食虫植物とは
食虫植物は、葉や茎などに餌を捕えるための捕虫器官を持つ植物の総称です。世界中に12科20属、約500種類もの食虫植物が存在しています。独特の風貌、生態などから栽培植物としても人気で、古くから愛好家も多い植物です。近年ではホームセンターなどで見かけられることも多く、栽培を始める初心者の方も多いです。
食虫植物の育て方
育て方①用土
食虫植物は常に湿った環境を好むものが多いため、湿度の維持が簡単なミズゴケ単体に植え付けるのがおすすめです。鉢の中で苗をミズゴケで包み込むように植え付けましょう。あまり深く植え付けてしまうと、新芽が出てこられなくなるため注意してください。一部の多湿をやや嫌う種類を育てる場合は、日向土や赤玉土を使用すると湿度が高くなりすぎずに育てやすくなります。
育て方②置き場所
食虫植物は日光を好むものが多く、直射日光が当たる場所が適しています。なるべく長時間直射日光が当たる場所に置いてください。ただし、真夏の直射日光に当たると小さな鉢では温度が上がりすぎる場合もあるため、こまめに観察して調整しましょう。また、多湿を好むといえど空気が淀んでいると根茎部が腐りやすくなります。予防として風通しがよい場所に置きましょう。
ボタニ子
場合によってはサーキュレーターなどを使用するのも効果的です!
冬越しについて
サラセニアやハエトリグサは耐寒性が高いため、一年中屋外で問題ありません。しかしネペンテスやムシトリスミレは耐寒性がやや劣るため、秋以降は室内か園芸用温室に取り込んでください。室内に取り込んだ場合も直射日光が当たる場所に置くことで、鉢内の温度を高められます。
育て方③水やり
基本的に、食虫植物は用土が湿った状態を好みます。そのため腰水で管理すると容易に湿度を維持できます。腰水をする場合は、受け皿に3~5cmの水を溜めて鉢を置きましょう。水が減ってきたら受け皿ではなく用土の上から水やりをします。種類によっては冬場に地上部が枯れますが、休眠状態であっても水は切らないように注意してください。
育て方④そのほかの管理
食虫植物の多くは痩せた場所に自生しており、基本的に肥料を与えません。病害虫はほとんど発生しないため、特別な対策は必要ありません。まれにアブラムシやハダニが発生する場合がありますが、その際は市販の殺虫剤で防除しましょう。枯れた葉や落葉したものは、その都度取り除いてください。湿った環境のため、そのままにしておくと腐敗やカビの原因になってしまいます。
初心者でも育てやすい食虫植物
流通している代表的な食虫植物には、「サラセニア属」「ネペンテス属」「ハエトリソウ属」「ムシトリスミレ属」などがあげられます。品種改良された種類も多く、育てやすいものから難易度の高いものまであります。初心者の方は、丈夫で栽培が簡単なものから栽培スタートしましょう。
サラセニア・アラータ
サラセニア アラタ
参考価格: 1,500円
北アメリカ原産で、古くから栽培されている代表的なサラセニアです。さまざまな品種の元になっている丈夫で育てやすい種類です。筒状の捕虫葉を形成し、成長すると草丈70cmほどになり、黄色い花を咲かせます。屋外で越冬できるため、食虫植物全体の中でも初心者の方におすすめです。
育てやすさ | ★★★★☆ |
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おすすめ度 | ★★★★☆ |
育て方のポイント
サラセニア・アラータは日当たりのよい湿地帯に自生しています。一年を通して、日中は直射日光が当たる場所に置きましょう。可能であれば、朝から夕方まで日陰にならない場所を探して置いてください。また冬期に落葉している時期でも、直射日光に当て腰水を続けることで、春になると元気な新芽が発芽します。
ネペンテス・アラータ(ウツボカズラ)
ネペンテス・アラータ
参考価格: 2,330円
ホームセンターや園芸店で、「ウツボカズラ」として販売されているものの多くがネペンテス・アラータです。葉の先から伸びた蔓に壺状の捕虫袋を形成し、餌となる小さな虫を落としこんで捕獲します。育て方は簡単で、室内であれば越冬も問題なくできます。捕虫袋をぶら下げることから、ハンギングプランツとしてもおすすめです。
育てやすさ | ★★★☆☆ |
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おすすめ度 | ★★★☆☆ |
育て方のポイント
ネペンテス・アラータはネペンテス属の中でも育てやすい品種です。しかし、ほかの食虫植物と違い熱帯地方原産のため、冬は暖かい場所での管理が必要です。秋に気温が10℃を下回るころになったら室内に取り込みましょう。なるべく暖かい場所で管理が必要ですが、エアコンなど暖房器具の風が当たると枯れてしまいます。暖房で室温を上げ、サーキュレーターで自然な風の流れをつくった環境が理想的です。
ハエトリソウ
単に「ハエトリソウ」として流通しているもののほとんどは、ディオネア・マスシプラ・オールドタイプです。二枚貝のような葉の先に小さな棘が無数に生えた捕虫葉を持っています。餌となるコバエなどが侵入すると、葉の中にあるセンサーが反応して捕虫葉を閉じて捕獲します。基本的には育て方が簡単ですが、強い光を必要とするため、なるべく屋外で育てましょう。
アシナガムシトリスミレ
アシナガムシトリスミレ
参考価格: 1,060円
アシナガムシトリスミレは、アシナガスミレの中でも流通の多い種類です。一見すると、ほかの食虫植物のような捕虫葉がないように見えますが、葉の表面から粘着液を分泌させ、葉にくっつけるように虫を捕えます。多湿を好む食虫植物が多い中、乾燥にも比較的強く育てやすい種類です。
育てやすさ | ★★★☆☆ |
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おすすめ度 | ★★★☆☆ |
育て方のポイント
ムシトリスミレは根があまり発達せず、代わりに地上部から水分を得ています。そのため空中湿度が高い環境を好みますが、鉢内が多湿になりすぎると調子を崩したり、腐ったりします。そこで根の周りだけミズゴケで包み、その周りは日向土や赤玉土で埋めましょう。鉢内の通気性がよくなります。また葉から吸水させるために、霧吹きで葉水を与えるのも効果的です。
ドロぺラ・カペンシス(モウセンゴケ)
モウセンゴケ
参考価格: 1,950円
ホームセンターなどで「モウセンゴケ」として販売されているのはドロセラ・カペンシスであることがほとんどです。南アフリカ原産の食虫植物で、葉の先から粘液を出して餌をくっつけて捕食します。古くから栽培されている種類で、ドロセラ属の中では大きくなり丈夫な性質のため、初心者の方にはおすすめです。
育てやすさ | ★★★☆☆ |
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おすすめ度 | ★★★☆☆ |
育て方のポイント
ドロセラ・カペンシスは、耐寒性は比較的強いものの、夏の暑さにやや弱い面があります。また、直射日光を好みますが、日光に当てすぎることで鉢内の温度が上昇し、状態を崩してしまいます。その場合は遮光をするか、半日陰に置くなどして、温度の上昇を緩和しましょう。ドロセラ・カペンシスが状態を崩すと葉先の粘液が減るため、ひとつのバロメーターにしてください。
出典:写真AC