富貴蘭とは?
「富貴蘭」とはどんな植物?
「富貴蘭(ふきらん・ふうきらん)」とは、一般的に「風蘭(ふうらん)」と呼ばれる植物の中で、伝統的な古典園芸植物(江戸時代に日本で独自に改良され、つくられた植物)のことです。植物紹介でも、「風蘭(富貴蘭)」などと表記されていることが多いことから、富貴蘭は風蘭の一種と考えていいようです。一説には、「日本富貴蘭会」という団体に登録されたものが「富貴蘭」として呼ぶことができるともされています。風蘭(富貴蘭)は江戸時代から、観賞用として多くの品種が作られ、今では100種類以上の品種があるといわれています。
風蘭とはどんな植物?
風蘭はラン科フウラン属の着生植物です。小型ながら、樹木や岩などにくっついて、雨の水分と大気中の栄養分で成長します。日本では主に西日本側に自生していますが、今では絶滅の危機に瀕している品種です。肉厚な葉に、斑点や縞などの模様があるものも多く、6~7月に可愛らしく、香りの良い花を咲かせてくれます。風蘭の花は夜に香りが強くなります。就寝時、アロマとしての役割も果たしてくれそうですね。
風蘭の成長はとても遅い
風蘭の成長速度は一年に葉を2、3枚だす程度と、とても遅いです。長い時間同じ姿を楽しめる、という利点はありますが、気長に辛抱強くお世話を続けることが重要になります。そう考えると、葉の一枚一枚がとても貴重なものに見えてきますね。
風蘭(富貴蘭)の歴史
江戸時代、将軍に愛された風蘭
風蘭の歴史は古く、最初の一大ブームは江戸時代にまでさかのぼります。十一代目将軍、徳川家斉が風蘭を愛好したことが発端となり、他の大名たちが献上品としてこぞって風蘭を集めだしたのが始まりといわれています。献上品としてより良い風蘭を、という意識から、多くの品種が作り出されたのもこの頃からとされています。
蝶よ花よの高級鑑賞植物「風蘭」
風蘭が世の大名たちに広まり、献上品としての価値が高まっていた頃、それはそれは大層な高級品として扱われていたといいます。鑑賞するには手を触れることはおろか、息をかけることにさえも気を使う徹底ぶりだったようで、口に白紙などをくわえ、息をかけないように鑑賞するのが基本だったとのことです。その名残から、今でも風蘭の一部「富貴蘭」と呼ばれるものは高級園芸品として愛好家、つまりマニアが多く存在します。
「富貴蘭」にはマニアがいる!
風蘭の中でも高級園芸品とされる「富貴蘭」には、たくさんのマニアがいます。花・葉・根、それぞれの部分でさまざまな評価点があり、大会が催されるほどです。小型の盆栽のような感覚で愛好している方が多いです。
マニアに学ぶ「富貴蘭」の鑑賞ポイント
花の鑑賞ポイント
花の鑑賞でポイントになるのは、色や咲き方などです。色は白・桃・赤・緑などがあり、咲き方にも八重咲きなど品種によって違いがあります。もちろん、かぐわしい香りも花での重要な鑑賞ポイントです。
葉の鑑賞ポイント
葉の鑑賞ポイントは、形や模様などです。形では、広がったように伸びるものや、葉先が上を向き、立ったように伸びるものなどさまざまです。模様はとても種類が多く、縞の入り方一つでも、外側だけを囲うようなものから、真ん中部分だけ違う色が入っていたり、葉の一枚つづに縞の違いが出るものもあります。
根の鑑賞ポイント
富貴蘭は根にも特徴が現れます。そのため、根が見えるように栽培することが多いです。根の鑑賞ポイントは、根の先っぽの色です。富貴蘭の中には、根の先にさまざまな色をつける品種があります。赤・黄・青緑など色のバラエティーも豊富です。根が見えるように育てられる、着生植物だからこそできる鑑賞方法ですね。
風蘭(富貴蘭)の植え方事情
風蘭(富貴蘭)のちょっと変わった鉢植え方法
水ごけに空洞を作る
風蘭は鉢植えで育てるのが一般的です。この鉢植え方法が他の植物とは少し違っています。まず、風蘭の鉢植えに使うのは水ごけです。水ごけは、中が空洞になるようにするのがポイントです。簡単な方法としては、瓶に水ごけを山になるようにかぶせ、その上に風蘭をおき、さらに水ごけをのせて風蘭をはさみます。この状態から形が崩れないよう瓶を抜きとると水ごけに空洞ができます。そしてこのまま、鉢に入れると完成です。
水ごけを使った鉢植えの注意点
水ごけは1年に1度取り替える
水ごけだけを使った鉢植えは必ず1年に1度、水ごけを変えることが必要になります。水ごけは土と違い、1年で劣化します。1年経ったら古い水ごけをきれいに外し、ついでに古くなり傷んでしまった根を取り除いてあげることが大切です。植え替えは花が咲く前、3月下旬~5月にするのがオススメです。
【番外編】植え替えいらずの管理方法
風蘭は鉢植え以外にも、流木やヘゴ板に麻糸や針金を使って着生させる方法もあります。ヘゴなどに着生させた場合、根腐れしにくくなり、乾燥の具合も確認しやすいため、水やりの加減がわかりやすいです。この方法でしたら、植え替えの必要もなく、さらにインテリアとしてもバリエーションが増えてまさに一石二鳥ですね。
出典:写真AC