マドンナリリーとは?
マドンナリリーはヨーロッパ南部、地中海沿岸地域が原産の白いユリです。19世紀に日本のテッポウユリが伝わるまでは、マドンナリリーが西洋における「ユリ」のことでした。透き通るような純白の花は聖母マリアの象徴で教会の花として扱われ、甘い芳香は香水の材料として利用されました。
基本情報
分類 | 草花 |
科・属名 | ユリ科・ユリ属 |
学名 | Lolium candidum |
英語名 | Madonna lily |
和名 | ニワシロユリ(庭白百合) |
原産国 | ヨーロッパ南西部・地中海沿岸 |
開花時期 | 5月中旬~6月下旬 |
花色 | 白色 |
草丈 | 80~180cm |
耐寒性 | 弱い |
耐暑性 | 強い |
栽培難易度 | やや難しい(一般的なテッポウユリとは異なる) |
マドンナリリーは英語で別名「White garden lily」とも呼ばれ、それが和名の庭白百合の由来です。現在のイスラエルではガリラヤ地方とカルメル山だけに見られる、貴重な植物になっています。
マドンナリリーの歴史
マドンナリリーは園芸植物として、かなり古くから栽培されてきた品種です。古くはギリシャ、クレタ島遺跡から発掘された、紀元前1500年〜1600年の壁画や壺に描かれています。ローマ時代、ヨーロッパ各地に球根の鱗片をすりつぶした薬として、軍隊によってもたらされました。
マドンナリリーの名前の由来
2世紀ごろ、キリストの墓に手向けられたユリとバラがキリストの復活によりなくなっていたとされる伝説があります。これによりユリはキリスト教の象徴、白い花はマリアの純潔をあらわすものとなりました。英語での「マドンナ」=聖母、「リリー」=ユリ、マドンナリリーの名前の由来です。
キリスト教との関わり
ルネサンスの画家たちは「受胎告知」の絵で天使が持つ花や聖母マリアが手に持つ花に、ユリを描きました。当時のヨーロッパで白ユリと呼ばれるユリはマドンナリリーのことで、バチカン市国の国花に指定されています。19世紀に植物学者のシーボルトが日本のテッポウユリをヨーロッパに伝えると、「聖母のユリ」がテッポウユリに置き換わるようになりました。
マドンナリリーの特徴
特徴①花
マドンナリリーは、1本の茎に5~10輪の透明感のある純白の花を咲かせます。花の大きさは直径10cm、長さ6cmほどで横向きに咲きます。花弁は6枚に見えますが、ガク片が3枚、花弁3枚です。それらは1枚ずつ開き、半日ほどで徐々に先端がカールしていき、1週間程度で萎んでしまいます。雄しべは6本、葯(やく)が黄色で、真ん中に雌しべが1本あり、強い芳香があります。
特徴②茎・葉
マドンナリリーは花後の真夏に休眠期に入ります。その後、秋に芽を出し多肉気味の葉をロゼット状に展開させます。春に伸ばす花茎は太く、茎につく葉が小さいのが特徴です。根元に近い葉は小さくて丸く、上にいくにつれて細長い葉になります。
特徴③球根
マドンナリリーの球根は鱗茎です。花後、真夏に土の中で休眠しますが湿気や蒸し暑さに弱いです。ほかのユリと違い、球根の上に生える根(上根)がありません。
マドンナリリーはいつの誕生花?
誕生花とは生まれた月日にちなんだ花です。マドンナリリーの誕生花は2月27日ですが、2月25日、7月25日という説もあります。
マドンナリリーの花言葉
マドンナリリーの花言葉は清らかな聖母マリアに由来してつけられているものが多く、「天界の美」「純潔」「汚れない心」などが代表的です。そのほかに「恥じらい」「至福」「気品」「貞節」「永遠の愛」「天上の至福」「神聖な結婚」などがあります。切り花としてフラワーショップに出回ることはほとんどないので、上手に咲かせて大切な人に花束をプレゼントすると喜ばれるでしょう。
マドンナリリーの育て方
マドンナリリーは地中海沿岸のとても乾燥した地域を原産地としているため、日本の多湿な環境で育てるには性質をよく理解する必要があります。英語名で「White garden liliy」と呼ばれますが、梅雨や夏越しの湿度管理は鉢植えの方がやりやすいでしょう。
育て方①用土
マドンナリリーの原産地は地中海沿岸のとても乾燥した土地です。そのため日本で育てる場合の植え付け用土は水はけのよいものを選んでください。
- 地植えの場合…土を耕し腐葉土と石灰を混ぜて植え付けます。元肥として緩効性肥料も与えましょう。
- 鉢植えの場合…赤玉土6:腐葉土3:パーライト1の配合で作り、水はけのよい環境にしましょう。
育て方②植え付け
マドンナリリーは球根植物ですが、ほとんどが苗の状態で販売されています。植え付けは球根が腐りやすいので用土に浅植えします。通常、ユリの球根の植え付けは大きさの2〜3倍の深さで穴を掘りますが、マドンナリリーは上根が出ないので、土の適度な乾燥を優先し、球根の頭が隠れる程度に植え付けます。花茎が伸び始めたら支柱を立てて折れないよう注意しましょう。
育て方③水やり・肥料
マドンナリリーはほかのユリに比べ乾燥を好むので、水やりは控えめにします。原産地の気候にはない、日本の梅雨や真夏の休眠期には特に注意しましょう。鉢植えでの栽培では、開花期の水切れにも気をつけます。地植えは降雨で十分です。また肥料も控えめに与えます。元肥のほかに秋にロゼット葉が出てきたときや開花後に、油粕や緩効性肥料を与えましょう。
育て方④花後の管理
マドンナリリーには10輪くらいの花がつきますが、花後はひとつづつ花がらを摘んでください。葉だけを枯れるまで残し、球根に養分を摂らせ太らせます。花が少なくなったら早めに花茎を切り取り、ほかの花とあわせて花束にして飾ってもよいでしょう。
育て方⑤植え替え
マドンナリリーの植え替えは庭植えの場合は3年に1度ぐらい、鉢植えの場合は毎年行います。夏の休眠期に球根を掘り上げて分球し、植え替えます。マドンナリリーには球根の上根がないので、底の部分の根を傷めないように気をつけて植え替えましょう。
育て方⑥病気・害虫
マドンナリリーがかかりやすい病気は葉枯れ病、立ち枯れ病、さび病などです。湿気の多さが原因になるので、水はけと風通しのよい場所で育ててください。害虫はアブラムシがつきやすいので、発芽〜葉が枯れるまではオルトランなどの薬剤を根元に散布するようにしてください。
育て方⑦夏越し(休眠期)のポイント
マドンナリリーは7月後半〜8月にかけて休眠期に入り、葉がすべて枯れてなくなります。そのまま土に植えた状態で夏越しさせますが、湿気や暑さで腐り秋に芽を出さない場合が多いです。風通しと水はけのよい状態を作り、水やりを控える必要があります。
マドンナリリーの香水
マドンナリリーは香りが強いので、古くから香水の材料として利用されてきました。マドンナリリーを利用した香水はどれも華やかな花束のような香りです。
①エルメス「ラグーナの庭」
ラグーナの庭
参考価格: 6,809円
エルメスの「ラグーナの庭」は「ナイルの庭」や「屋根の上の庭」をはじめとする「庭園のフレグランス」シリーズで、香水のクリエーション・ディレクターのクリスティーヌ・ナジェルが手がけたフレグランス(オードトワレ)です。香りはベネチアの海、ラグーンに囲まれた庭をイメージして作られました。ムスクや花の咲く木々、マドンナリリーの香りで人気です。
おすすめ度 | ★★★★☆ |
---|
容量 | 100mL |
---|
②ドルチェ&ガッパーナ「 ザ・ワン」
ザ ワン
参考価格: 6,275円
ドルチェ&ガッバーナの「ザ・ワン」は「本物のディーバ」をイメージした香水(オードパルファン)です。香りのキーであるマドンナリリーが引き立つフレッシュなオードトワレです。トップはフルーティに香り立ち、ミドルではスズランやジャスミン、マドンナリリーが華やかに、ラストではバニラやムスクが甘く印象的に香ります。男性にも女性にもあうオードトワレです。
おすすめ度 | ★★★★☆ |
---|
容量 | 50mL |
---|
まとめ
マドンナリリーはキリスト教や聖母マリアの象徴として、ヨーロッパで古くから愛されてきたユリです。透明感のある白い大きな花や強い芳香が魅力的で、庭での観賞だけではなく花束を作って飾っても見応えがあります。日本では気候の違いから栽培がすこし難しいですが、ぜひチャレンジしてください。