桐の花の概要
桐(キリ)は、ノウゼンカズラ科に分類される落葉樹です。日本には中国から、朝鮮半島を経由して伝えられたといわれます。5月~6月の開花時期には、薄紫色の上品な花をたくさん咲かせます。寒さに強いのが特徴で、日本各地で育てられる庭木ですよ。高貴・神聖といった意味を持つため、皇室の紋章や硬貨の絵柄に使われます。家具材としても優秀で、下駄やたんす、琴などの材料としても古くから利用されています。
基本情報
名前 | 桐(キリ) |
別名 | 榮(エイ)、白桐(シロギリ)、花桐(ハナギリ)など |
園芸分類・形態 | 落葉広葉樹・高木 |
原産地 | 中国 |
開花時期 | 5月~6月 |
花の色 | 紫 |
特徴 | 軽い、燃えにくい |
産地
桐の原産地は中国大陸です。日本には1400年以上前の飛鳥時代に渡来し、各地で栽培されるようになりました。北海道南部~鹿児島まで広く分布していますが、特に「南部桐(岩手県)」「会津桐(福島県)」「備後桐(岡山県~広島県東部)」などが有名です。近年では国内での生産量が減少する代わり、台湾やアメリカ、ブラジル、パラグアイなどからの輸入も増えています。
名前の由来
桐は一般的に知られる「桐」という和名と、学名の「ポウロニア(Paulownia)」が特に知られる名前です。このほかの桐の別名には、「榮(エイ)」「白桐(シロギリ)」「花桐(ハナギリ)」「女帝の木」「狐の手袋の木」「王女の木」などもあります。別名が非常に多いことから、日本人の桐への関心の高さがうかがえますね。
由来①植物の特徴にちなんで
「桐」という名前の由来としては諸説ありますが、有力なのは「切り」が転じたというものです。切っても切っても成長を続け、美しい花を咲かせるという意味で「切り」という響きがあてられ、やがて「桐」に転化しました。紫色の花のイメージにぴったりの、しなやかさや力強さを感じられる名前ですね。
由来②人名にちなんで
一方の「ポウロニア(Paulownia)」という名前は、江戸時代のエピソードが由来です。長崎オランダ商館の医師として滞在していたドイツの博物学者、フィリップ・シーボルトが、オランダ王妃アンナ・パヴロヴナ(Anna Paulowna)に桐の花の種子をプレゼントしました。この王妃の名前が語源となり、ポウロニアという名前がつけられたといわれています。
桐の花は「神様の花」
桐の木や花には、古くから神聖なイメージがあります。これは原産地である中国での言い伝えが由来です。中国では伝説の鳥・鳳凰(ほうおう)は、「桐の木にだけ棲み、竹の実だけ食べる」と説明されています。神様の使いである鳳凰がとまることから、桐は神聖な意味を持つ植物となりました。日本に渡来したあとも神聖・高貴といったイメージが引き継がれていることは、皇室の紋章や硬貨の絵柄に使用されていることからも明白ですね。
桐にまつわるエピソード
エピソード①女の子が生まれたときに植える
昔、農家では女の子が生まれると、桐の苗木を2本庭に植えたそうです。その子が成人して嫁入りするときに桐を伐採し、それを使って家具を作ったといわれます。桐は軽くて断熱性が高いため、家具の材料に適しています。また成長が非常に早く、15年~20年で成木となることも、この風習が根付いた理由のひとつです。生まれた女の子が一人前になるころ、ちょうど桐も家具を作るのにぴったりの時期を迎えます。
エピソード②火災に強い
火事が起きたとき、桐のたんすは黒焦げになってしまったけれど、中の着物は無事だったという逸話があります。これは桐が断熱効果に優れていることと、ほかの木材と比べて消火の水を吸収しやすいことにちなんでいます。昔から「火事になったら桐だんすに水をかけろ」といわれているのは、これが理由です。ただしこの性質はボヤ程度の火事の場合にのみで、家が全焼するような規模では桐だんすでも焼けてしまいますよ。
桐の花の特徴
花の特徴
空に向かって伸びた枝の先に咲く桐の花は、薄い紫色をしています。釣鐘状の花は清楚な雰囲気ですが、葉が出るより先に花が咲くため遠い場所からでも見つけやすく、畑や山地で目立ちます。開花時期は初夏にあたり、春から夏への季節の移り変わりを感じさせる花ですよ。植え付けたばかりの株や、元気のよい株は、開花が控えめになるという特徴があります。
樹皮・葉の特徴
桐は15年ほどをかけて、8m~15mの成木へと育ちます。白みがかった灰色の樹皮は、すべすべとなめらかな手触りです。葉は直径20cm~25cmで、幅の広いたまご型をしています。枝に対して互い違いに生えています。これには光合成を効率的に行えるというメリットがあり、多くの庭木に見られる特徴ですよ。
出典:写真AC