トクサ(木賊・砥草)とは
トクサは、竹のような見た目をしていますが、つくしで知られているスギナの仲間で常緑のシダ植物です。トクサ科、トクサ属の学名equisetum hyemale、和名は木賊、砥草です。竹みたいな優しい緑色の細い茎が、直立して並ぶ姿は美しく、竹林のようにどこか涼しげで和風庭園や和のアレンジに取り入れるとひときわ魅力的な植物です。
原産地
トクサは、15種が北半球のわりと温暖な土地に広く自生し、そのうち9種が日本の北海道から中部地方で特に山間や水辺などの湿地帯に自生しています。昔から園芸品種として日本庭園で植栽されるだけでなく、家庭の庭でも親しまれ、あちこちの庭や店舗の盆栽や生け花などでも目にすることが多いのではないでしょうか。
木賊?砥草?
トクサを乾燥して生薬にしたものを木賊と呼んでいたことから「木賊」、他にもトクサの茎の表面はザラザラとしているので、昔からトクサを乾燥させてできた天然のヤスリとして工芸品磨きや爪砥ぎに使われていたことから「砥草」と呼ばれるようになりました。このトクサのヤスリは木材や爪だけでなく金属を磨くほどの研磨効果があるようです。
節のある茎
トクサは、竹みたいな節のある茎で、内側は竹のような空洞もあります。そして、この節は引っ張ると抜けてしまいます。また、茎の表面は竹みたいなツルツルの手触りではなく、固くザラザラとしていてます。トクサは竹みたいな直立した姿をしていますが、草丈は30cm~1m程の竹と比べるとずいぶん小ぶりなサイズで育ちます。葉はつくしと似ていて、節に付いている茶色、黒色の袴と呼ばれている部分が葉です。
トクサの繁殖力
トクサは、日当たりのよい場所を好みますが、日陰でも湿った場所でもよく育つので下草(木陰の草)として和風の庭作りにも適しています。水に浸かっている状態でも育つので水盆で栽培することもできます。また、剪定や刈り込みの必要もないので、手間のかからない植物に思えますが、その落ち着いた雰囲気とは裏腹に、実はとても丈夫で繁殖力のある植物なのです。
トクサの地下茎
トクサは、つくしと同じくスギナの仲間なので地下茎で成長します。地下で広がりますが、そのスピードは早くあっという間に領域を広げて密集していきます。地植えにする場合はコンクリートなどで囲まれた場所に植えるようにしなければ、思わぬ場所にまで広がってしまいます。ヒビ割れたところやちょっとした隙間からでも広がりますし、掘り起こしたとしても地下茎が残っていると、そこからまた成長が始まるので注意が必要です。
地獄草
トクサはスギナと同様に、地下茎を張り巡らせる繁殖力と生命力が強く、根絶することがまずないと言われていることから「地獄草」とも呼ばれています。除草剤を使ってもなかなか完全に無くすことは難しいようです。スギナや笹ように増えすぎて手に負えなくなる危険性のある植物と同じく近所迷惑にならないよう事前にトクサの生態をよく知っておく必要があります。
トクサの生態と管理
トクサは、竹のような硬い茎をしていますが、茎の表皮細胞の細胞壁にケイ酸が蓄積しているからなのです。トクサは、耐寒性も高く、0℃以上あれば冬越しもできます。しかし地獄草と呼ばれるトクサでも霜に当てないよう注意が必要で、夏場の強すぎる直射日光や西日、乾燥にも弱くこの硬い茎が折れることもあります。地獄草の根も枯れてしまっては根絶してしまうので、寒冷な地域では鉢植えでの管理がおすすめです。
トクサの胞子
トクサは、シダ植物なので胞子を付けます。7月~8月茎の先につくしが尖ったような綿棒に似た茶色い花を咲かせます。この花を胞子群と呼び、つくしと同様に、ここで作り出された胞子が風に吹かれることで空気中にたくさん飛ばされていきます。
トクサの花言葉
トクサは、枝分かれをせず、直立して育つことから「素直」という花言葉があります。また、砥石のようにものを磨く、ヤスリのような性質を持つことから「非凡」という花言葉が付けられています。その天然のヤスリを庭師が刃物砥ぎに使っていたことから、トクサで金を磨くとピカピカになるとされ、金運向上の植物としても注目されています。
和モダンな庭作りにかかせない
トクサのまっすぐで節のある緑の茎は、和風の雰囲気で和の庭づくりには最適でしょう。トクサを笹や竹のように見立てて門松のようなテイストで門構えを作ったり。ビオトープや水盆の寄せ植えにしたり、睡蓮鉢の周りを囲ったり、下草やメインにしたりとアレンジ案は膨らみます。また、盆栽や生花などの鑑賞のために栽培されることも多く、ユーモア、センスの問われる作品作りにも一役買っている植物です。
まとめ
地下茎の驚異を知った上で是非育ててみたい植物です。観葉植物として室内でモダンに飾るのもよし、古風に和の庭作りに活かすのも風情のある雰囲気が出て素敵です。和のテイストの鉢を選んで盆栽にして眺めるのも花とはまた違う趣があります。また、花言葉の由来にもなった「天然のヤスリ」として現在でも利用されているトクサの研磨効果を是非実際に試してみる価値がありそうです。
出典:写真AC