あんずとは
あんず酒は市販のあんずでも簡単にできますが、出回る時期を見逃すこともありがちです。自分で育てたあんずでリキュールを作れば、時期を逸することもなく、楽しさも味わいも格別なものになるかもしれません。あんずの特徴や育て方、収穫時期の見極め方などを簡単に見ていきましょう。
あんずの特徴・歴史
花も美しい
あんずは樹高5~8mで、花も実も梅によく似ています。若葉が芽吹く前の春(3月下旬~4月)に淡紅色の花が枝を覆うように咲く様子は美しく、花見の対象になるほどです。初夏(6~7月)に直径約3~6cm程度の実をつけます。実の表面には細かい毛があるのが特徴です。基本的には自家結実しませんが、自家結実しやすい品種もあります。
あんずの歴史
原産地は中国北東部とする説が有力です。中国では4000~5000年前から栽培が始まりました。日本へは弥生時代に、ヨーロッパへは1世紀頃に伝わったとされます。日本や中国で品種改良された東亜系のあんずは酸味が強めです。ヨーロッパで改良された欧州系のあんずはアプリコットと呼ばれ、甘みが強く生食にも向きます。東亜系は冷涼地に、欧州系は温暖な夏乾燥地域に適するのも相違点です。
あんずの育て方
植え付け
あんずは寒さや乾燥には強いですが、開花期(3~4月)と成熟期(6~7月)の多湿を好みません。日当たりがよく水はけのよい場所に、元肥として有機肥料を混ぜて植え付けます。植え付け適期は12~3月です。初冬に植え付けた場合は根元に盛り土をして厳寒期の乾燥と凍結を防ぎ、3月に盛り土を取り除きましょう。
水やり・肥料
庭植えの場合は、一度根付いたら基本的に降雨だけで十分です。鉢植えでは土が乾いたらたっぷりと水やりします。施肥は1年に2回必要です。冬の施肥は翌春の根の活動再開に備え、9~10月のお礼肥えは8月に分化を始める翌年の花芽を充実させます。また、ホウ素が欠乏しやすく、実にコルク質の小粒ができるため、3~4年に一度、開花の3~4週間前にホウ素を含む施肥が重要です。
日頃の手入れ
冷涼な乾燥した地域では無農薬栽培が可能ですが、灰星病や黒星病、黒粒紋枯病などが発生しやすいです。また、アブラムシ、幹や枝を食害するコスカシバ、実に食い入るシンクイムシなどの害虫にも注意します。実つきが安定しない場合や、昆虫が活発に活動していない時期に開花した場合は、人工授粉が必要です。実は結果枝の10~15cm(葉っぱ20枚)当たり1果程度に摘果しましょう。
剪定
剪定は12~2月の休眠期に行い、間引き剪定が基本です。あんずは春に伸びた枝の中で短い枝に花をつけ、徒長枝や古い枝には花実がつきにくい性質があります。そこで、徒長枝や3年以上経った古い枝を中心に間引くのがポイントです。大きくしたくない場合や風通しが悪い場合は、7月下旬~8月にも混み合った枝を切り詰め、日当たりと風通しを確保します。鉢植えでは2~3年に一度植え替えをしましょう。
あんずの収穫時期・収穫方法
あんずの収穫期は初夏(6月下旬~7月中旬)です。未熟な果実や種子にはアミグダリン(青酸配糖体の一種)が含まれ、生食すると中毒の危険があるので注意します。収穫時期の見極めは次の3点に注目です。
- 実全体の青みがとれて黄~橙色になる。
- 香りが立ち始める。
- 実が落ち始める。
朝早い時間帯に収穫
ドライフルーツなどの加工用のものは果肉がやわらかくなる前に、生食やジャム用のものは果肉がやわらかくなってから収穫するのがおすすめです。あんずは収穫できる時期が10日間程度しかないので、機会を逃さないようにしましょう。気温が高い時間帯に収穫すると品質が落ちるため、できれば午前10時頃までに収穫します。
まとめ
あんずは花も美しく、古くから人々に愛されてきました。旬の時期は短いですが、簡単なレシピであんず酒に加工でき、長い間楽しめるようになります。疲労回復や鎮咳去痰などの効能も期待できるので、健康酒としてもおすすめです。あんずが手に入ったら、ぜひ香りのよい自家製果実酒にしてみてはいかがでしょうか。
出典:写真AC