五葉松とは?
北海道南部・本州・四国・九州の山地に自生する、日本固有のマツの一種です。高さ30m、径1m以上に達するものもあり、銀色がかった葉が美しいです。庭木、盆栽とするほか神社仏閣や庭園に植栽されます。学名はPinus parvifloraです。
五葉松の特徴
その名の通り五葉の松葉が特徴です。長さ2~6cmの松葉が5本で一房になっていることから五葉の松、そこから五葉松の名がつきました。五葉の長さや角度はバラバラで、成長がゆっくりしています。
五葉松=御用を待つ?
五葉松は「御用待つ」という語呂から、「御用を待つ」、「仕事を待つ」そして「良い仕事が舞い込みますように」という願いを込めて、縁起物として贈り物やお祝いの席に用いられます。冬でも青々とした葉をつける松は、不老長寿の象徴ともされていますから、五葉松はとても縁起のいい植物ですね。
特徴①花
雌雄同株で、花期は初夏です。雄花は新枝の下部に群がってつき、雌花は新枝の先に数個ずつ、ピンク色または赤い色のイチゴのような形のものがつきます。
特徴②幹
幹肌は荒れて松肌となるには30年くらいかかるので、幹肌で樹齢を推測することができます。
変種
五葉の松には葉性や幹肌に様々な違いのあるものがあります。産地によっても違いがあり、那須五葉・吾妻五葉・四国五葉・広島五葉などがあり、盆栽用には九重・瑞祥・銀葉八房などがあります。
おすすめ観光名所の五葉松
善峯寺遊龍の松
善峯寺(よしみねでら)は平安時代中期(1029年)に源算上人により開かれた寺院、西国三十三所観音霊場の第20番札所です。境内には、樹齢600年以上、高さ2m余り、全長37mの遊龍の松があります。主幹が地を這うように伸びる巨大な松は、龍の遊ぶ様に見えます。国の天然記念物に指定されています。
大原宝泉院の額縁の五葉松
宝泉院(ほうせんいん)は大原寺勝林院の僧坊のひとつで、三千院の参道奥にある天台宗の寺院です。客殿から柱や鴨居を額縁に見立てて、近江富士を型どった扇形樹冠の五葉松を、一服の抹茶と茶菓子をいただきながら観賞できます。樹齢700年、樹高11mの五葉松で、京都市指定の天然記念物です。
五葉松の手入れの仕方
五葉松は、主に春と冬に剪定をおこないます。それぞれの時期によって剪定内容もかわるので、季節にあった方法を知っておくことが大切です。
手入れの仕方①春の剪定
ミドリ摘みとは?
芽摘みのことです。松の新芽を「ミドリ」と言うため、芽摘みではなく「ミドリ摘み」と言います。毎春、松の枝先には数本のミドリが発生します。松の種類によってミドリの摘み方は違ってきますが、勢い良く伸びるミドリと元気のないミドリを指で折り取って根元から間引きます。ミドリが新枝になったときに葉の先がそろうように摘むのがコツです。適した時期は5月のはじめ、桜が散って2~3週間後ぐらいです。
手入れの仕方②冬の剪定
もみあげとは?
「もみあげ」とは松の葉を手でしごき落として整枝することです。春にミドリ摘みをしなかった場合は特に姿が乱れているので、必ずもみあげを行います。枝葉が伸びて生い茂ると見栄えが悪くなるばがりではなく、下枝まで日光が届かなくなるので、木が枯れ込んできます。勢いを強めたい枝の葉は少なく、抑えたい枝は多く落とすなど、また松の種類によっても、臨機応変に対応します。もみあげを行う時期は10月下旬~12月です。
手入れの仕方③こも巻き
「こも巻き」とは害虫であるマツケムシ(マツカレハの幼虫)を駆除する方法の1つです。藁でできた菰(こも)を幹に巻き付け、春先に菰の中で越冬したマツケムシを菰ともども焼却し駆除します。こも巻きを行う時期は10月~11月です。
こも巻きは中止傾向?
江戸時代から行われていた「こも巻き」ですが、最近の研究ではこも巻きに捕まったマツケムシはわずか数%で、大半は益虫のクモ類やヤニサシガメであり、害虫駆除の効果はほとんどないことがわかってきました。このように害虫駆除の効果に疑問があるためか、皇居外苑や京都御苑などではこも巻きが中止されているほか、中止を検討中の自治体もあります。しかし、害虫駆除の効果がないとはいえ、昔から続く晩秋の風物詩として、まだまだ各地で行われています。
ボタニ子
次のページでは、五葉松の育て方を紹介するよ!
五葉松の育て方
植えつけ
ボタニ子
これはレアなケースですね!でも植え付け条件はあっています。
日当たりと風通し、水はけのよい、よく乾く土地が適しています。植え穴は大きめに堀り、完熟堆肥を植土によく混ぜて、水はけをよくするために、少し土を盛り上げて高植えにします。
寒肥
新芽の緑色を鮮やかにするためには、冬肥が重要です。樹冠より少し内側に溝を掘り、堆肥に油かすを混ぜた有機肥料を埋めます。そうすることで根を張る範囲が縮まり、木に効果的に栄養が回ります。
五葉松の盆栽の育て方
松盆栽には黒松、赤松、五葉松など複数の種類がありますが、松の種類は厳しい環境にも適応力が高くて育てやすいため初心者にも人気があります。なかでも、五葉松は葉が短いため、一本の一本の葉が長いもので15cmもある黒松や赤松のように、葉を短く留める作業の必要がないためおすすめです。また、松は油分を多く含んでいるため枝や幹に針金をかけやすく、いろいろな樹形を作って楽しむことができます。そのため松盆栽は上級者の方まで幅広く楽しめる樹種です。
BONSAI
BONSAI(盆栽)は日本の伝統文化として国際通用語になっています。ヨーロッパ圏の貴族や王族も盆栽を愛好し、日本に来ている大使館員の多くが盆栽をもっているほど普及しています。松盆栽は入門種として海外でも人気があります。
「日暮し」って?
さいたま市大宮盆栽美術館随一の名樹の五葉松「日暮し」、推定樹齢450年です。一日中見ていても見飽きないということから「日暮し」の銘が付けられました。盆栽界の至宝と呼ばれています。なんと評価額は1億4千万円です。
置き場所
葉が密なため風通しのよいところ、陽を好むため日当たりのよい場所を選びます。室内で鑑賞する場合は、春から秋は3日を限界に、冬は1週間程度が目安です。エアコンの風が直接あたらないようにします。
土作り
赤玉土7割に桐生砂3割を混ぜた用土を作ります。
水やり
加湿に弱いためやや乾かしぎみにします。春秋は1日1回、真夏は1日2回、冬は3日に1回。表土が乾いたら与えます。
肥料
梅雨時と真夏を除く3月~10月の間に月1回、有機性の固形肥料を置きます。春は肥料が多いと新芽が伸びすぎるので控えめに、秋からは多めに与えます。
剪定
春と秋に行います。新芽が出てくるころ、シルエットを崩す枝や葉を剪定し輪郭をキープするように整理します。また11月ごろには前年葉を取り除き、葉をすかす要領でもみあげをします。
針金かけ
9月~3月の休眠期に、枝葉を整理してからかけます。針金は1年くらいかけっぱなしにします。よく観察して、針金が樹皮にくい込みはじめるころに外して、傷がつかないよう気を付けます。
植え替え
適期は春です。春にできなかった場合は夏でも可能です。若木で3年が目安です。赤玉土7割桐生砂3割の用土を使用します。伸びた根は半分くらいにカットして新しい鉢に植え込みます。水をたっぷり与え、風通しのよい明るい日陰で管理します。
病害虫
松盆栽の代表的な病気には、葉サビ病、すす葉枯れ病、赤斑葉枯れ病、葉ふるい病があります。害虫はマツケムシ、ワタムシ、アブラムシやアカダニなどが発生することがあります。
まとめ
縁起がよい木として昔から親しまれている五葉松は天然記念物に指定されている大木から、庭木や手のひらサイズの盆栽や苔玉まで、いろいろな育て方や、楽しみ方があります。自然の姿のままで、または長い年月をかけて手入れをしてなど、ご自分にあった育て方をして、五葉松を楽しんでみてはいかがでしょうか?
出典:写真AC