南天を選んで、庭を美しく彩ってくださいね。
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出典:写真AC