水仙の概要
水仙は種類が多い植物です。二ホンズイセンやラッパスイセン、クチベニズイセンやキズイセンなどを総称して「スイセン」といいます。スペインやポルトガルなどの地中海沿岸地域から、中国を経て室町時代に日本へ渡ってきました。花の色は白や黄色、オレンジやピンクなどがあり、一重咲きの種類が多いですが、八重咲きの種類もあります。
ボタニ子
ボタ爺
水仙の花言葉には、「私の元へ帰って」「うぬぼれ」「自己愛」などがあるぞ。
基本情報
学名 | narcissus |
科属 | キジカクシ目ヒガンバナ科スイセン属 |
形態 | 耐寒性球根多年草 |
原産地 | 南欧州~地中海沿岸地域 |
草丈 | 15cm~50cm |
花茎 | 3cm~8cm |
開花時期 | 12月~5月 |
花色 | 白、黄色、オレンジ、ピンク |
別名 | 雪中花(せっちゅうか)、雅客(がかく) |
英名 | narcissus |
水仙の特徴
葉
水仙の葉は、灰色がかった粉のついたような緑色をしています。葉の幅は0.8cm~1.5cmほどで、長さは20cm~40cmです。根本近くで枝分かれしており、球根に近い部分が白くなります。花が咲いている間は水仙だと判断できますが、花が咲く前や後などはほかの植物と区別しづらいので、庭に植えている場合は、立て札をしておくとよいでしょう。
球根
水仙の球根は、掘り返したときは、薄い茶褐色の皮に包まれています。この皮をはがすと中から真っ白い鱗茎(りんけい)があらわれ、この球根部分に多くの毒が含まれます。水仙の球根の皮をむいたものは、ユリネやノビルの可食部、小さいタマネギ(ペコロス)に似ているので、誤食されやすいです。
水仙には毒がある?
水仙は全草有毒です。花や葉、茎や球根、根など、どの場所にも毒があります。とくに球根に多く含まれ、過去に大量に食べて死亡した例が報告されています。野生化して生活圏に近い場所に群生したり、庭に植えて楽しんだりと身近な植物なので、間違って食べないように注意が必要です。水仙の汁に触ると、かぶれることもあります。
毒の成分
毒の成分①リコリン
リコリンはヒガンバナ科の植物に多く含まれます。植物性の毒、アルカロイドの一種です。強い催吐作用があることから、人工的に加工してヒドロコリンという形に開発され、アメーバ赤痢の薬として利用されます。リコリンの人の致死量は10gで、毒性はそれほど強いとはいえませんが、大量に摂取すると死亡することもあります。
毒の成分②ガランタミン
ガランタミンもアルカロイドの一種で有毒ですが、多くの記憶障害や軽度のアルツハイマー病の薬として利用されています。副交感神経を興奮させる、アセチルコリンエステラーゼという酵素が働くのを邪魔するからです。脳の血管障害が原因の病気にとくに有効で、人工的に作れる成分です。レミニールという薬品名で、販売されています。
ボタニ子
このほかにも「タゼチン」とか「ウエンゲルニン」とも呼ばれる、ヒガンバナアルカロイドも含まれているわ。
毒の成分③シュウ酸カルシウム
シュウ酸カルシウムは、ホウレンソウやサトイモ、ヤマイモなどにも含まれる成分です。大量に摂取し続けると結石を作りやすくなります。水仙の汁を触ると、シュウ酸カルシウムの影響で、接触性皮膚炎をおこすこともあります。サトイモを触ると手がかゆくなったり、ヤマイモを食べると口の周りがひりついたりするのと同じ成分です。
毒のある場所
水仙の毒は、花、茎、葉、球根、根のすべての場所に含まれます。水仙の開花時期は、12月~5月なので、この時期に葉や球根を誤食することはまずありません。しかし、花が終わった後は、葉がニラやネギなどに似ているので、同じ場所で栽培している際は、注意が必要です。毒はとくに球根に多く含まれいるので、誤食しないように注意しましょう。
致死量は?
水仙の致死量に関しては、諸説あります。水仙の致死量が10gとされている場合もありますが、水仙には複数の毒物が含まれています。そのなかでも、リコリンの致死量が10gなので、その情報と混同されている可能性があるでしょう。とくに、リコリンは催吐作用が強く、食後嘔吐するケースが多いので、実際の致死量は不明です。
ボタニ子
誤食後、30分以内に嘔吐するらしいけど、亡くなった方は約3時間症状がでなかったんだって。体内に吸収した毒が致死量を超えたのね。
ボタ爺
食べた人の体格や年齢、食べた場所なんかによっても、致死量が変わってくるかもしれないの。
毒の利用方法
利用法①香料
水仙は甘いよい香りがあり、香水や精油として利用されています。香料を作るには、クチベニズイセンとフサザキスイセン、キズイセンが必要です。水仙の香りには、ストレスをやわらげ、不安を鎮静化する働きがあります。さらに資生堂の研究では、抗酸化作用とメラニンを抑制する効果があると報告されています。
ボタニ子
水仙の香り成分って、シャネルの5番とかエルメスの香水なんかにも、使われてるんですって。
利用法②漢方薬
水仙は漢方薬としても利用されています。有毒なので、経口摂取ではなく外用です。腫れやできもの、肩こりなどの対処法によいです。水仙の球根をすりおろし、布巾やさらしなどで汁をしぼり出し、それに小麦粉と酢をあわせてクリーム状にして、患部に湿布します。中国では、花を経口摂取の形で、生理不順や子宮の諸症状に利用しているようです。
ボタニ子
利用する際は、絶対に漢方の先生にお願いしてね。自分で作ろうなんて、考えちゃだめよ。
ボタ爺
球根なんて一番毒性が強い部分だし、触るとかぶれるシュウ酸カルシウムが含まれてるぞ。自分の判断で花を食べるなんてもってのほかだ。
水仙を食べたときの症状
水仙を食べてしまったときの症状は、30分以内の激しい吐き気や下痢、しびれや発熱などです。よだれが出たりや発汗したり、頭痛や発熱という症状もあります。重症化すると、昏睡や神経麻痺などを経て、死亡例も報告されています。強い催嘔吐作用があるので、最初に症状が出て嘔吐したときに、ほとんどは吐き出してしまいますが、症状が出るのが遅い場合は、毒を吸収している可能性もあるでしょう。
水仙って甘い、いい香りがするの。上品な香りなのよ。