柿の木を剪定する理由
秋の味覚「柿」は、一般家庭でよく栽培されている身近な果樹です。甘柿や渋柿など種類も多い柿の木の栽培では、成長や実のつき方にかかわる剪定作業が栽培のポイントになります。剪定が必要な理由を見ていきましょう。
理由①日当たりをよくする
柿の木は植えたままにしておくと3月~5月にかけてついた新芽が上へと伸びて枝が高くなり、下の枝や葉に日が当たらなくなって枯れることがあります。いつでも均等に日が当たるよう上へ伸びる枝は切り落とします。
理由②栄養が行き渡る
上へ伸びる枝や不要な枝を剪定すると、新しい枝や花芽、果実に栄養が多く行き渡るようになります。栄養が行き渡ると、実が大きくなり甘さも増します。
理由③作業がしやすくなる
樹高を低く保つことで毎年の剪定作業だけでなく収穫作業もしやすくなります。樹木の管理は高い場所での作業も多く、注意をしていても「ヒヤリ」とする場面がありますが、樹木の高さを調整することで高所での危険な作業が減り、いつでも枝の弱りや病害虫の確認がらくにできます。
理由④樹形が整う
余分な枝を取り除き美しい樹形に整え、季節ごとの変化が楽しめます。
剪定の時期はいつ?
時期はいつが適しているのか、くわしく紹介します。
時期
柿の剪定は、夏と冬におこないます。
- 夏の剪定…6月~7月
- 冬の剪定…12月~2月
ボタ爺
柿の木は植樹後の1年目から剪定することができるんじゃよ。そのあとは毎年繰り返して樹形を整えていくんじゃ。
夏の剪定
柿の新芽は3月~4月にかけて芽吹き、4月~5月にかけて新しい枝や花芽を大きくしていきます。葉も成長する時期のため、重なりや込み合いによって日当たりが悪くなるのを夏の剪定で改善します。
冬に剪定
12月にはすっかり落葉し、翌年3月に芽吹くまで柿の木は休眠期に入ります。休眠期間中の剪定は樹木へ与えるダメージが少なく本格的な剪定期間と言えます。
基本の剪定のやり方
柿は枝の先のほうに実をつける樹木です。そのため枝を短く切りすぎたり剪定する枝をまちがえると、果実の質や収穫に大きな影響がでます。基本の剪定のやり方では、分かりやすい図解とともに具体的な剪定の手順を解説します。
仕方①主幹
主幹を剪定する理由
主幹は樹木の一番太い中心となる幹のことです。柿の木は樹高が50cm~1mほどの高さになったら、上へ伸びていく主幹を剪定して枝を横に広げるように育て、高さを調節して定期的な剪定作業や収穫作業をらくにします。主幹の剪定は、樹形を整える役割もはたします。
切る場所と手順
図解のように樹木の真ん中から少し上の部分を切ります。手順として、切る前に幹を一周する目安の線を書いておくとまっすぐきれいに切ることができ作業がしやすくなります。
ボタ爺
主幹の剪定はよほど樹木の乱れがないかぎり、いちどきりでOKじゃよ。以下「仕方②」から毎年おこなう剪定じゃ。
仕方②枝の先端
枝の先端を剪定する理由
枝の先端を切り落とし、わきから伸びる枝や実へ栄養をおくります。先端を切ると実の数は減少しますが、そのぶんひとつの実に栄養が多く届きます。
切る場所は枝の先
主となっている枝の先を切ります。
仕方③混みあった枝
混みあった枝の剪定する理由
重なりが強く混んでいる枝を切ります。混みあった場所の剪定は「すかし剪定」と言い、日当たりをよくする効果や枝によって果実が傷つくのを防ぎます。
すかし剪定で間隔を開ける
幹に対して多くついている場所の枝を付け根部分から切り落とし、枝と枝の間隔をあけます。
仕方④伸びはじめた枝
伸びはじめた枝を剪定する理由
伸びはじめた枝の剪定は「切り戻し剪定」と呼び、夏季におこないます。枝と葉の込み合いを防ぎ、日当たりをよくして樹木の成長をうながします。
樹形を見て適度に剪定する
伸びている新しい枝の先あたりを剪定します。すべての枝を切る必要はなく、樹形を見て自然な形になるよう適度に剪定しましょう。
仕方⑤枯れている枝と下に伸びている枝
2つの枝を剪定する理由
樹形の乱れになる枯れている枝と下に伸びている枝を剪定して整えます。下に伸びている枝は栄養もよけいに奪ってしまうため、伸びすぎないうちにカットしましょう。
切る場所は付け根
幹近くの付け根部分からどちらの枝も切り落とします。
仕方⑥注意点
図左の枝のように斜めに切るのはよくありません。枝を斜めに切ると切り口の断面が大きくあらわれ、そこから雑菌や害虫が侵入しやすくなります。また、大きく切ると樹木の負担になり見た目も悪くなるので、右側の図のように断面が垂直になるよう剪定しましょう。
剪定に必要な道具
剪定に必要な道具や、あると便利な道具は以下の通りです。
- 剪定ばさみ
- 植木ばさみ
- のこぎり
- 高枝切りばさみ
- 脚立(はしご)
- 軍手(ガーデングローブ)
剪定後の管理「癒合剤」
癒合剤とは?
剪定後の切り口が腐食するのを防ぐために使用する薬剤を「癒合剤(ユゴウザイ)」と言います。ペースト状になっている癒合剤を切り口へ塗り、切り口から養分を含んだ水分が蒸発するのを防いで雑菌や害虫の侵入から樹木を守ります。癒合剤にはボトルタイプやチューブタイプなどさまざまな種類があり、殺菌効果の強いものや塗ったあとにはがれるものなどもあります。
手順
- 癒合剤・ハケ・ビニール袋(またはアルミホイル)を用意します。
- ハケに癒合剤をつけて切り口に塗ります。(塗りむらがないようにしましょう)
- 切り口にビニール袋(またはアルミホイル)をかぶせ、飛ばされないように紐で枝にくくりつけます。(2週間~1ヶ月以内に取り外す)
ボタ爺
ビニール袋やアルミホイルは切り口の保護や癒合剤の乾燥防止になるんじゃよ。癒合剤と合わせて使うことで切り口の治りが早くなるのでおすすめじゃ!
おすすめの柿の木「富有柿」
「甘柿の王様」富有柿
富有柿は渋抜きの必要がない自然に甘くなる完全甘柿で、「甘柿の王様」と言われるほど甘い柿です。明治時代に岐阜県で開発され、甘柿の中でいちばん多く生産されています。
富有柿の特徴
富有柿は雌花しかつけず、雌花はすべて実になるため果実の数が多いのが特徴です。強い甘さと果汁が多い柿で、やまぶき色の実はカドのない四角い形にふっくらとした丸みがあります。以前は種ありがほとんどでしたが、種なしの富有柿も作られ流通しています。
おすすめの理由
甘さはさることながら「医者泣かせ」と言われるほど栄養豊富で、風邪の予防になるビタミンCを多く含んでいます。適度な硬さと柔らかさをあわせもつ富有柿は、子供にも大人にもおすすめの果実です。
富有柿の剪定方法は?
夏季と冬季に基本的な剪定方法で枝を切ります。剪定後の管理も同じです。樹木は低く保ち、枝が横に広がるよう剪定でうながしましょう。
果実を美味しくする「摘蕾(テキライ)」と「摘果(テッカ)」作業
富有柿は春から夏にかけて「摘蕾」と「摘果」作業をおこない、実の数を減らして味やサイズを充実させます。時期は摘蕾が4月~5月、摘果が6月~8月です。
- 摘蕾は4月~6月の開花時期に花芽を摘む作業です。
- 摘果は5月~6月にかけて花芽から育った果実を枝からもぎとる作業です。
まとめ
樹木の成長に大きく関係し、果実の甘さや大きさにも関わる柿の木の剪定作業。剪定方法ではつぎの2つのポイントに注意しましょう。
- 樹木の負担が少ない時期(12月~2月)に作業する。
- 枝の断面が斜めにならないよう、まっすぐ切る。
引用:イラストAC