ミズヒマワリとは
ミズヒマワリは、キク科ミズヒマワリ属の抽水性多年性植物で、原産地は中央・南アメリカです。白くてかわいらしい花を咲かせますが、その様子はヒマワリには似ていません。名前に「ヒマワリ」とついているのは、葉の様子がヒマワリに似ていることに由来します。世界では台湾、オーストラリア、ニュージーランドに、日本では東海、関東、近畿地方に分布しています。
ボタニ子
ミズヒマワリ属の植物
キク科・ミズヒマワリ属の植物は、約1000種類ほど存在しています。そのうち約80種類が日本に分布しているといわれ、いずれも海外からやってきたものです。ミズヒマワリの在来種は日本にはなく、本種以外の野生化も国内では確認されていません。
ミズヒマワリの特徴
ミズヒマワリは特徴がたくさんあり、見てすぐに「これがミズヒマワリだ」と判断しやすいです。特に花は特徴的で似た種類が少なく、生息場所も特徴的です。
①花
ミズヒマワリの花は、100個以上の白い筒状の小花がたくさん集まってできた頭状花で、枝分かれした茎の先端に複数咲きます。大きさは直径6mm~15mmと小さく、コロンと丸い花姿はとても愛らしいです。開花時期は9月~10月ですが、日本では6月以降~11月ごろまで開花する地域もあります。「姿形はよいが」というネガティブな花言葉がつけられています。
ミズヒマワリは種ができますか?
ミズヒマワリも、ヒマワリのように花が枯れると中心部にたくさんの種ができます。ミズヒマワリは種でも増えますが、種から増えるよりも「根、茎、葉」から繁殖することが多いです。
②茎
ミズヒマワリの茎は縦にまっすぐ伸びるのが特徴で、草丈は低いと0.5m、高くなると2m以上にまで成長します。根元が水中にある場合茎の長さは長くなる傾向があり、成長しすぎると株を支えきれず倒れてしまうことも多いです。茎には角ばった形をしている「稜(りょう)」と呼ばれるものがあり、茎の途中で折れてもそこから再生できる力を持っています。
③葉
ミズヒマワリの葉はヒマワリの葉にとてもよく似ており、葉の根元は幅広く先端に行くにつれて細くなる「鋭尖頭(えいせんとう)」と呼ばれる形をしています。葉は濃い緑色で茎に対象につき、大きいものでは20cmの長さにまで成長します。葉の縁はギザギザとノコギリの歯のような形をしているのが特徴ですが、水中で育つ部分はギザギザは少なく滑らかなものが多いです。
④生息場所
ミズヒマワリは水中から水の上に伸びて育つ抽水性の植物で、沼や流れの弱い川岸などに生息します。生命力が強いため、川のようにたっぷりと水がある場所でなくてもよく育ち、水路の近くや湿地に生息することも多いです。亜熱帯~熱帯地方が原産地ということもあり、暖かく湿度の高い場所を好みます。
ミズヒマワリは厄介な存在といわれる理由
ミズヒマワリはかわいらしい花を咲かせる植物ですが、「姿形はよいが」という花言葉からも推測できるように実はとても厄介な存在で、問題視されることが多いです。何も知らずに愛らしいからという理由で駆除せず放置しておくと、後々大きな問題になりかねません。トラブルを引き起こさないためにも、ミズヒマワリが厄介とされる理由をきちんと知っておきましょう。
①特定外来生物である
ミズヒマワリが厄介な存在といわれる大きな理由は「特定外来生物」に指定されているからです。特定外来生物とは海外に起源のある外来種の生物のうち、日本国内の生態系、人の身体、生命、農林水産業などに被害を及ぼす(または及ぼす恐れのある)ものを指します。ミズヒマワリは生命力が強いため、特に生態系に悪影響を与えるものとして危惧されています。
そのほかの主な特定外来生物
- オオキンケイギク
- ナガエツルノゲイトウ
- ブラジルチドメグサ
- アゾラクリスタータ
- オオハンゴウソウ
ボタニ子
ミズヒマワリ、ナガエツルノゲイトウ、ブラジルチドメグサは、特定外来生物の中でも悪影響を及ぼしやすい第一次指定種に選ばれているよ!
日本に持ち込まれた理由とは
ミズヒマワリが日本に持ち込まれた理由は、戦後に熱帯魚が流行した際に、海外からアクアリウムの素材のひとつとして輸入されたことにあります。日本の自然界で発見されることがしばしばありますが、それは「熱帯魚を逃がす際に一緒に放たれた」、もしくは周りに悪影響を与える植物と知らずに「当時の人が水辺に植えた」ことが原因とされています。
ボタニ子
法律で規制されるまでは、観賞用として普通に市販されていたんだって!
ボタ爺
ミズヒマワリは特定指定外来生物に指定されるまでは、「ジャイアントグリーンハイグロ」という名前で流通していたんだそうじゃ。
ミズヒマワリは家庭でも育てられますか?
ミズヒマワリは特定外来生物に指定されており、栽培や移植、販売、譲渡、運搬などは基本的に全て規制されているため、家庭では育てられません。外来生物法は2005年6月1日から施行された比較的新しい法律なこともあり、現在でも知らずに水槽内で育てている人もいます。廃棄時には周りに悪影響を与えないためにも、十分な対策が必要です。
②世界各地で被害が出ている
ミズヒマワリが生態系や生命を脅かす存在であることは、日本に限らず海外でも同様です。ニュージーランドのタラナキ地方では、在来水草の生育を妨げ酸素濃度が低下することによって、魚の生育に悪影響を及ぼす被害が確認されました。オーストラリアやほかの国でも、同じく生物の多様性を脅かすとして、ミズヒマワリへの対策の必要性が訴えられています。
ボタニ子
オーストラリアやニュージーランドでは、ミズヒマワリの流通や栽培が禁止されているんだって!
③繁殖力が強く駆除が大変
ミズヒマワリはとにかく繁殖力が高く、一度生息してしまうと完全に駆除するのがとても大変です。基本的にミズヒマワリは密生し、霜に当たるまで枯れません。さらに温暖な地域では地下茎が越冬でき、春先には急速に茎を伸ばして成長を始めます。茎が折れてもそこから根を出し、新たな株となるほどの生命力の強さを持っています。
ボタニ子
生育地が同じ植物は、ミズヒマワリの繁殖力の高さに負けて枯れてしまうこともあるよ。美しい花を咲かせるのに、問題のある植物なんだね。
④水流を妨げる
ミズヒマワリは横へ横へとマット状に広がっていくため、水路や河川の水流を妨げるといった問題を引き起こします。水中や水上で茎や葉が勢いよく伸びると、辺り一面を覆いつくしてしまいます。特に成長期である夏には注意が必要です。水流が悪くなることによって水質が悪化するため、環境問題を引き起こす場合もあります。
⑤虫が集まりやすい
ミズヒマワリの花には、アサギマダラやキタテハ、イチモンジセセリ、ツマグロキンバエ、ハナアブなどの虫が集まりやすいです。植物に蝶などの虫が集まるのは一見よいことに思われがちですが、在来種の受粉に問題や悪影響を及ぼす危険性もあるため、実に厄介です。
ボタニ子
ミズヒマワリとほかの植物が受粉して新たな植物を生み出す可能性もあるよ。生態系を崩さないためにも、素早く駆除しなくちゃいけないね。
ミズヒマワリの駆除方法と注意点
ミズヒマワリを増やさないための対策は「駆除して増殖を防ぐ」ほかにありません。ただし、ただやみくもに抜き取ったり刈り取ったりするだけでは、上手な駆除ができないので注意が必要です。ミズヒマワリを増やさないためにもきちんと特徴を把握し、正しい方法で駆除できるようにしておきましょう。
ミズヒマワリの駆除の仕方
ミズヒマワリを駆除したいときには、再生しないように根ごと抜き取ることが大事です。一度の駆除で完全に取り除くのは難しいため、様子を見ながら根気強く取り除きましょう。範囲が狭ければ、水産用遮光率95%以上の遮光シートですっぽりと覆い、約2ヶ月間光合成をストップさせると消滅します。遮光シートをそのままにしておけば、半年ほどで根も枯れます。
ミズヒマワリを駆除する際の注意点
ミズヒマワリを抜き取ったり刈り取ったりした際は、全てを袋に包んで破棄しましょう。根がついていなくても茎から根を生やして繁殖しようとするため、抜き取ったものをそのまま放置しておくとすぐに増えてしまいます。また、一見根ごとスッキリと抜き取ったと思っても、根が残っていると再生する場合があるため、完全になくなるまでは定期的な駆除が必要です。
ミズヒマワリを見つけても持ち帰らない!
白くてかわいらしい花を咲かせるミズヒマワリですが、在来種の成長に悪影響を与えるなど問題を引き起こす厄介な存在です。繁殖力が強くすぐに増えてしまうため、生態系を保つためにも、見つけても持ち帰って栽培しないよう気をつけましょう。また、早期発見することで簡単に駆除できるため、散歩道や出先でミズヒマワリを見つけたら、地域の担当者に知らせてください。
ミズヒマワリは、別名「ギムノコロニス」とも呼ばれているよ。これは英語名の「Gymnocoronis spilanthoides」からきているんだって!